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討伐大会

 討伐大会当日。総勢30名の参加者がギルドに集まり、殺伐とした雰囲気を醸し出している。俺も感化されて、慣れない睨みを利かせる。だが、一斉に睨み返されて、ダメージの方が大きかった…。こんな様子ではいけないと気を引き締めて、ライバルになりそうな強者を探す。しかし、強者と呼べるような奴はなかなか見つからない。体捌きは素人丸出しで、武器は強そうだが扱いなれていない。ただ一人、腰に刀を差した侍風の男を除いては…。漂う雰囲気からして別格。不用意に近づけば、何らかの代償を払う事になりそう…。

 受付嬢が、咳払いをしつつ用意された壇上に上がる。


「皆さ~~~ん! 本日の討伐大会の参加、誠にありがとうございます。僭越ながら、受付嬢たる私から今大会の説明を致します。先ず遵守して頂きたいのは、如何なる事情があっても参加時に申請した武器以外使用しないでください。破損したからと言って相手の武器を奪った場合は即失格となります。次に、戦闘不能は一度だけ。何度も復活出来たら、決着はつきませんからね。最後に、今回はバトルロワイアル方式となりますが、協力は自由です。ただし、協力した場合でも優勝は一人だけ。最後は蹴落とし合う事になります」


 ルールは把握したけど、今回に限ってバトルロワイヤル方式なのか? それとも定期的に選択されるのか? 違うなら良いけど…俺が参加するからバトルロワイヤル方式ってことは無いよな? もしそうだったら、これは罠。全員で結託して俺を殺しに来る。引き下がるなら今しかないけど、ミネの為にも、父や母の為にも、バレていない事を祈って参加する事にした。




 半日かけて昼過ぎに辿り着いた会場は、東京エリアの平原。恐獣闊歩する狩場には、明日を賭けた戦いを挑む狩人の姿がある。だが、鈴森のせいで進化してしまい容易に手が出せない様子。幾人の犠牲を覚悟すれば倒す事は可能かもしれないが、命の大事さを知っている故にそんな愚行はしない。今の力でどうやって倒せばいいのか試行錯誤している段階だろう。そんな場所で自分勝手な願いの為に討伐大会に参加する…物凄く申し訳ない気分になる。

 受付嬢は、メモを確認しながら注意事項の差し込み。


「皆さ~~ん! いよいよ討伐大会開始ですが、NPCの方々の迷惑にならないように気を付けてください。彼らには彼らの生活があり、彼らには彼らの守るべきものがある……と、ゼノス名誉会長のお言葉です。別にルールではありませんが、ゼノス会長から悪印象を受けるのは避けた方が身の為ですよ」


 ゼノスの会長の言葉? 攻略班の行動を考えると、なかなか結び付かない。もしかしたら、ゼノス内では幾つもの考えが混在しているのかもしれない。その一つが攻略班を操り、その一つが会長…。信じるに値するかどうかは、会って判断したいけど…そんな機会はまず無いな。


「戦闘開始は10分後、この笛の音が聞こえたら自由に開戦してください。ではでは、私は結果が出るまで離れた場所で待機していますね」


 受付嬢が去り、参加者達は一斉に別々の方向に走っていく。多分、乱戦を避けたのだろう。予想外の結託や裏切り、多くの思惑が交錯すると芳しくない事態が起こりやすい。これで俺を罠にかけた疑いは晴れた。罠に嵌めたのなら、今この場で集中攻撃すれば余裕で倒せる。




 一人平原を歩いていると、かつて狩っていた恐獣が目の前に現れる。人間だった時は怖くて仕方なかったけど、恐獣になった今は全然怖くない。死の恐怖が薄れているというより、同族意識が強くなった感じ。顔を見ていると何だか話しかけたくなる。恐獣は恐獣で同族と思っているのか、襲ってくる様子もなく横を通り過ぎて行く。

 その時、右太腿にチクリと痛みが奔る。蹲って確認すると、小さな針が刺さっている。しかも、毒が塗ってあったのか周辺が黒味がかった紫色に変わっていく。持続的な痛みが徐々に増し、麻痺して立っている感覚が無くなっていく。


「運が悪かったな」


 恐獣の後ろから、褐色の痩せた男が現れる。使用武器は、口にくわえている吹き矢。どうやら、暗殺に特化したスタイルらしい。


「そんな武器で良かったのか? 一発で殺せるとは限らないし、外したら弾数が足りなくなるだろ?」

「ケケケ、特別なルートから仕入れた強力な毒だ、刺されば絶対に死ぬ。そして、類稀な俺の実力なら外す事も絶対無い!」


 恐獣にも悟られないステルス能力に、強力な毒。自信を持つのも頷ける。特に毒の威力が凄まじく、太腿の一部が壊死し始めている。体が毒への対処を試みているが、進化の力だけでは完全に回復するのは難しい。何か術を考えないと…死んでしまう。


「へぇ~、この程度で? 中途半端な毒で殺せると思っているのか?」


 恐獣の体は脆弱じゃない、強がるぐらいの余地はある。一応、右足を使わなければ戦う事も可能。毒が然程通じていないと誤解させて、暗殺以外の戦闘を強いる。


「……効いていないのか? そんな馬鹿な……」


 矢を装填し、吹き矢を構える。

 動きがよく見える今なら、躱す事は困難じゃない。ただ、目的は回避じゃない。


「おかわりどうぞッ!」


 吹き出された矢を、命中前に素早くキャッチ。そして、狙いを定めて男に投げ返す。予想していなかったのか、躱せず矢は胸に命中。これで、俺と同じ状態。そのままにしておけば脱落決定。さて、俺が欲しい物は持っているだろか?

 男は、冷や汗を垂らしながら懐から針を取り出し、腕に突き刺す。


「なんて反応速度だ。まさか返されるとは思わなかった…」


 焦っている様子は見られるが、毒で死にそうな様子はない。さっきの針が解毒剤を含んでいたのは確実のようだ。

 背後に回り込み首筋に噛みつき、気が進まないが血を啜る。飲み込んだ血は、体に取り込まれ解毒成分を抽出。即座に全身に送り、毒を無力化する。


「助かった、助かった。自信満々過ぎて解毒剤持ってなかったら死んでたな」

「…血を飲んだだけで、解毒? ば、化け物ぉおおおお!」


 逃げる男には可哀そうだが、俺も負けられない。背後から大剣で心臓を貫く。

 ルールを守ったからか、俺に恐怖したからか、男は復活しなかった。




 あれから約2時間、幾ら彷徨っても誰とも出会わない。さっきの男が残り全員を倒したとは思えないし、隠れて数が減るのを待っているって事も多分無い…。

 こうも孤独だと、嫌な記憶を思い出してしまう。小学生になったばかりの頃、生まれて初めての家族旅行で俺は山に放置…いや、捨てられた。山の天気は変わりやすく、晴れていたと思ったら土砂降り。雨を避ける為に木の洞に身を寄せ、迎えが来る事を信じて待つ事にした。怖かったのは、野垂れ死ぬ事じゃなく、親に捨てられら事実を認識する事。毎日のように叱責されていても、心の何処かでは息子だと思ってくれていると信じたかった。だが、夜になっても誰も迎えに来なかった。全ての信頼を捨て、自力で下山する覚悟を決めなかったら、今頃どうなっていたか…。


「ようやく見つけた」


 背後に突如現れた気配。近づいているようだが、足音がほとんどしない。

 急いで振り返り、侍風の男である事を確認。


「お前は何人殺した?」

「…一人」

「おお、良かった。さっき28人目を倒したから、これが最後の戦いだ」


 やっぱり予想通りの実力。漂ってくる気配も他の参加者とは別格、静かな殺気に悪寒が奔る。大剣を構えて、一挙一動に気を配り、いつでも反撃できるように待機。攻撃を仕掛ける選択は、悪寒が拒否する。

 侍風の男は、腰に据えた刀を半分抜く。

 次の瞬間、脇腹が斬られていた。


「浅かったか…」


 一歩も動いていない。斬撃を飛ばした? 風圧で斬られた? 挙動をしっかり見ていても全く分からないって、攻略班並みかそれ以上の実力。勝てる見込みが一気に減る。

 未知の攻撃は続く。一撃目で順応出来たお陰で、即死に至る心配は無い。ただ、死なないだけで勝ち目は存在しない。微かでも攻撃の挙動が見えれば勝機が見いだせるのだが、幾ら目を皿にしても不明のまま。動体視力も進化している筈なのだが…。

 何かおかしい、見えないにも程がある。決定的なのは、傷の位置。何故か正面からの一撃は一つも無い。この時点で、斬撃を飛ばした、風圧で斬られた…は、成立しない。高速移動して背後や側面に回り一撃与え、態々目の前に移動する。それぐらいしか考えられないけど、あまりにも姑息。強いのなら、周りくどい方法を用いなくても勝てる筈。

 ふと、試したい事が脳裏に…。


「グッ…もうダメだ」


 背中に攻撃を受けた瞬間、わざと倒れる。

 なんと、さっき倒した吹き矢の男が俺の後ろに潜んでいた。潜んでいたと言っても、ただ腰を低くしているだけ。認知されなかったら姿を隠す必要も無い、最強のステルス能力。実力が伴っていないから助かっているが、頭が良くて、技に優れていたら、目の前の侍風の男よりも脅威かもしれない。


「チッ、バレたか…」


 手品の種は分かった。だが、侍風の男に感じた強さは間違いじゃない。油断できる段階に至っていない。吹き矢の男を蹴っ飛ばして、侍風の男に集中。


「お前は下がっていろ。これからは本気で行く!」


 構えた刀を完全に抜く。その瞬間、尋常じゃない速度で懐に踏み込み、構えた刀を振り上げる。咄嗟に腕を交差して刀を受けたが、その代償として左腕が切断される。

 慌てて間合いを広げ、挙動に注目。動きが見えるのは良いが、どう考えても今の段階では対処不可。最小限のダメージに抑えて、進化による順応を待つしかない…と、考えるのは簡単だが、現実はその通りにはならない。高速の動きから繰り出される斬撃は、動体視力の進化を寄せ付けず、回避行動を取っても制限しきれない。

 だが、進化は進む。過酷な状況が続けば、いずれ順応し対処が可能になってくる。動体視力は徐々に高速を低速に鈍化させつつあり、回避行動は予知性を帯びダメージはほとんど通らなくなる。そして遂に、斬撃を見切って、侍風の男の腹に強打を打ち込む事に成功。殴打の進化が進んでいないせいで致命傷に至らなかったが、それも数発殴れば倒せるレベルに至る。見えない攻撃とは違い、分かる攻撃は対処可能。

 刀舞う距離で回避しながら、即死級の一撃に至るまで何度も殴打。1発、2発と、殴る度に伝わる感触が柔らかくなる。そして、3発目に内臓を潰す一撃を見舞う。斬撃を見切ってしまえば、勝てない相手ではなかった。


「ボグッ! こりゃ死ぬな…」


 痛みの無い仮の肉体だから、死が迫っていても全く動じていない。気になるのは、敗北に対してもあまり気にしている様子がない事。他の参加者だったら、もっと落胆していたような気がする。


「…何故、悔しがらない?」

「だって、負ける事は無いからな!」


 不可解にも自ら心臓を貫いた。一瞬、試合を放棄したのかと思った。だが、「負ける事は無い」のセリフが否定。それを裏付けるように、侍風の男は新しい体で復活。多分、運営側から許可されている。だから…絶対に負けない。


「癒着しているのか?」

「まぁそんなところだ。誰も優勝させないのが俺の仕事、仕方が無いと諦めな!」


 幾ら戦っても意味が無い。何度殺しても、如何に実力で上回っても、運営に許された無限復活の反則には敵わない。俺を想定してないのは救いだが、それを差し引いても怒りを禁じえない。理不尽、身勝手…それらの言葉が、制御していた殺戮衝動を強くしていく。だが、負ける訳にはいかない。殺戮衝動に委ねる癖がついてしまったら…引き返せない気がする。

 命を無下にした攻撃が始まる。足が砕けても構わず速度を上げ、反撃で貫かれても構わず斬りかかって来る。形振り構わない攻撃は、進化で順応した段階を超えている。


「……く、喰い…たい」


 抑えられない感情が溢れ、体が殺戮衝動に奪われそう。愛を強く意識して手綱を引いても、殺戮衝動に振り解かれる。何より…自分自身が本気で止めたいと思っていない。心の何処かで、「相応の結果」だと思ってしまう。


「お前が…喰いたい。その禍々しく穢れた体を…」


 殺戮衝動は進化している。野性的な衝動の塊だったのが、明確な意思を誇示できるようなっている。穢れている肉が喰いたい…俺の欲望をどのように解釈したらそうなるんだ? 自分の心が生み出した存在だが、思考を理解できない。普通は穢れているものより、旨いモノの方が良いと思うけど…。


「変人か?」

「あ、アニキ……嫌な感じがする……」

「そういうのを杞憂って言うんだ! どうせ死ぬ事は無いんだから、気にすんな!」


 侍風の男は、高速で懐に飛び込み刀で腹を突く。だが、触れた瞬間に刀身が折れる。


「自ら喰われに来るとは、律儀な奴だ」


 殺戮衝動に乗っ取られた体は、侍風の男の胸を右腕で貫く。伝わってくる血のぬくもりが、異様に心地良い。漂ってくる匂いが、ステーキのように美味しそう。思いっきり喰らいつきたい……だけど、そんな事をしたら殺戮衝動に負けた事になる。

 必死に愛を意識する。しかし、言葉だけでは抑制できない。何か具体的な映像を添えれば、抑制できるかもしれない。何がある? 母との記憶? 父との記憶? 真桜…は論外。多恵は? 求めていたモノだけど、何かちょっとだけ足りない。もっとはっきり「これだ!」と言える幸せの姿。最近見た……そうか、ミネが見せてくれた日常。美味しい料理、明るい「お帰り」の声、ありふれた笑顔。イメージできる映像が浮かぶ事で、抑制の力は増大。なんとか、殺戮衝動を完封。


「…ば、化け物め!」


 折れた刀に動揺する侍風の男。だが、まだ戦いを終えるつもりは無いのか素手で殴りかかって来る。通じないと分かりつつも、依頼を全うする為に…いや、金目当てかな? どちらにしても厄介。こんな奴を諦めさせるためにはどうしたら良いんだ?

 考え出した答えは、殺戮衝動っぽい行動。腕を掴んで地面に叩き付け、不気味な笑みを浮かべ大きく口を開ける。


「ひ、ひぃーーーー!」


 強者の雰囲気は失せ、ただの一般人に変わる。どうやら、刀の破壊でかなり精神ダメージを受けていたらしい。

 イレギュラーはあったが、これで何とか優勝……だと良いけど。




 殺戮衝動に負けなかったのは良いが、頼るのが怖くて左腕の再生が出来ずにいる。拾った左腕を傷口に合わせて圧着、ずれないように気を付けながら右脇に大剣を挟んで移動している。歩きづらいし、痛みのせいか疲労がどんどん蓄積、スタート地点に戻るのも大変。

 やっとの事でスタート地点の戻ると、受付嬢が不機嫌そうな顔でたった一人で待っていた。


「遅かったですね」

「はぁはぁ…仕方ないだろ? この有様なんだから…」

「…失格です!」

「はぁ? 俺が何に違反した? 死亡していないし、武器もこれしか…」

「手を使いましたよね? ダメじゃないですか、違う武器を使ったら!」


 誰が想像できただろうか、手を攻撃手段に使ってはいけないって。まぁ、確かにボクサーとかは武器として認定され、日常生活の場で使用すれば罰せられる。だからって、異世界でまで適用するのか。ルールだからと押し切られたら文句の言いようが無いが、あまりにも理不尽。怒りを封じていなかったら激怒していた。


「……仕方ないな」


 諦めたくないけど、諦めるしかない。勝利を許さない運営に何を言っても無駄、その手先である受付嬢に通じる言葉は無い。俺に出来るのは、怒りが沸き起こる前に帰る事ぐらい…。


「待ちなさ~い」


 聞き覚えるのある声。この特徴のある喋り方をするのは一人しか知らない。そしてそれは、神亀が負けてしまった証でもある。


「ジョイン、神亀を殺したのか?」

「その話は後。今は、この腐った結果を覆さないとね」


 ジョインは、震え上がる受付嬢の肩を叩き、女優モードから男優モードへ移行。迫力のある声で怒鳴る。


「ふざけるなよ! 誰が不正しろと言った!」

「す、すみませ~ん! お許しください! 町長の命令なんです。絶対に優勝させるなって言ったんです!」

「人のせいにするな! お前の信念が足りなかっただけだろ? 不正に目を瞑って楽に生きようとしただけだろ?」


 受付嬢の心は完全に潰れ、項垂れを超えて溶けるように地面に倒れる。これはこれで独特で…面白い。笑ってはいけないが、思わず笑ってしまう。

 すると、ジョインは女優モードへ再度移行。


「…許しが出たようだから、今回はここまで」


 妙な雰囲気になってしまったが、何とか優勝決定。しかし、ジョインに知られてしまった以上、群馬エリアの解放は願えそうもない。こうなったら、神亀の弔いを兼ねて決戦に挑むしかない。




 半日の行程を歩き、フロンティアの看板を潜った頃には夜闇に包まれる時間。左腕の再生もほとんど進んでおらず、血塗れの腕を抱える様は激戦を超えた雄姿に見えなくもない。

 ギルドの扉を押し開けると、俺の姿を見たハンター達が逃げるように去って行く。先に帰っている受付嬢とジョインが何か言ったのか? それとも、俺の姿に驚いただけ? まぁ、どちらでも良いか。それより、優勝者である俺はここで何をしたら良いのだろうか。誰も居ないギルドで…。


「こっちよ、早く来なさい」


 床が浮き、そこからジョインが顔を出す。


「地下室? そんなモノがあったのか…」

「関心は後々、早くしなさい」


 誘われるまま地下室へ。

 意外と広い空間には、達成済みの依頼書がファイルに綴じられ、モンスターレベル、達成難度、依頼額の項目ごとに棚に綺麗に整頓されている。

 気になって見ていると、奥にある鉄柵で出来た扉から悲痛な叫びが聞こえる。


「すびまぜん。もうじまぜん。ですがら…クビにじないで~」


 何だか申し訳ない気持ちで、扉を開く。

 

「だから言っているでしょ? クビになっても、新しい職場を紹介すると…」

「肉体労働ですよね? 死んじゃうくらいキツイんですよね? そんなのできましぇ~ん」


 見た目の清楚感、礼儀正しい態度、失敗しない雰囲気、それら全部が見事に崩壊。他の人がどう思うか分からなけど、少なくとも俺は今の姿の方が好印象。人ってのは、多少欠点がある方が魅力的だと思う。


「優勝者に見せたかった光景か?」

「ごめんなさいね。この子があまりにも意固地で…」


 受付嬢は、泣きながら俺に迫って来る。


「おでがいしまず。クビにじないで!」

「……はぁ、クビは許してやってくれ」

「もう、より良い職場へ誘う為よ。この子にとってはその方が断然良い!」

「で、その職場って?」

「あなたの拠点よ」


 ジョインの話だと、神亀は、戦闘による勝利ではなく、交渉による結果的な勝利を選んだらしい。交渉の内容は、望みを叶える代わりに仲間になるというもの。勝手に決めた事に反感はあるが、ジョインの差別の無い演劇には特に反対は無い。劇場を造る事も一応可能だし、住人も俺とミネだけだから反対の声も無い。それに、ジョインが仲間になれば攻略班の戦力を削ぐ事もできる。ただ気になるのは…神亀の根端。純粋に仲間を増やしたかっただけとは思えない。本人を問い質して、このモヤモヤを晴らしたい…。

 因みに、優勝賞品は後日改めてと言う事になった。

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