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彼女の影となり、剣となる

視点:ミカゲ

 ああ、どうやら……リアナちゃんが目覚めたようだ。

 今宿屋の外に出て、何やら宿のお姉さんと話している。


 何はともあれ、目覚めてくれて良かった。二日間も目覚めなくて本当にどうしようかと心配したよ。おっ、話しも終わってそろそろ出発するみたいだ。それじゃ行こうかな。


 ん? 私は何をしているんだって? それは……その、あれだ、リアナちゃんを見守っているんだよ。外敵から彼女を護るため、仕方なく後ろから付け回して……か、勘違いしないで欲しい。これはけしてストーカー行為ではなく、A級冒険者足る私の責務的なアレで――ああああああああ!!


 そうだよ、その通りだよ! 土壇場で彼女と向き合うのが怖くなったから逃げたよ! 向き合うのは怖いけど気になるからストーキングしてるんだよ!


 悪いか!?


 はぁはぁ……好きで逃げたわけじゃないんだ。本当は私が助けたことをアピールしたかった! 私がオーガを倒して、リアナちゃんを救った恋人兼王子様だよって言ってやりたかった!!


 だけどね? 考えてみたら彼女が私に抱いてる印象ってさ、初対面でいきなり胸のサイズを予想したり、挙句の果てに途中で逃げ出すような、変態かつ失礼なやべー奴なんだよ多分。


 そんな印象を持たれてる状態で彼女が目覚めたときに、変態(わたし)が目の前に居たらどうなると思う? まず、衛兵呼ばれるよね。いや別に呼ばれても平気なんだけどさ、心が傷つくよ。


 仮に呼ばれなかったとして、オーガを倒して君を救ったんだよハニーとか言っても信じてもらえるとは思えない。


 だから私は逃げたんだ!


 ……いや、それも言い訳だな。じゃあ正直に言おう!

 そもそもオーガを倒したよって彼女の顔を見て伝えられる自信がない!


 絶対、何もしゃべれないって。寝ている彼女ですらドギマギしちゃうのに、あの美しい瞳が私に向けられている状態で話すなんて……無理ゲーすぎるでしょ。魔王を一人で倒せって言ってるようなもんだよ? 出来るわけないじゃないか。


 でもなぁ、やっぱ惜しかった。素直に言えていれば結構な好感度稼げたはずだよなぁ……あれ、今思うとオーガを倒したエピソードって好感度どころか、むしろリアナちゃんと仲直りできる最大のチャンスだったんじゃないのか?


 はぁぁ、何やってんだ私は……馬鹿すぎる。

 でも、今更彼女の前に出て行って、『オーガを倒して助けたのは実は私だ。だから先日のセクハラ発言を許して、尚且つ仲良くしてくれ』なんて言えるわけない。無理だよ。


 というか、私だったらそんな恩着せがましい奴と絶対に仲良くなりたくないぞ。

 ……諦めよう。さりげなくアピールできる時期は死んだんだ。もうあの時間は終わって、私も人生と向き合う時なんだ。

 

 いつまでもクヨクヨしてたって仕方がない。

 また仲良く出来る機会を探そう。それまで私は――リアナちゃんを護る影となり、剣となる!


 ふふっ……なんか、今の私、ちょっとカッコ良くなかったかな?


 あっ……正面から歩いてきた子供が私を見て泣き始めた……おいおい、勘弁してくれ。何もしてないぞ私は! 街を歩くたびに何回こういう誤解を受ければ良いんだ。頼むから泣き止んでくれよぉ!


 あれ、リアナちゃんどこいった……?

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― 新着の感想 ―
[一言] リアナちゃん帰ってきたらお友達とめっちゃ気まずそう ミカゲさんは報われて欲しいですね〜
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