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一人じゃない

視点:ミカゲ

 中々帰ってこないな、リアナちゃん。

 いやまあ、久しぶりの再会ならこんなものなんだろうけどね。


 先程まで彼女と夢の様な接触をしていた所為で、どうも私は欲張りになっているようだ。リアナちゃんはけして私のモノじゃないと、いい加減に理解しなければ‼


 ……やっぱり、元のパーティに戻るんだろうな。

 だとすると気楽に会えなくなりそうだ。


 ギルドのランク制というのは思ったよりも根深い。

 D級パーティに、私がちょくちょく接触していたら、彼女達にも迷惑が掛かるだろう。


 あー、せっかく仲良くなれそうだったのに、またフリダシに戻ってしまうのか!

 そんなの嫌だーー! リアナちゃんともっとイチャイチャしたいんだ私は‼


 無表情でやきもきしてると、宿から誰か出て来るのが見えた。

 あれは……リアナちゃんと一緒に居たパーティの娘だ。


 何だか慌てていた様子だけど、どうしたんだろうか?


 疑問に思っていると、更に宿からもう一人出て来た。

 あの娘もリアナちゃんと一緒に居たパーティの子だった筈だ。


 あれ? リアナちゃんはどこに? 一緒じゃなかったのか?

 ひょっとして行き違いにでもなったのだろうか。


 それからしばらく待ったが、リアナちゃんが宿から出てこない。

 気付かない内に宿を出た線を考えたが、それはあり得ない事だと思い直した。何故なら、私は『宿敵感知』の効果により、リアナちゃんがどこにいるのか分かる。


 彼女は間違いなく宿の中にいる。

 だが流石に遅すぎる。仲間の娘達が出て行ってから既に20分が経っていた。


「なにか、あったのか……?」


 まさか……あの娘達から何か危害を加えられたとか?

 最悪の可能性を考えた私は、居ても経ってもいられなくなり宿へと突入した。


「ようこそ、こ――ひっ!」


 受付のお姉さんに一瞬で近づき、リアナちゃんの部屋がどこにあるのか聞く。


「に、にかいですッ! 二階に行きましたから……殺さないで!」


 その言葉に少し傷ついたけど、今はそんなことを気にしてる場合ではない。

 お姉さんにお礼を言って、私は二階へと駆け上がる。


 リアナちゃんの気配がする、奥の部屋からだ!

 彼女が無事か確認したかった私は、ノックもせずにそのまま部屋へと突入した。


 するとそこには――下を向いて座り込み、泣いている彼女の姿があった。


「リアナさん……?」


 私が声を掛けると、彼女は身体をビクッと反応させこちらを向いた。

 誤魔化そうと目を擦り始めるが、大粒の涙は次から次へと溢れ、その行為の意味を無くしている。


()()()()に、何かされたのか?」

「あっ……これは、違うんです‼ 違うんです、ミカゲさん。全部わたしが悪くてっ……わたしが、みんなを不幸にしたからっ」


 そう言って、自分をひたすら責める彼女を見ているのは辛かった。

 何があったのかは知らない。だけど、リアナちゃんは十分に酷い目にあって来た。もうこれ以上、泣かせたくなどなかった。


 だから私は、座り込んでいるリアナちゃんの傍まで近づき、そのまましゃがみ込んで――彼女をぎゅっと抱き締めた。もう、離したくないという意味を込めて。


「これ以上、貴女が苦しむ必要なんてないんだ」

「でも、わたしは最低な事をしてっ……! 二人を苦しめて来たんです。ミカゲさんだって、話を聞けば絶対にわたしから離れたくなります」

「そんなことは、あり得ない」

「どうしてそんな事が言い切れるんですかッ‼ わたしは無自覚に、人を不幸にした女なんです。ミカゲさんも、わたしなんかといたら……いつか不幸になるかも知れないんですよ」

「私はそんなことには絶対にならない。それに、貴女は人を不幸にするような、そんな女性(ひと)ではなく、とても優しい女性(ひと)だと知っているから」


 そうだ、私にとって一番怖いのはリアナちゃんが私の前からいなくなる事なんだ。なら、やる事は分かっているはずだ。


 傷ついている彼女なんか見たくない。いつも笑っていて欲しい。

 その気持ちを、伝えるべきなんだ。


「分かっているから、私は貴女から離れない。ずっと味方であり続けたいんだ」

「っ……ミカゲ、さん」

「リアナさん――貴女はけして、一人じゃない」


 そう伝えると、リアナちゃんは私の胸に顔を(うず)め泣き始めた。

 たぶん……ずっと我慢していたんだと思う。


 酷い出来事を体験した末に、ようやく会えた親友達からも否定され、ツラくない筈がないじゃないか。


 それでもなお、自分の事よりも人の事を考えて……自分を責めて。


 こんなに優しい女の子が、幸せになれないなど認められるはずがない。

 誰もが彼女を否定するというのなら、私がいつでも彼女を肯定しよう。


 誰も彼女を幸せにしないのなら、私が幸せにするだけだ。

 どんな理不尽からも、悪意からも――彼女を護ってみせる。


 ひたすら私の胸の中で泣いている彼女を見て、そう硬く決意した。

 もう誰にも彼女を渡さない。誰にも、彼女を傷つけさせない。


 だって私は、リアナちゃんの事が好きだから……愛してるのだから‼

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― 新着の感想 ―
[良い点] お疲れ様でした。 ミカゲさん、ナイス! これでリアナちゃんも落ち着くだろう。 しかし、リアナちゃんも一人前に成るように鍛え上げねば依存なままでは、いずれ同じような事が起こり屑冒険者…
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