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9.ガイアスがやってきた

 私、マリー、エミリアの三人が応接室に入ると、ガイアスとその護衛と思われる青年がいた。

 ラファエルは金髪だけどガイアスは黒髪なのよね。

 ゲームで登場しなかったからわからないけど、ガイアスは第二王妃の子供だから母親が黒髪なのかな?

 ラファエルの弟ではあるけど私やマリーと同い年なのよね。

 護衛っぽいお兄さんはだれだっけ? どっかで見たことあるんだけどな、まぁいいか。


「ごきげんようガイアス様。お久しぶりですね」

「久しぶりだなキリカ。おっと、マリーゴールドがきていたのか、突然の訪問ですまない」

「ごきげんようガイアス様。ご無沙汰しております」


 私が挨拶すると普通に返してくれた。

 兄と違って真面目な男で好感が持てるわ。

 偉そうな男とチャラい男はこの世から消え去ればいいのに。

 真面目なことは美徳だと思うんだけど、真面目な人は損をするというこの矛盾……度し難いわ。


「先月のお茶会は参加できなくてすまなかった。人が大勢集まる場はどうにも苦手でな」

「いえ、人間誰でも苦手なものはありますし、無理はなさらないでください」


 ほー、人混みが苦手で将来王国の大将軍が務まるのかね?

 まぁ、大人になるまでには克服できるといいね。


「それで今日は何用でしょうか? ガイアス様が訪ねてくるなんて、何かありましたか?」

「それなんだが、キリカがとんでもなく強いって聞いてな。もしかしたら俺よりも強いかもなんて兄貴が言うもんだから確かめにきたんだ。ちょっと俺と手合わせしてもらえないか?」


 ラファエルッ! お前の仕業かっ!

 マリーと遊ぶの楽しみにしてたのに邪魔しやがって!

 それじゃあガイアスはラファエルに乗せられて確かめにきたってことか?

 ガイアスくん、君ラファエルの掌で踊らされてるよ。

 まぁ、別に戦うのはいいよ。

 将来最強クラスの実力者になるガイアスとは私も戦ってみたかったし、ラファエルの思惑通りに進むのが嫌なだけだ。

 どっちにしろ第二王子が自ら出向いてきた以上、断ることはできないか。


「わかりました。私も強いと噂のガイアス様とは、一度戦ってみたいと思っていました」

「受けてくれるか! 正直いきなりこんな誘いをして、受けてもらえるか不安だったんだ」


 一応非常識だとは思ってたんだ。

 そういえば、ゲームでは主人公のエルカちゃんがガイアスルートに入ると、キリカはガイアスに殺されるのよね。

 ん? だったら私がガイアスより強ければ死亡エンドを回避できるんじゃない?

 そう考えるとここで一度ガイアスの実力を見ておくのもいいわね。

 ちょっとやる気が出てきたわ。


 ふと視線を感じて隣を見ると、マリーが心配そうにこちらを見つめていた。

 そんなに心配しなくても大丈夫だよ。

 今まで死の運命を打ち破る為に鍛えてきたんだ。

 ゲーム本編も始まってないこんな序盤で死んでたまるか!

 私はそう自分に言い聞かせた。






 ガイアスと模擬戦をする為に訓練場に移動した。

 マリーとエミリアには安全の為に離れた位置で観戦してもらう。

 この世界の強者同士の戦いは破壊の規模が大きくなるから、近くにいると危険なのよね。


 審判はガイアスの護衛のシリュウさんが務める。

 私もどこかで見たことあると思ってたんだけど、シリュウさんは王族を守る目的で作られた近衛騎士団の団長だった。

 王国最強との噂がある大物だ。

 そんな大物が第二王子と二人で私の実力を見にやってくるなんて暇なのかしら?

 それかよっぽどの物好きだ。

 まったく、これだから戦闘バカは困る。

 人の迷惑も考えてほしいわ。

 えっ、お前も戦闘バカじゃないのかって?

 その通りだよ!

 だから二人の気持ちも実のところわかる。

 知ってる奴がいきなり強くなったら気になって調べ、より強くなる為に技術を吸収するものだ。

 自分より強い者を許せない、それが私達みたいな戦闘バカなのだから。


「手加減はいらんぞキリカ、全力でこい」

「私は可憐な乙女なのですからお手柔らかにお願いします」

「そんなに殺気をまき散らした可憐な乙女がいるか!」


 おっといけない、ちょっとやる気が出たせいで乙女にあるまじき殺気が漏れていたみたい。

 ガイアスは大人が使うオーソドックスな長さの木剣か、十歳にしては背が高いから大人用の木剣が使えるのずるいな。

 くっそー、私だってもう少ししたら長身美少女になるんだからね!


「キリちゃん頑張ってくださいまし! 私がついていますわよ!」


 離れた位置から応援してくれるマリーに手を上げて答える。

 さっきまで心配そうにしてたのに、すっかり緊張がとけてエミリアと楽しそうに観戦してるわ。

 その切り替えの早さ嫌いじゃないよ。


「それでは、これよりガイアス殿下とキリカ嬢の模擬戦をおこなう。両者準備はいいか? ……始めいっ!」


 シリュウさんが開始の合図を叫ぶと、ガイアスが突っ込んできた。

 気が早いなぁもう、様子見なしか、スピードは結構速いけど避けれないほどじゃない。

 横に避けて打突を空振りさせると、ガイアスは力任せに空振りした剣を跳ね上げた。

 切り返し速っ!? 避けきれないっ!?

 ガイアスの剣を避けきれずとっさに剣で受けると、私の身体はピンポン玉のように弾き飛ばされた。

 普通に受けては木剣を折られると思って自ら後ろに飛んだのだ。

 凄いパワー! 正面から受けてたら木剣をへし折られていたわ。

 まともに受けなくてよかった。

 飛ばされた私が着地すると、ガイアスは追撃するべく迫ってきていた。

 ええっ! ちょっと思ってたより強いんだけど!

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