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ミカゲの日常

視点:ミカゲ

 ん? ここはどこ? 私は一体……だれ――


 ……いや待て、寝ぼけている場合じゃない。確か私は、リアナちゃんに告白しようとした土壇場で意識を失ってそのまま倒れてしまったんだ。情けないとかいうレベルじゃないよ全く。


 どうやら仰向(あおむ)けに倒れてしまったみたいだが、不思議と後頭部に痛みはない。

 こう見えて結構頑丈だからなぁ、床の硬さよりもきっと私の頭の方が上だったのだろう。


 でも、なんだろう? 床にしてはやけにその……後頭部に柔らかな感触が来ているような。程よい弾力で……スベスベしてて、あと少し良い匂いもするような。これは一体、何だ?


 気になった私はゆっくりと(まぶた)を開けた。

 すると――最初に目に飛び込んできたのは、リアナちゃんの美しい顔だった。

 更にすぐ近くには、彼女の実りに実った二つの乳房山が!!


(ぶっ!!)


 あまりの絶景に、鼻から鮮血の飛沫(しぶき)が舞い散りそうになる。

 それだけはならぬ!! と城を落とされそうな一国一城の(あるじ)のごとく焦った気持ちとなった私は、剣豪秘儀『血流操作(けつりゅうそうさ)』で鼻血を必死に抑え込む。


 ふぅ、このスキルは出血した際に流れ出す血を止め治癒する効果がある。

 応用すれば、出掛かった鼻血を再び循環(じゅんかん)させ毛細血管を治す事も容易い。


 つまり、私が仮に美少女の……その、あられもない姿を見たとしても大丈夫だという事だ。精神的にはともかく、少なくとも見た目には出さない自信がある。


 それにしても、私にこの秘儀(ひぎ)を使わせるとは――なんていけない子なんだ。

 いや、恐らくだけど倒れた私の事を介抱してくれたのは分かるよ? いけない子どころか良い子だね。でもいけない子なんだッ!!


 よく見ればリアナちゃんも目を閉じており、頭はゆっくりと舟を()ぐような動きをしていた。あんな事があって彼女も疲れていたろうに……本当に申し訳ない。


 あれ……ってことは、待て待て。この体勢でリアナちゃんのご尊顔(そんがん)が目の前にあるという事は、つまり、わた、私の後頭部に今当たっているのは、リアナちゃんの太ももなわけで。


 ――――これは、世に言う膝枕という奴なのでは!?


 ふおおおおおおおおお! 前世と合わせて苦節五十年! (つい)に私は恋人達がイチャイチャする時に良くやってしまう甘いアバンチュール(火遊び)を成し遂げてしまったと言うのか。


 ああ、リアナちゃんの感触が直接伝わってくるというのが、これほどまでに心地良いなんて。美少女の太ももに頭を乗せているという至福の瞬間ッ!


 前世なら絵面的にも、倫理的にもアウトなこの行為も、女性である今ならば多少は許されるはずだ。でも女性同士の膝枕って有りなんだろうか? 私にはそこら辺の事はサッパリ分からない。恋人同士がするイメージだけどね。まあ、実際に今して貰ってるんだから問題ないか!


 ちなみに、こんなに心中では盛り上がってるけど表面上は非常に冷静な顔でリアナちゃんを見つめている。ムッツリの極致(きょくち)に居る私には、この喜びを表面に出すような勇気はない。


 あとこの位置から御本山を見る度に鼻血が出そうになるので、常時『血流操作』を発動しっ放しだ。至福の現状ではあるのだが、このままでは消耗しすぎてまた気絶してしまう。


(名残惜しいが……起きるか、くううう)


 血涙を流しながら、渋々(しぶしぶ)リアナちゃんの柔らかな太ももから頭を上げる。


 頭を上げた際、吐息が掛かる距離までリアナちゃんの顔に近づいてしまったが、ここは鋼の理性で耐え忍んだ。艶の良い彼女の唇をガン見してしまったけど仕方ないよね。だって男の子だもの。


 何だか、大変な戦いを得たような充実感と疲労感が襲ってきた。

 太ももの上にあった頭を上げただけとは、とても思えないぞ。


 けど柔らかかったなぁ……リアナちゃんはどこを触っても柔らかいという私の理論がまた一つ証明されてしまった。いかん、これじゃ私がまるで変態みたいじゃないか。


 しかし、正座をしながら眠りこけている彼女をこのままにはしておけない。

 ベッドに寝かせてあげよう。


 私は般若心経(はんにゃしんきょう)を唱え心を無にし、更に目を瞑りながら彼女を抱き抱えた。

『瞬歩』を使用し、彼女の柔肌に接触する時間を最小限まで短縮。そして見事、リアナちゃんをベッドに寝かせることに成功する。


「これで、何もかも終わりだ……任務……完了」


 それでもなお、膝枕により高揚していた私の精神にリアナちゃんの柔肌は威力が高すぎた――そう、高すぎたのだ。既に『血流操作』の使用回数は二桁に(およ)んでいる。


 オーガや屑男共とはまた違った死闘だった。

 やはり、一番の強敵は自分自身という事だな。


 人の(ごう)とは、何と深いものなのだろうか。

 私たちは、罪を犯しつつ、それを受け入れながら生きていかねばならない。


 ――だから、ごめんリアナちゃん。貴女の太ももは、最高でした。





 ベッドのリアナちゃんを拝んだ私は、そのまま部屋を出て玄関へと進む。

 外へと出ると、うっすらと朝日が出ていた。新しい朝が来たのだ。


 家の前に設置してある鋼鉄のポストを覗くと、一通の手紙が入っていた。

 ちなみに、これは別に郵便受けじゃないぞ。ギルドから大事な用事がある際にはこのポストに手紙が転送されてくる仕掛けになっている。


 いわば物を運ぶ転送装置のようなものだ。手紙限定だけどね、これは。

 大事な案件の場合もあるから、私は起きたら真っ先にここを確認するんだ。


 昨日あんな事があったから、余計に気になっていたのもある。事後処理なども結局はどうなったのか分からないし、どちらにせよ一度呼び出されることは分かっていた。


 手紙を読むと、リアナちゃんと一緒にギルドへと来てくれという(むね)が書いてあった。時間は……十時頃か。指輪型の魔道時計を見ると針は七を差していた。


 これなら、朝食を食べてからでも十分間に合うな。

 リアナちゃんはまだしばらく寝かせておくとして、朝食でも作るとしよう。


 私の手料理をリアナちゃんに食べさせるのだッ! 本当は、リアナちゃんの手料理の方が食べたいんだけど……私の家に招いている以上、彼女は客人だしそんな事をさせるわけにもいかないよね。


 よぉーし! 腕によりをかけてご馳走を作るぞ!!


 まずはコボルトの肝臓炒め――――

あ、料理回とかないです。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 更新、お疲れ様です! リアナちゃんマジ天使! 血流操作で鼻血止めww [一言] 良い話だなぁ、と読み手をホッコリさせて締め……と思いきや、コボルトの肝臓炒めww
[良い点] お疲れ様でした。 もしも、リアナちゃんが本当に聖女の才能があって、そのせいで出会ったイケメン王族に求婚されたり、魔人に拉致されたり、ラッキースケベな勇者と運命の出会いをしたりすると、ミ…
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