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過ぎた部下


街警との合同小隊会議の後、星は、第七執行部隊の執務室で、暁と小休憩を取っていた。


「なあ、隊長殿。本当に良かったのか? 心那を学校に残して来てよ」


紫煙を(くゆ)らせながら、暁は星に問いかける。


「心那なら、俺よりも彼等に寄り添える。そう判断した。今の段階で俺が彼等にどれだけ力を見せつけても、何の意味も無い」


「まあ、そうだろうけどよ。あいつは隊長殿の側に居たくて軍に入ったんだぜ? あんまり突き放すのもどうなのよ?」


「……突き放したつもりは無かったんだが」


表情こそ大して動かない物の、珍しく困惑する様な間を開けた星に、暁は苦笑する。


「はいはい。信頼してるから、任せたんだよな? それはあのアホ娘も理解してるだろうよ。けど、そういうのを一々言葉にして欲しいのが、女心って(もん)だせ?」


「分かった。今すぐ連絡しよう」


「ちょちょちょ待て!? それはそれでややこしい誤解生むだろ!?」


何の躊躇いも無く端末を操作し始めた星を、暁は慌てて止める


……確かに、敬愛する上官からいきなり電話が掛かって来て、「お前を信頼している」なんて言われれば、彼に心酔している心那がどんな精神状態になるか、想像するだけで不安しか無い。


「言葉にしろと言っただろう?」


「いや言ったけども! このタイミングで言うと変な意味出ちゃうだろうが! ったく、そういうとこはホントまだガキだな!」


「すまん」


「お、おう……素直に謝られてもそれはそれで気まずいな。いや、俺も色々余計なこと言って悪かった。まあでも、次会った時にでも労ってやれよ? きっと今頃、隊長殿の期待に応えようと色々やったり考えたりしてるだろうからよ」


「分かった。……暁、俺は、心那に酷なことを強いているのだろうか?」


突然、神妙な様子で問いかける星。


そんな彼に、暁は感心した様に目を見張って問い返す。


「おいおい、ホントにどした? この間の任務から、随分情緒豊かになってねぇか?」


「心那が望んで俺の部下で居る事は、行動でも言葉でも、何度も伝えられている。今更それを疑うつもりは無い。だが、そのせいで彼女が享受するべき幸福を奪っているのなら、強引にでも俺から…軍から距離を置かせることも、考えるべきだったんじゃないかと、少し思った」


「……いや、そりゃ無いな」


タバコを灰皿に置いて、暁は星の瞳を覗き込む。


「俺から見りゃまだまだガキな隊長殿が今ここに居るのは、絶対に譲れない物があるからだろ?」


「ああ」


迷い無く頷く星に、暁はどこか眩しい物を見るように目を細め、言葉を続ける。


「それは心那だって同じだ。生きる意味、理由、目的、希望。言い方なんざ腐るほどあるが、アイツにとってとそう言う(もん)が、隊長殿なんだよ」


「………」


「存分に使ってやれ。そんで、頑張ったら褒めてやれ。それだげで十分だ。お前の背中を守る。少なくともそれが、俺たち第七執行部隊全員の誇りなんだからよ。……あー、くそっ! んなこと言わせんな! 馬鹿野郎」


誤魔化すように頭を掻く暁を、星は真っ直ぐに見て、いつもより少しだけ柔らかい声音で、こう言った。






「お前達は、俺なんかには過ぎた部下だな」








お読み頂き感謝の極み。

今話めちゃ短くてすいません。


次話は明日投稿します。


ご意見、ご感想お待ちしております。

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