認められる、覚えられる、思い出される。
市原 切名
ゲーム上で俺の前に立つそいつは、紛れもなく本人だった。
「何でお前が」
「どうして俺のチームに」
俺がそう尋ねると彼はすぐに返事を返した。
「たまたまゲームをプレイしようとしたら、たまたま君らしきキャラがチーム員を募集してたから、たまたま入っただけだね」
「だとしても俺だとはわかんねぇだろ」
「わかるよ」
そういうと彼はゲーム内でとある画面を共有してきた。
「この競技のランキング一位、君だろ」
「それは…………」
その画面には俺がやっていたゲーム内の競技ランキングが表示されていた。そこのランキング一位には「カネツグ」というユーザー名がついている。それは紛れもない俺自身だった。
「この競技は捕手としての判断力をしっかりと持ってなければ一方的にCPUに打ち込まれて当然の競技。」
「しかもレベルが高いから普通に判断力を持っていたとしても普通に打たれるんだ。」
「だがここにいた一位の元ブランクのプレイヤーは違った。そいつは打者一巡を完璧に打ち取って見せた。俺の野球経験上、そんなことをできるやつは一人しかいない。」
「今、俺の目の前にいるプレイヤー、カネツグ…………二階堂兼継、お前しか知らない。」
ここまで彼に熱心に語られたのは久しぶりだと感じながら、
「ここまで褒められるとは思わなかったぜ、切名」
「まあ結局見つけられたのは、君がバグらせたデータをそのままにブランクの状態でそんな記録を出したからなんだけどね。」
「え」
俺はその発言に呆れたものの、いまだに彼が俺の実力を認めてくれていることが何よりも嬉しかった。