新生アルカット王
内容の被り具合が凄いですが、お許しください。
アルカット王国内、アルカット城。
その玉座に少女となったアルカット王が座っており、その隣にはリアナが近衛として立っていた。
「リアナよ」
「はっ!何用でしょうか、王」
呼びかけに応じてリアナがアルカット王へと向き、ひざまずく。
アルカット王としてはわざわざひざまずく必要は無いのだが、どうにも彼女はこういう事に対して真面目過ぎる。
「オヌシが用立てたこの服……何か言うことはないかの?」
「はっ!よく似合っておいでです!」
「そういう事を聞いておるのでは無いわッ!」
リアナの頬を両手で左右から挟み、グリグリと回す。
見上げる兵士達から「おお、なんと羨ましい」という声が漏れているが、二人の耳には届くことはなかった。
「この服は一体何だと聞いておるのじゃ!」
「メイド服にてございます!」
「この城にも給仕はおるからな、その者達がどんな格好をしているか分かる!だがその者達にこの様なヘソ丸出しの服を与えた覚えは無いぞ!?」
今のアルカット王の格好はリアナが言うにはメイド服との事だが、城にいるメイド達とは似ても似つかぬキワドイものだった。
そんなものを恐れ多くも仕える王に着せるリアナもリアナだが、それを着て玉座に座るアルカット王もアルカット王である。
「それに何だこのスカートは!?短過ぎるにも程があろうに!」
アルカット王が玉座から立ち上がり、腰を左右にひねりながらスカートの長さについて抗議する。
短過ぎるスカートがふわりふわりと舞い、そのたびに見えそうになる。
「し、白だ……」
「いや……黒だ……」
兵士達がザワザワと『色』について騒ぎ始める。
「静まれ!皆のもの!」
そんな兵士達をリアナが声をあげ、制する。
静かになった兵士達の視線を集めながら、リアナが続ける。
「王がお召になられているのは白でも黒でもない!白のフリルがついた黒のキワッキワだ!」
リアナが再び「キワッキワ!」と復唱しながら、身振りまで加えてどの様な召し物かを力説し、それを聞いた男性達が再び騒ぎ始め、女性達がそれらに白い目線を送る。
「ええい!オヌシが事を煽り立ててどうするッ!」
−※−※−※−※−※−
「はぁあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛~」
疲れた。
何とか騒ぎを鎮めたアルカット王が大きなため息をつく。
別にメイド服を披露する為にここに居る訳では無いのだが……。
「王、そろそろ宜しいかと」
「お……う、うむ」
キリッと構えたリアナが促す。
先程の「キワッキワ」発言の人と同一人物とは思えない切り替えぶりである。
アルカット王が"神々の剣"を呼び出し、玉座の間に集った者達に見える様に斜め上へと掲げる。
「皆、聞け!ワシは"神々の剣"を求めた先で命を落とした!だが!新たな肉体と、そして何よりも"神々の剣"を手に入れ、ここに舞い戻った!」
「おお、あれが……!」
「なんと美しい……」
「可憐だ……!」
王の声聞き、そして"神々の剣"を見た人々から様々な言葉を漏らした。
一部やや見当違いなものが混ざっている気がするが、とりあえず無視する。
「この様な姿になってしまったが、改めてこの国の王となろう!異のある者は前に出て剣を持ってそれを通せ!」
要は「私がこの国の王になります、文句のある奴は力づくで撤回させてみろ」という事だ。
とは言うものの、これはあくまでこの国での伝統のようなもので、昔ならもとかく今となっては「私が王様です、みんなよろしくね」くらいの意味合いしかない。
「うおぉぉぉぉぉッ!」
「新生アルカット王!万歳!」
「万歳!万歳!万歳!」
玉座の間にアルカット王を歓迎する様々な声が響き渡る。
「……予想以上の反応じゃな」
「これも王の人徳の賜物です」
「いやしかしのぉ……あの左の者とか、目がイっておらんか?」
一度目の王となった頃とは周囲の明らかな違いに戸惑いつつも、少女となった身体で再びアルカットの王となった。
……メイド服姿で。
続きます。