アルカット王国
褐色なのは、趣味です。
「王……女性が、それも年端も行かぬ様な娘が安易に肌を晒すような行為はお控え下さい」
「ワシはそんなに気にならんがの?」
「周りの者が気にするのです!」
「お、おう……」
アルカット王一行は帰路へとつく為に神殿の出口へと歩みを進めていた。
先の襲撃の事もあり、王の前後を兵士達が囲っている。
アルカット王はリアナが兵士に「何でも良いから」と言って持ってこさせた布を羽織り、彼女の隣を進む。
履く靴も無く裸足だ。
靴が無いなら無いで構わなかったが、リアナが「素足のまま王を歩かせる訳にはいかない」だの「外の馬車まで背負う」だのと譲らず、結局「自分で歩く、王命だ」との言葉で渋々と従った。
とは言え、アルカット王も城に帰った後も布一枚羽織るだけで済ますつもりは無い。
「城に帰ったら何か着る物を用立てんとじゃな……」
「それについてはあてがあります、ご安心下さい」
「おぉ!そうか、頼むぞ!」
そうしてアルカット王一行は城への道を進んでいった。
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アルカット王国。
国を治める王が代々受け継ぐ名と同じ名を冠する小国。
西を『リット海』が、東には『ムスーガ山』が挟むように存在し、それらが生む幸は小国の腹を満たすのに充分な量をもたらした。
小国だがそれなりに豊かな国、それがアルカット王国だったが、ある大きな問題を抱えていた。
アルカット王国の北にある聖ビエド法国、南にガリダゴッソ帝国、この二大国の関係は極めて悪く、半世紀ほど前から大小様々な戦を繰り返すようになっていた。
戦場となるのはもっぱらリット海の上か、ムスーガ山を大きく迂回した先にある高原だった。
そんな二国とってアルカット王国は軍隊の食料などの確保、あわよくば戦力の確保として、敵国へ最短距離で進む事ができる中継地として映る事となる。
それぞれ二国はアルカット王国に対して戦争への協力を求め、断られると属国化を迫り、武力をちらつかせる様になった。
実際に軍を差向けられた事は一度や二度ではない。
敵国に隙を突かれない様、国内に充分な余力を残した上での少数戦力ではあったが、それでも大国、小国であるアルカット王国を制圧するに足る軍勢だった。
今日に至るまでアルカット王国を守り切る事ができたのは鍛え抜かれた兵達のおかげでもあったが、何よりも現アルカット王の存在が大きかった。
自ら戦場へと赴き、単騎で兵を次から次へと薙ぐ様はいつしか二国から『武神』とまで言われる程となっていた。
そんなアルカット王も歳を重ね60をとうに過ぎ、年老いた王では国守り切れず、そう遠くない内にアルカット王国は聖ビエト法国かガリダコッソ帝国のどちらかの物になる……"神々の剣"の一件はそんな中で起きた出来事だった。
続きます。