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武神アルカット

文章でアクションするのって難しいです。

「な、なんだこれは……!」


頭領の大男の前で信じられない光景が繰り広げられていた。


剣を持っているとは言え、相手は少女。

数十人の男達を相手にできるはずが無い。

普通に考えればそうだ。

しかし、実際には少女が優勢……どころではない、圧倒的だった。

少女に触れる事すらできず、次々と部下たちが切伏せられていく。


およそ半数に減った辺りで逃げ出す者が出始めた。

武器を捨て、唯一の出口へと駆け出していく。

だが、少女は戦意を失った者であっても、その背中を容赦無く斬った。


――気が付けば盗賊で生き残っているのは頭領の大男だけとなっていた。

少女の周りには部下達が()()()()()()()

正に死屍累々の光景。


気が付けば盗賊で生き残っているのは頭領の大男だけとなっていた。

頼りになるのは自分自身と、巨大な棍棒のみ。


そうだ、自分にはこの棍棒と、それを振り回す力がある。

いくら部下(ザコ)(ほふ)ろうとも、この体格、この力、この間合いの優位は変わらない。

自分が生きてさえいれば、いくらでも立て直せる。


ビビる事は無い。

歳に似合わぬ卓越した技を持っていようと、自分の前ではただの少女。

俺なら勝てる。


頭領の大男は棍棒を握り直して少女へと迫る。


「へっ、なかなかやるじゃねぇか、覚悟はできてるんだろうなぁ?」


少女は頭領の大男をじっと見たまま動かない。


――攻めあぐねている。

――こちらが優位だ。


「ぬんッ!」


頭領の大男は勢いよく棍棒を振り下ろした。

棍棒は鈍い風切り音を鳴らし、少女へと迫る。


少女は半身で躱し、棍棒がすくそばを通り過ぎて轟音と共に地面を砕く。

少女はそれを見ることなく、表情1つ変わる事なく頭領の大男を見ていた。


(甘いな……!)


棍棒は少女のすぐ真横。

十分な勢いをつけられる程の距離はないが、それでもこの重量が当たればひとたまりもない。


(もっと距離を取って避けるべきだったな!)


頭領の大男は棍棒を握る手に力を込め、膂力(りょりょく)に任せて横へ振った。


――手応えが軽い、軽過ぎる。


手元を見ると、棍棒が握手の先から綺麗に切断されていた。

少女の足元にはその()が転がっている。


切られた?

いつの間に?

そして何という剣の切れ味。


ゾクリと頭領の大男の背筋が凍る。


――いや、まだだ。


「うおおッ!」


頭領の大男は素早く少女の右の二の腕を左手で掴む。

どんなに切れ味の良い剣であろうと、振る腕さえどうにかしてしまえば良いのだ。


剣を振り回せるのが不思議なくらい、小枝の様な腕。


肩の関節を外してしまおう。

そして――ガキは趣味ではないが――犯してやる。

生娘の方が高く売れるが、それでは気が収まらない。

気の済むまで犯す。

徹底的に犯してやる。


(俺のイチモツ突っ込んで死ななきゃ良いけどな)


勝利を確信した笑みを浮かべ、親指を肩の関節に添えて力を加える。


「……ッ!?」


ビクともしない。

更に右腕を握り潰す程の力を加えても、折れも外れもしない。

まるで鋼鉄……いやそれ以上の物体をでも掴んでいるのかと錯覚する程の硬さ。


少女はまごついている頭領の大男の、自分の腕を掴んでいる左手の親指を掴み――


「ぎゃああああッ!」


――ひねった。


たまらず少女の腕を離した左手を見ると、親指があり得ない方向――手の甲の側に90度曲がっていた。

更に少女は頭領の大男の左膝の横を蹴る。

圧倒的な体格差、本来ならせいぜい痛いで済むはずの一撃。


バァンッ!


おおよそ人体を蹴ったとは思えない音が鳴り、左膝が砕けた。


「おッ……ごッ……」


激しい痛みに叫ぶ事すらままならず、ドサリと崩れ落ちる。

痛みを放つ左手親指と左膝を庇いながら、()つん這いでもがき、先程まで見下ろしていた少女を見上げる形となった。


少女の剣の刃がこめかみに触れた。

僅かに皮膚切れ、血が細い跡を残して垂れていく。


「おぬしで最後」


少女が剣を振り上げる。


「ヒッ……た、助け……」


その言葉を最後に、頭領の大男の視界が上下に割れた。

続きます。

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