表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
51/51

金に狂気あけみの命令!

「……早くもっていって貰わないと困るんですが?」



 忙しなく、車輪のついた荷台と大笑いの酒樽さかばを往復し続ける2人の男。


 それを腕を組んでせかす女は受付にいた人だ。



 「――カオルさん、なんだか僕切ないです」


 そう言いながらも全力で移動し続ける巨体の一つ目レミーは金貨がジャブジャブ入った袋をどんどん積み上げていく。



自分が年単位で働かないと手に入らないお金が今手元に、なんなら余るほどに積み重ねられているのだから。


 カオルもせっせと積み上げる金貨を見ながら何故こんなことにと後悔で溢れていた。



 「あとまだ銃弾も腐るほど入荷してますから持って行ってくださいね?」





 ――カオルは倒れる「無理!」





 ■



 事の前、朱雀院カオル達一行はバハナにたどり着くとまずは報酬を受け取りに行こうと箱舟の子達と別れて大笑いの酒樽さかばへと向かった。


 その道中、青春少女あけみが制圧のしるしである旗はあたしが立てといたからと、その制圧ポイントで100万ギーツ手に入るのよとちゃっかりいいとこ取りされたことに腹を立てていたのだがじゃないとあなたたちこの街からしばらく離れられないわよと意味ありげな言葉を残されたのだが来てみてようやくその理由がわかった。



 この世界の通貨、ギーツはめっちゃかさばる――。


 親指と人差し指をくっつけてその指幅よりも分厚いコイン1枚が1ギーツ。



 それが100万枚もあったらどうなっていたのかと思えば絶句する。


 あけみは自動的にシェルターに保管されるようにしているらしく、何も登録していないカオルがもし1000万ギーツなんて大金受け取ればまずそれを保管する倉庫を立てて、それを管理する人を雇ってと途方もない時間がかかったに違いない。



 幸い、カオルが受け取る報酬は1ゾンビ5ギーツから40ギーツ。


 強さに変わり変動し、2890匹討伐で総額5万ギーツ程


 まぁそれでも、銃弾を合わせると家一軒倉庫と化してしまう量。



  大笑いの酒樽さかばはそんなものが突然報酬として朝送り付けられたものだから管理に困り激怒、倉庫登録をしないなんてどういう神経しているのかと小一時間説教された。



 仕方なく、レミーの祖母の家を登録し、倉庫役人として祖母と箱舟の子達を登録しておいた。これで自動で報酬はレミー宅にあつめられ、その一部が手数料としてみんなに配当される。


 倉庫の場所と、レミーが旅立つにつき子供達の生活と祖母の生活が保障されるようになったのは一石二鳥でいいのだが、これじゃぁいずれ家がパンクするねという話になりうち2万ギーツは受付の女性を通して新たな倉庫の新設を依頼した。



 「まぁよかったんちゃうやっぱあたしが制圧しといて、街の防衛費とか考えてなかったやろ?」


 

 せわしなく往復する二人を目で追いながらふんぞり返り神輿に座るあけみは防衛費ってなんだよというカオルの目をみて答えた。



 「制圧による1000万ギーツはゾンビによって荒廃した都市を再生させて、もうこれ以上奪われないように武装させるための本拠地から送られる支給金よ。長い間奪われ続けていると支給金はどんどん上がっていくのだけれど、ブラハは数がすごいって噂が立ってたから誰も近づかなかったの、だからこんな馬鹿みたいな金額になったのね、普段なら100万ギーツぐらいよ。美味しいわカオル君」


 返さないのかよと突っ込むとあたしが管理しておいてあげるという名目で渡す気がないらしい。そのかわり、さき程カオルが受付で頼んでいた倉庫に関しては100倍いいやつを家兼用で発注しといてあげるから好きなだけ狩りつくしてこいという。金が必要になれば運送荷者を送るし、ばっちりバックアップしてあげるからと。



 あと、ドローンが増えた事で情報処理に手間取り今度は自ら戦いながらは難しいから護衛はもっと雇えと、あと銃弾や物資を運ぶ人間も雇わないとこの先行き詰まるとアドバイスをくれる。


 「ッハッハッハ、大変だなぁカオル。俺みたいに合体しちまえば護衛もいらないしロマン溢れるナイフ装備にすれば補充要因もいらないゾ!」


 Bランク報酬をボディービルダーのようにポーズをとり自慢するロジャー



 「――いいから、手伝って……」


 「――嫌」



 忙しいカオルをよそにこれからの行先を二人は話し始める。



 青春少女あけみはブラハにまず人を連れて開拓し都市として発展させる準備をしなきゃとクエストデータを漁りブラハの特産食材がなにかをメリメリ検索し始める。



 あけみはこれから制圧された領地を奪い返すのではなく、カオルとロジャーが行くのなら裏方に徹しようかと提案する。無論、制圧したら旗はたてずあたしに立てさせろと、ポイントだけよこせと、でないとランクアップしないからと、あんたたちはゾンビ倒してたら上がるんだからいいでしょうと畳みかける。



 ロジャーはガハハハと笑って楽観的。


 なにせもうBランクなので商船団を倒して首領ドン・バナゼーレを倒しに行こうと思えば行けるのだ。商船団のクエスト受注用件はBランク以上。


 キークエストを終えればバナゼーレの元へは行ける。



 ――ロジャーは勝手に快諾した。



 「ねぇカオル兄ちゃんこれ頂戴」

 「カオル兄ちゃんうちもこれ欲しい!」


 Yu-Su-姉妹も忙しない二人にはかまわず朱雀院カオルが無数に倒したゾンビの中から出てきた武器BOXを漁り目を輝かせていた。


 なかでもガトリング系、姉妹がゲームで愛用していた武器が発掘されてもう貰ったものだと大騒ぎ!


 MG999


 最高装填弾数、というか、補佐が一人いれば永遠弾がある限り打ち続けられる姉妹お気に入りの武器。


 制止状態で蜂の巣にされるリスクと引き換えにそこそこの精度とそこそこの連射速度を残したまま弾の尽きないMG999ガトリングは身を隠しやすい城砦防衛戦では最強と言われている。



 

 えぇ、じゃぁ手伝ってくれてもいいよねと孤独な目を向けるが姉妹はそれを無視。昨日カオルに獲物を全部取られて実はみんなストレスがマッハらしい。もっとやり合いたかったのだ。


 「――どうぞ」


 「ありがとう!」

 「ありがとう!」


 今度は素敵な笑顔を返してくれた。






 ――そんなにぎやかな大笑いの酒樽さかばに一報


 黒のフードマントを被った諜報部員と呼ばれる女が受付の女に駆け寄るとなにやら耳打ちをする。






 「――大変です、さっそくブラハが攻められているとのことです」



 あけみ、ロジャーYu-Su-姉妹は立ち上がる。



 「――行かなきゃ!」




 いや、どうせ今は攻められても何もないんだからこっち手伝ってくれてからでもいいだろうとカオルがヘの口で眺めているとあけみが一番狂気に満ちた形相に変わっていた。



 「――Yu-ちゃん!Su-ちゃん!いくわよ!奪われたら500万ギーツ没収されるわいな!」



 そのラリッた原因は金かよと口をハの字にしてあきれるカオル。


 「ロジャー、カオル!あなたたちはブラハの先にある街をさっさと制圧してきなさいよ!私達で防衛してるからさっさとさっさとさっさとしなさいだわさぁあああ!!」



 「いや、でも金と弾と武器が――」



 ――パチン!



 青春少女あけみが指を鳴らすとどこともなく現れる男達、彼らは何も言われることなく次々と荷物を運び荷台を押していく。



 ――できるならそれもっと早くやってよ、そう思ったカオルとレミー。




 「あたしとYu-ちゃんSu-ちゃんは裏方防衛ね!あんたたちはブラハはもう置いといてさきに行ってゾンビ送り込んでる親玉さっさとぬっころしってきなさい!!わぐるぁったぁ!?」



 「――はい」


 「――はい」



 レミーとカオルはあけみの狂気に押されて大笑いの酒樽さかばを逃げ出していく。

  











 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ