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寝起き三分の俺と鏡と幼馴染み

 ──クッキーを貰った。とても美味そうな。アイツはよく俺にものを買い与える。まるで餌付けみたいに。

 分かってはいても、拒めない。突然「はーい、どうぞ」と言って差し出されたら、たとえそれが怪しいものだったとしても、ジッと見詰めてスンスンと匂いを嗅いだら素直に受け取ってしまう。

 染み付いてしまった習慣だ。

 だから今度のもあっさり受け取った。それがいけなかった。


 ──解せぬ。まず初めに抱いた感想はそれだった。


 洗面台の鏡に映る自分の姿はえらく小さい。それも、物理的に。……物理的に。

 現実は小説よりも奇なり、と言う(らしい)が、ここまでくると現実は小説くらい奇なり、だ。

 息をふぅっと吐き出し、深々と再び吸う。そして

「ミツルぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅッッッ!?!?!?」

 大声で幼馴染みの名を叫ぶ。一戸建ての賃貸住宅でシェアハウスしている唯一頼れる相棒は、リビングで澄まし顔でトーストとコーヒーの用意をしていた。

 身体が物理的に小さくなったがために、ダボダボになったワイシャツとズボンのせいでバランスが総崩れ。無論そのまま床に熱烈なキスをするハメに………………は、ならなかった。

「……レン?」

 ギリギリのところで幼馴染みにして唯一の親友、ミツルがこの俺の身体を支えてくれていた。ナイス。流石は元バレー部幽霊部員。

「ぶねぇ……マジで死ぬとこだったぁ……っぶねぇ………………あっ、そうだミツル。俺、ちっちゃくなってんねやけど。」

「ああ、うん。知ってるよー。かぁいくなったねー、レン?」

「あぁ……あぁぁぁぁぁぁ……ミツルに撫でられてる……嫌な夢……寝よ」

「オレに撫でられる方が重要なのかー……ほら、お待ちなさいな」

「うぐえっ、放せコンチキショーーーーーッ!! せめて今後の段取りぐらい考えさせろバカッ!? 病院行くか、お寺に行くか神社に行くか!? いやその前に学校どうしよう!? ああもう人生めちゃくちゃ!!」

「大丈夫大丈夫。ほら、こっちおいで。オレがギューってしたらこの悪夢も覚めるからー。」

「マジッ!?」

 根も葉もないことを言われたものの、寝起き三分で処理する情報量ではなかったがために、俺は嫌々ながらも、おずおずと、ぎこちなく、ミツルの前に一歩踏み出した。そのまま『好きにしろ』と顔を逸らすと、途端に抱き締められる。

 きもちわりぃッ!!

「……。」

「……。」

「……。」

「……。」


 ──およそ十秒の間。その後に……


「ふんぬッ」

「はぁぐッ……!?」


 大嘘吐きは鉄拳制裁された。(脇腹in手刀)



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