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16.入学記念パーティー

 時は流れ私は十五歳になり魔法学院入学を控えたある日、同じように今年魔法学院へ入学する貴族の子供達が集まる入学記念パーティーに参加していた。

 魔法学院内の大ホールに集まった子供達は幼い頃から交流があるので、それぞれ気の合う者や取り入ろうとする者と談笑していた。


 学校って言っても卒業後は親の爵位を継いだり、継げない二男三男なんかも、将来のコネ作りをしなきゃいけないから付き合う相手を選ぶのが大切なのはわかるけど、露骨に王族や爵位が高い貴族のもとに人が集まってる。

 もちろん公爵令嬢の私の所にも人が集まってくるんだけど、私の周りを固めているマリーとディアナがお眼鏡にかなわない者を威嚇して追い返していた。

 何をやっているんだか……。


 あ、このバルサミコソースのローストビーフ美味しい。

 バルサミコソースって匂いはきついけど食べると美味しいんだよなー。

 脂質が少なくて高たんぱく、筋肉にもいいね。


 各々がパーティーを楽しんでいるとお偉いさんの挨拶が始まった。

 魔法学院入学のお祝いや注意事項を述べる中、特別入学する平民についての話になった。

 学院には貴族以外にも強い魔力を持って生まれてスカウトされた平民や、人脈を築く為に大した魔力はなくても高い入学金を払って入学してくる商人の子供などがいる。

 そういった者達に身分の差があるからと横暴な態度を取らないようになどの話をしてたけど、それは難しいだろうなぁ。


 毎年入学記念パーティーで注意はするらしいけど、あくまでも建前ですでに形骸化してるんだよね。

 ゲームでもキリカ達はやりたい放題エルカちゃんをいじめ抜くけど、教師は見て見ぬふりだもん。

 でもそれも仕方ない、だって教師より生徒の貴族の子供の方が身分が高いんだから。


「今年も学長が建前を仰ってますわね。平民と一緒に学院に通うなんて私耐えられるかしら……」

「ディアナさん、平民の皆さんが税を払っているからこそ私達貴族が裕福な暮らしをできるんですよ。身分が低いからといって平民をバカにするような発言を私は好みません」

「そんな……!? わかりました。キリカ様がそう仰るのなら私も考えを改めますわ」


 うん、ディアナは私の言うことなら聞いてくれるいい子だ。

 マリーは驚いた顔をしてるけど、マリーがゲームでエルカちゃんの親友だったことを思えば平民に対してひどい態度を取ったりしないことを私は知っている。

 サラはどうだろ……うん、特に反応がない。

 まぁ、この子はゲームではいじめっ子だったけど、現実では貴族の誇りを大事にしてる子だから大丈夫だろう。


 ラファエル、アルベルト、ガイアスの三人はどうかな?

 う~ん、わからん。

 よく言えばポーカーフェイス、悪く言えばなんにも考えていないアホ面だ。

 あいつらは身分が高すぎて下々のことなんて気にしないのかもな。

 だってゲームの攻略対象だもん。

 ほっといてもいいだろう。


 問題なのは他の貴族の子供達だ。

 私はゲームみたいにエルカちゃんに辛い思いをしてほしくないんだよ。

 そもそも本当にエルカちゃんは入学してくるのかな?

 考えたってわからないし、学校が始まったら見に行ってみよっと。


「キリカ様は平民に対しても平等に接せられるおつもりなのですか?」

「そうね。私は貴族の持つ選民意識こそバカらしいと思っていますから」

「ちょちょちょっキリカ様! この場でその発言はいけません!」

「むぐぐっ!?」


 ディアナ達三人に手で口を押えられてしまった。

 そうだった! ここには王侯貴族が集まってるんだったよ!

 

「キリカ様、誰が聞いているかわかりませんので発言には注意してください」

「そうですよ。キリちゃんはフローズン公爵令嬢なんですから、学院内では王族の次に発言力があるのですよ」

「私も同じ意見です」

「ごめんなさい。つい興が乗ってしまいました」


 三人に怒られちゃった。

 失言失言。誰にも聞かれてないよね? うん、大丈夫。

 しっかし、こういったことは迂闊に発言できないなぁ。

 気をつけなきゃね。

 あっ! ラファエルの奴笑ってやがる!

 くっそー、悪趣味なストーカー野郎め。


「キリちゃんの気持ちはわかりました。私はもちろんですが、ディアナ様もサラ様もよろしいですか?」

「キリカ様が望むならば私に否やはありませんわ」

「私も異論はないです」


 おおっ! 心の友よ! やっぱり持つべきものは友達だね。

 私達の友情は不滅だよ!


「みんなありがとう! 私達三人、生まれた日は違えども、死す時は同じ日同じ時だよ」

「何のセリフですかキリカ様?」

「よくわかりませんけどかっこいいセリフですね」

「何の誓いですかキリちゃん。私達は武将じゃないのですよ」


 ですよねー。桃園の誓いなんて知りませんよねー。

 ってか、なんでマリーはちょっと知ってる風なのよ! プリデスの世界にそんな設定あったっけか?

 私はそこまで周回プレイしてないから詳しくないけど、暦ちゃんなら知ってるのかもなぁ。

 懐かしいなぁ暦ちゃん。

 前世の私は死んじゃったけど、貴方は長生きしてね。

 私は遠いゲームの世界から貴方の幸せを祈っているわ。


 入学記念パーティーに参加した結果、貴族の選民意識の高さは私の思っていた以上だった。

 もうじき学院生活が始まるけど、この調子じゃエルカちゃんが心配だよ。

 ゲームでいじめてた私達がやらなくても、他の誰かがやりそうなんだよなぁ。

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