日常
どんなにどんなに。どんなに人を好きになっても、体を重ねても、どうにも埋まらない。
大きな大きな穴がある。
この穴から何が見えますか?
朝は憂鬱だ。カーテン越しの朝日は、私の足りない睡眠時間を無視して無理やり、目を覚ましてくる。
朝は時間が短い。夜の1時間と朝の1時間が同じ1時間なわけない。私は絶対に信じない
「何ボケーっしてんの。さっさと食べちゃいなさい」
母親は私を視界に入れずにそう言う
「してないし、目玉焼きは半熟以外は食べたくないから悩んでいただけだよ」
脳みそから出た言葉ではない。寝てる時に話すような譫言を口に任せて話す。
ご飯を済ませると今度は着替えをしなくては行けない。
実にやることが多くて困る。
昨日の時点で結んでおいたリボンを制服の襟に回し、昨日の自分に感謝する。
逆に昨日脱ぎっぱなしで置いてしまい、折り目がついてしまったスカートを履いて、昨日の自分を責める。
結局プラマイゼロだ
朝のニュースの占いを見るのが日課だ。2時間後にはしっかり忘れているが多分当たっているからよく見ている。
私が学校につくころ、クラスはほとんど席についている。決して私が来るのが遅いのではない。みんなが早すぎるのだ。
「長峰!今日もギリギリだな!」
教室で1番偉そうなスーツを着た大人が白々しく茶化してくる。私が広い心で許してやってる事を肝に命じて欲しい。
どすんと席についたタイミングで始業のチャイムが鳴り響く。
私はそんなに重くない。どすんという効果音は訂正する。
私の好きな教科はお昼休みだ。購買のおばさんとはもうかれこれ2年の付き合いになる。私はルーティン買いをしているのでおばさんは私の顔を見るといつもと同じパンを差し出してくれる。
コッペパン+おばさんの今日のイチオシジャムだ。
「はい!250円!」
ポケットには250円しか入っていない。
「ごめんね。消費税が上がったから10円値上げなの……」
ポケットには250円しか入っていない……
泣きそうになりながらパンを戻す
「おう、長峰。これやるよ」
放物線を描いて10円玉が飛んでくる。投げたやつは佐藤。同じクラスのマッシュ野郎だ。
「ありがとう佐藤これで貸し借りなしな!」
10円を佐藤に見えるように掲げ言う
「あ?お前に貸し作った記憶ないが?」
貸された記憶もない
「毎日、私みたいな美人と話させてやってるんだからそれが貸しみたいなもんだろ。」
苦笑いしてるがそれ以上の声掛けは無用。260円をおばさんに渡していつものパンを持って教室には帰らず私しか使っていない中庭のベンチへ行く。
最近の高校生は「紫外線がー」とか「虫がー」とかバカ見てぇなこと言って外に出ない。なのでいつも1人なのだ。
ベンチに乗っかっている木の葉を払い。歩いてるアリをデコピンで飛ばし、いつものようにちょこんと座る。
「あ〜もどかしい…」
ぼーっと校舎の4階をベンチから眺める。
私は日常が我慢ならなかった。ずっと単調で、すぎるだけのこの日常をどこか壊れて欲しい。そんなことを考えていた時、
4階の窓が開き、何かが落ちた