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ゆめ  作者: イソジン
2/2

連打

4階から落ちたなにか、それは【ドシャ】という鈍く重い音を響かせ中庭のコンクリートを鮮やかな赤色に染めていく。


数秒間の静寂の後、響く大きな悲鳴。窓や校舎が震えてるんじゃないかと思うほど響いていた。


声に反応したのか続々と中庭に人が集まる。泣き出す女に騒ぐ男、吐いている人もいた。


そんな中黙々と飯を食べていた。


びっくりしなかったわけじゃない。人が死ぬのも初めて見た。しかし思ったより感情の揺れがなく、意外と平気だったのだ


それより私はこの事件が発生した理由に気持ちがいっていた。


数分後救急車とパトカーが大きな音を鳴らしながらやってきた。すぐに規制線が張られ、学校を帰っていいことになった。


電車の中で私の頭の中を巡っていたのは夜ご飯とさっきの事件の事だった。


警察の動きや学校の対応を見るにどうやら自殺ではない。私の日常はやっと壊れたのだ。



次の日、朝起きると昨日の事件がニュースになっていた。見出しは「高校生不審な飛び降り」だった。学校で親への説明会もあるらしい。


「あんた、今日休んでもいいのよ?」

母は心配そうに私に聞く。

「休まんが」

「だって死んじゃった子、中学校一緒だった子でしょ?」

「え??」

そう言われて初めて気づいた。昨日、目の前で命を散らした彼女は中学が一緒で2年生の時同じクラスになったことのある人だった。

よりいっそう興味が出てきた。被害者が知り合いなら犯人も知り合いの可能性があるわけだ。

「おもしれぇじゃん…」

そう呟いて私は朝ごはんをかきこんだ。

いつも気だるい通学路、今日は少しだけ違って見えた。

人が死んでいるのに少しだけ楽しい気分になっていることは周りに伏せなくてはいけない。

スキップしそうな足を必死に抑え、私は壊れた日常へと歩き出すのだった。


教室は静かだった。正しくお通夜、普段騒いでいる男子も動画を撮っているうるせぇ女も誰もが静かに椅子に座っていた。

いつもなら人でいっぱいの教室も休みも多いからかがらんとしている。

しばらくして重い空気を漂わせながら担任がガラッと戸を開け教室に入ってくる。


「みんな…おはよう」

「…」

「そのなんだ…今日は自習がメインだ。とりあえず出席だけとるから休み時間以外は教室のいろ」

「…」

名前を呼ばれてもみんな手をあげるだけで「はい元気です」とは言わない。私は言っても良かったのだが空気を読んだ。偉い

出席確認が終わり少しした時担任が手招きをする。

自分にされていると思わず周りをキョロキョロとするが担任は自分を指さし頷く。

「あっ、はい」


空き教室の呼ばれて先生が私が入ったのを確認すると鍵を閉める。

「生徒と密室…良くないと思いますよ!」

精一杯の小ボケをかます。

「ふざけんな。長峰、お前現場にいたろ?」

そんなボケにも構わず神妙な面持ちで先生は続ける

「いましたね、飯食ってました」

「そのなんだ…みたのか?」

「死体ですか??」

「いや…その犯人…」

「あー、そうですね見たかもしれません」

「そうか…、だったら警察の人に協力しなさい…あとこれは…」

「他言無用ですね!言いませんよ絶対!」

食い気味でそういうと先生はわかったならいい。とボソボソと言うと鍵を開け出ていく。


「やっぱり犯人いるんだな…。面白くなってきた」

残された教室で私は笑顔を抑えながら1人呟いた。



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