リアルお菓子の家
始まり始まり〜
私は幼い頃、『お菓子の家』という童話を読んだ。
そしていつか必ず、お菓子でできた家を実際に作り、そこで暮らそうと、思っていた。
そしてついに、今日それが叶った!
長い年月と費用をかけて、ついにお菓子の家が完成した!
チョコレートのドアと壁、クッキーの屋根と床!
柱はキャンディー、窓は氷砂糖!
接着剤にはチョコレート、釘にはキャンディーを使用!
備え付けの家具も全てお菓子で、カラフルなチョコレート、キャンディー、クッキー、ゼリー、パイ、グミで飾り付けした、本物のお菓子の家だ!
今日から私はここで暮らすんだ!
私は胸を躍らせながら、お菓子の家に入った。
バキッ
家に入った瞬間、床が割れた。
床はクッキーでできていたから、脆かったようだ。
私は壊さないように、そ〜っとはいり、ドアを閉めた。
その時、妙に手がベタベタして、手を見た。
ドアノブに使用していたチョコレートが、握っている間に溶けてしまったようだ。
私は手を舐めて、家の奥に入った。
部屋の中を歩くのも一苦労だ。
床や壁が崩れないように、慎重にしないと。
イスに座ったり、ベッドに横になるのもだ。
その上、触れると身体中がベタベタする。
しばらくすると、所々にカビが生えてきた。
鳥やアリが家のあちこちを食べ始めた。
私は実際に、お菓子の家を建てたことを後悔した。
実用性がないため、お金も時間もたくさんムダにしてしまった。
何より、お菓子の家に対する憧れが無くなってしまった。
実現させようとしないで、いつまでも夢を見続けていればよかった。
夢が叶うということは、夢が現実になるということだ。
夢はキラキラ輝いていて、美しい。
しかし、現実は地味で薄汚れていて面倒くさい。
私はお菓子の家を崩し、公園のハトやアリに全部あげた。
そしてお菓子屋を始めた。
目玉商品はお菓子でできた『ミニチュアお菓子の家』。
夢を残して実現したお菓子の家。
これぐらいが丁度いい。
夢はいい加減な考えで、実現させてはダメだな。