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 シュタイン家は公爵の爵位を持つ家系の為、王族の話もちらほらと風に乗って窓からどころか玄関から入ってくることもある。

 現在の国王夫妻に子供が三人いるのは周知の事実であり、シュムックの耳にもきちんと情報として入ってきてはいた。

 それと同時に、自分と同い年の男児がいるということも。

 そんなシュタイン家にやってくる大公殿下と言われれば、誰が来るのか予想するのは簡単だ。

「私のせいでシュタイン家の地位が下がったらどうしよう」

「何を仰るのです。その為にここ最近、マナーのレッスンに勤しんできたのではないですか」

「なんか最近カステン手厳しくない?とか思ってたら、そういう事だったのかよ!」

「坊っちゃん、言葉遣い」

 シュムックは冷静な彼の表情を崩したくて、口を引き結んで何か言い返せないかと思案してみたものの、それよりもまず服を着替えて歓迎の準備をしなくてはということに気づき顔を机に沈めた。

 カステンは大人しくなった主人を見て、近くを通ったメイドに早急に衣装の準備をするように指示をする。

 料理長も殿下が来るということで気合い入れて下準備を行っているし、メイドたちはいつも以上に屋敷を隅々まで掃除していた。

 庭師は今日の為だけに取り寄せた花で壮観な景色を作り上げ、近衛たちの間では仕事を遂行するぞという強い緊張感が漂っている。

 公爵家として殿下がお越しになるということはとても光栄なことだ。

 しかもわざわざあちら側から出向いて下さるというのなら尚更。

「お父様たちに言われなくとも分かってるさ。仲良くしろ、ってことだろ」

 シュムックは同年代の子供たちと比較すると、圧倒的に知性の発達が早い。常に大人の顔色を伺って、表面上の言葉よりもその向こう側を見やる。だからなのか、必要以上に考えすぎてしまう傾向があった。

 確かに王族と繋がりがあれば、シュタイン家の将来は安泰に近づくだろう。しかしこの殿下の来訪は、フェルスとブルーメが陛下に頼み込んで実現したことでもあった。

 シュムックを溺愛しすぎている二人は、なかなか同い年の輪に入れていない息子を見て、一対一でならばどうだろうと考えたのである。

 何故この人選になったのかといえば、シュムックと同い年である殿下もどこか達観した雰囲気を持っていると小耳に挟んだフェルスが、権力を最大限に使用した結果だ。

 フェルスの一番はいつだって妻と息子なので、今回の相手役である殿下の心情は全く考えられていない。殿下がこちら側に足を運ぶことになっている辺り、察することができる。

 ちなみにフェルスが権力を武器に動いたのはこれが初めてだ。あのフェルス公爵が!と、少々社交界をざわつかせたのはまた別の話。

 その事をシュムックは知らないので、殿下と会うのは家のためといらない気遣いをしているのだ。

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