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第42話 終章 すべてを猫のために


「ベラベッカ、どうしたの?」


「部屋に大きなクモが出まして…。今夜はレイさまのお部屋で休んではいけませんか?」


 僕はどうしようかまよったが、思いつめた表情の彼女を見て断るのが気の毒になった。


「いいよ、入って。僕はソファを使うから。」


「ありがとうございます…。」


 彼女は僕のベッドで横になり、僕はソファに移動して毛布をかぶった。




「…レイさま。起きておられますか? 他にもお話したいことがあるのですが。」


 毛布の中でまどろんでいた僕は半分寝ぼけていた。


「どんな話?」


「院長と屋根の上で何を話されていたのですか?」


「えっと…工事の話とか…家族の話とか…。」 


「それだけですか?」


 僕はベラベッカが見ていたことに驚いていっきに目がさえてしまい、正直に話すことができずに口ごもってしまった。


「言えないのですね、レイさま。」


 どう答えようか僕は毛布の中で迷ったが、彼女の声は悲しげだった。


「違うんだ、ベラベッカ! 僕は…。」


 

 僕は、ずっと気にかかっていたことを全て吐き出してしまおうと決心して、毛布の中から顔を出した。



「僕は君にふさわしいような、君が思っているような人間ではないんだ。僕は、元の世界では罪のない人々を傷つけるような仕事をしていたんだ。」


「たとえそうだとしましても、レイさまだからこそ、過去の償いをする勇気と優しさがあったのだと思います。」


「ベラベッカ…。」


 部屋が明るくなり、ベラベッカがランプに火を灯したのがわかった。彼女は身を起こしてベッドの端に腰かけた。


「わたくしにすべてを話してください。」


「すべて?」


「レイさまが生まれてから、どこでどんな風に育って、親友はどんな方でどこで知り合われて、どんなお仕事をされて、本当は苦しかったのか悲しかったのかどんな思いでおられたのか、すべてです。」


「長くなるよ?」


「かまいません。今は、たくさんレイさまとお話できる時間があります。朝までつきあいますよ。」


「僕が話したら、君のことも話してくれる?」


「はい。もちろんです。」



 そうして僕たちは文字通り朝までお互いに語りあかしたのだった。




 それからの1週間は平穏にあっという間に過ぎ去った。



 屋敷の工事は順調に進み、完成は目前だった。僕はゲパルドに細かく引き継ぎをした。彼は何も言わず、ただ「達者でな。娘を頼む。」と言っただけだった。

 旅の用意をしてから、僕は猫女神像のあるほうへ向かった。



 猫の街は活気を取り戻しつつあり、猫女神像の前ではたくさんの猫や人間が行き来していた。


 猫の街への侵略は、人間族の国の軍部の暴走だったということが発表され、表面上は猫の国と人間族の国は和平を結び、平穏に戻ったように見えてはいたが、本当の関係修復にはまだまだ時間がかかりそうだった。



 でも、僕は悲観していなかった。



 アイゼは本当に猫女神像の前で待っていた。彼女は、僕の姿を見ると本気で驚いているようだった。


「レイちゃん、来ちゃったんだ。」


「うん、まあね。」


「でも、嬉しいかも。ありがとね。」


「うん…。」



 なんだか煮えきらない態度の僕に気づいたのか、アイゼは不審そうな目で見てきた。



「それにしても、ベラベッカにはちゃんと言ったの? ダメだよ、あのコ、かなり繊細なんだから。」


「それがね、その…。」


「ん? レイちゃん、さっきから様子がヘンだよ?」



 僕のうしろに、旅支度をした一団が現れていた。



「ベラベッカ、レオパルト、ユートくん…!?」


 アイゼはあきれ顔でため息をついた。


「あんたたち、子猫たちの世話はどうすんのよ?」


「院長。こねこの家の運営は山猫族が引き継ぎました。」


「ワイもヒマでな。なんかうまいモンやおもろいモンを探しに行くんやろ?」


「僕は世界を旅して、もっともっと知識を身につけたいニャ!」


「わたくしは、レイさまのおそばならどこでもまいります。父の許しも得ております。」



 アイゼはあきれ顔から、ニヤニヤ笑う顔に変わった。



「ふうん。ま、勝手にすれば? レイちゃんは何が目的なの?」


「ちょっと約束があってね。僕は、猫のために戦い続ける。」


「そっか。たしかに、どこかで今もまだ助けを必要としている猫たちがいるかもね。じゃ、解散したばかりだけど、漆黒の狩人を再結成だね! 久々にいくよ!」


 

 僕たちは、全員で輪になって手のひらを中央に出した。



『せーの!


 すべてを猫のために!!』




 僕たちは新しい旅への第一歩を踏み出した。




ーおわりー


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