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掴みたい

掲載日:2021/02/28

 少女はそこにいた。


 霧が立ち込める下界と隔絶する山頂。

 小さな水鏡に囲まれた孤島がある山頂。

 孤島に浮かび舞う厳かな夜桜がある山頂。


 少女はそこにいた。


 シャラン、シャララン、シャラララン。シャラン、シャララン、シャラララン。


 鈴が水面で哭く。高く激しく踊る舞が哭く。


 (まなこ)は哀しく閉じられ、何処を定めてるのか知らず。

 しかし激情に感慨に亢進し、狂恋に激越に乱舞する。


 何を思っているのか、何を訴えるのか。


 分からない。解れない。


 ただ、哀しく、哀しく、悲しみが溢れる。

 ただ、苦しく、苦しく、苦しみが零れる。


 少女は躍る。舞う。乱舞する。

 夜桜は躍る。舞う。乱舞する。


 切実に手を伸ばすように、何かを掴むように、離さないように。

 焦がれて焦がれて焦がれてる。


 彼方へ流る記憶のように、遠くに去るように、溶け込むように。

 落ちて落ちて落ちていく。


 艶やかに鮮やかに揺らぐ水面。朧月。

 艶やかに鮮やかに揺らぐ水面。花筏。


 物憂げに囁く鈴の音は、花の音は、水の音は。

 詠う。詠う。詠う。


 シャラン。

 少女が一つ。願い佇む。


 ひらり。

 花舞が一つ。願い巡る。


 シャララン。

 少女が二つ。願い祈る。


 ひらひらり。

 花舞が二つ。願い伝う。


 シャラララン。

 少女が三つ。願い恋う。

 

 ひらひらひらり。

 花舞が三つ。願い廻す。


 優し気に哀し気に微笑むその(まなこ)

 何を照らすのか。


 分からない。解れない。


 鏡花を掴めぬように。

 水月を掴めぬように。


 分かることはなく、解れることもなく、ひたすらに藻掻く。

 藻掻く。藻掻く。藻掻く。


 近づけることはなく、近づくこともなく、ひたすらに足掻く。

 足掻く。足掻く。足掻く。


 そしてそれから。


 請願う。恋願う。こいねがう。


 それでもやはり。


 夜は掴めず。

 夢は掴めず。


 そしてやはり。

 請願う。恋願う。(こいねが)う。


 天の足夜はほど遠く、現にすらほど遠い。

 春夜。


 儚さに溢れ満ち、(いめ)に心映え。

 夜桜。


 けれど、けれど、けれど。


 夜は明ける。

 

 朝焼けが満たす。


 朝露が満たす。


 されど。


 少女の掌は何も掴めず。


 春を永久巡る。

ある曲にインスピレーションを受けて。

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