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天狗の鼻未満のメンズスティック

 あんな戦い方卑怯じゃね?


 というか、TTT-Gって1発ごとにマニュアル操作の装填があるんだろ?なんで3分であんだけ大量のミサイルうちあげれちまってんだよ?


 チートか?


 ずるだろ?


 大会委員会どうなってんだ?


 小声で観客がそんな不満を吐き出しているともいざ知らず、自分の勇姿に会場が酔いしれているものだと朱雀院カオルは素敵な笑顔を振りまき手を振っていた。


 大会側の演出。


 観客たちの思考の結果はそこにたどり着く。

 

 毎年の恒例行事と化したこのイベントに目新しさを取り入れようと演出で彼をカオルナンバーにしたてあげたに違いない。


 だってありえないから。


 「いやぁ、すまないねぇ。まさかこうも誰にも見つからないとは仕込みがいがあったよ!わっはっはっはっは!」


 舞台から降りたカオルは先ほど自分のプレイを見て見事なリアクションをしてくれた青年に声をかける。


 青年は目を細め不満そうなその瞳を黙ってカオルに向けた。


 「ん?どうした?トイレ我慢してたのか!係員さ~ん?係員さ~ん?このお兄さんトイレぇ!」


 「ちっちがうよ!」


 駆け足で駆け寄りイベントスタッフに赤面して訂正する男。


 「いやぁ、まぁみんなの見てる前で堂々と勝ったんだからそれはいいんだ。けど、あんなにもどうしようもない負け方初めてだったかさ……あんな負け方で僕の1万円……」


 「なるほどなるほど、それは確かにその通りだ。申し訳ない!」


 朱雀院カオルは頭をポリポリかきながら少し赤面して謝る。


 「いやぁ、自分の才能が天才なだけじゃあきたらず、幸運にも恵まれてまさか秋葉原タワー最上階からスタートだなんて思いもしなかったんだもん吾輩。そりゃもうはるか天空よりミサイル降り注いでみたくなるってもんだよね、しょうがないよ吾輩が目立つ舞台が用意されていたようなものだからね!」


 「謙遜とかそういうの一切ないんだね君……でも最上階には大黒舞妓が?」


 「……そうです。あなたいったいどこに隠れていたのですか」


 

 二人の会話を聞いて、青年と同じく不満げにも眉間にしわを寄せた大黒舞妓が歩み寄る。


 彼女はネットテレビで見ているとわからないが足元が覆い隠されるような服を着ていて今にも裾を踏んで転んでしまいそうな服を着ていた。


 そう思えば駆け足で駆け寄る彼女はゴツゴツと大きな足音の次に体を勢いよく地面に叩きつける音を鳴らして青年を目の前に倒れてしまう。


 「ひっひぇぇ!」


 それは倒れた彼女の声ではない。


 青年のズボンが、倒れる大黒舞妓の手に掴みかかられ青年の柔肌を公衆の面前に晒してしまったことによる男の情けない声だった。


 「す、すまない!」


 大黒舞妓はすぐさま自分のしでかしたことに気付き詫びを入れて立ち上がろうとするが彼女の服に隠されていた天狗が履いてそうな厚底の下駄のせいでうまく立ち上がることができない。


 「ふ、ふあぁあぁ、あぁ!」


 もう一度倒れる大黒舞妓。


 だがまた聞こえるその悲鳴は彼女のものではない。


 青年の最後の羞恥心を守るアイアンメイデンが大黒舞妓に剥がされ青年のメンズスティックがリリースされてしまったのだ。


 彼のメンズスティックは天狗の鼻ほどには立派じゃなかった。


 大黒舞妓は度重なる失態に赤面し、倒れ込みながら青年を見上げる。


 青年はすぐにスティックをハンドでクローズするとしゃがんで自分のパンツを握り締め引き上げた。


 「あ、ま、待ってくれ、手が絡まって!」


 大黒舞妓は自分の手がうまく離れず慌てるがそれよりも慌てていた青年はそんな言葉聞きもせず勢いよく下着をずり揚げる。


 「い、いやぁ……」


 「oh....my god!princess!」



 大黒舞妓のボディーガードらしき人物たちが急いで駆け寄るが間に合わない。

 

 大黒舞妓の手は青年の社会の窓に吸い込まれたままずりあげられ、その手には生暖かく、ザラザラとした肌触りとぶよぶよとした肉塊の感触が伝わってくる。


 「いやぁぁぁぁ!ぶ、無礼者!」


 大黒舞妓の手は勢いよく社会の窓から引き抜かれ、その引き抜かれた右手はすかさず拳を握り、再び青年の社会の窓に吸い込まれていく。


 「――ぐっはぁ!?」


 青年は倒れた。


 朱雀院カオルもさすがに目を覆って首を横に振る。


 青年は泡を吹いた。


 「あれ、カオル?これって?」


 そんなときにリリカは訪れる。


 つかの間の惨劇に誰も言葉を発せずにいたが当事者である大黒舞妓が一言提案した。


 「――とりあえず、私のVIP席へ移動しませんこと?」



 誰も返事はしなかった。


 だがそれではいけないとはっとしたボディーガードが溜息を吐くように承諾する。


 「Yes....Boss...」




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