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ニート・働いたらお金を貰うも赤髪女性に奪われる。

 「大人のデパート?」


 山手線の中央の突っ切ってたどり着いたは秋葉原。


 そこにはピンクの箱がどっさりと荷卸しされているトラックが3台。


 いや、なんかもっと来ていたが荷卸しが上手く間に合わず混雑しているようだ。


 そのビルにはデカデカと「名女優みくる軍団コスプレショーとグッズ販売」と書かれている。


 「ほえぇ。大人のデパートってあるんですねぇ。女優さんって映画とか以外にもコスプレしてイベントするんですねぇ~。ほえぇぇ~」


 カオルは汗だくになってたどり着いた秋葉原を見渡して、まだお店一つ開いていないのに満足気に歩いている。


 なにせ興味はあっても朱雀院という家柄こういった場所には顔を出しづらいし、なにより心のどこかにこういった場所にくることに自分の羞恥心が許せなかった。


 学校で朱雀院カオルは清潔感があって勉強ができて、スポーツはなんでもそつなくこなすイメージ。


 それが周りから求める朱雀院の姿だった。


 そしてかおる自身その向けられる期待をわかっていたからこそそれに答え続けていた。


 故にそれに応えてきた自分が、オタクの聖地と呼ばれる秋葉原に出現していいものなのだろうかと自問自答してしまうのだ。


 学校に行くのは辞めたけれど、心の中で真面目ぶる朱雀院かおるが秋葉原を遠ざけていた。


 そんなカオルの生い立ちでは、なんかわけわかんないこんなことでもない限りこなかったかもしれない。


 「おぅ?おい君?うちの業者?」


 「すごいなぁ、今テレビに出てるアイドルもここで頑張ってたのかぁ」


 「おい?聞いてる?聞いてんのか?」


 「ほこてんってそういえばどこにあるのだろうか」 


 「おいってばぁ!」


 「!?」


 頭をこずかれ振り返ると頭にタオルを巻きつけたおやじが汗だくになってこちらを睨んでいる。


 「え?いや違うと思いますけど?」


 「違うと思うってなんだよ!」


 「え、いや、僕たまたまここ通っただけなんですけど?」


 「――こんな時間に?」


 「――5:12ですね」


 駅の改札を振り返って見えた時刻に顔を見合わせる。


 「よっしゃ、お兄ちゃんちょっと荷物運ぶの手伝って!2時間はかからへんから!5千円あげるで!」


 「えぇ?急ですね?」


 なんでも今日のイベントで使う商品を早く荷卸ししないと人が混んでくると身動きが取れなくなってしまうとかなんとか。とりあえず急ぎらしくて大変らしい。


 いわれるがままにカオルは荷物に積んである荷物をビルのエレベーター前までひたすら往復する。


 ひたすらひたすら。


 たまに掴む勢い余って箱から長ぼそい棒がでてきたり桃みたいなものがでてきたり自分が何を運んでるのかしばしば気にはなったけれどもそれよりも量が膨大過ぎて休む暇なく働いた。


 そしてやっとの思いで最後のトラックにエンジンがかかり、大通りに消えていくとかおるはしばらく体を動かしていなかったからかその場の地面に座り込み、ズルズルと体を日陰に寄せて寄りかかる。


 「疲れた。もう動けない。吾輩がいかに優秀でも限界はある」


 かおるは一人でぶつぶつ働かせすぎだろうと愚痴っていた。


 「冷たっ!」


 額に伝わってきたひんやりとした感触に目を開くと笑いかける赤い髪の女性が写っている。


 自分とそう変わらなさそうな幼い顔だちなのに髪は根元から染めていて、耳どころか唇にも開いているピアスがどこか見ていて不安にさせるような子。


 「あ、えっと?ありがとう?」


 差し出される500mlペットボトルのレモンティーを受け取るのをみてもう一度笑顔を返すと立ち去る女性。その彼女はビルの中に入っていってしまった。


 「おうぃ兄ちゃん!」


 それとすれ違うように本日いきなり仕事をふっかけたおやじがカオルのもとへと駆け寄ってくる。


 その手元には5千円札がひらひらと振り掲げられていた。


 「ほい、じゃぁお金!いやぁありがとう。おかげで間に合ったよ。こんだけ働いてくれるなら夏休みだしうちでバイトしてくれていいんだぞ!連絡先もしよかったら交換しないか!?」


 「あ、えっとスマホ家においてきちゃって・・・」


 「あぁ、そうかだったら、これ!」


 おじさんは名刺にしては汗でヨレヨレになった紙を渡して立ち去っていく。


 もしよかったらと一緒に渡された換えのTシャツもあったがそれは全身ピンクで着れたものではなかったしかといってこのビシャビシャの服でこれから街を歩くのも辛い。


 ピンクの服を見て溜息。


 自分のビシャビシャの服をつまんで溜息。


 すると、ビルからまたさっきの女性が顔をだしてこちらを手招きしているのがみえる。


 自分かどうかもわからなかったがどうやらカオルのことらしく、言われるがままにその場によると彼女が背中で隠していた何かを押し付けられた。


 一瞬何をされたかわからなかったがそれは服だ。


 けれどただの服ではなく。


 ゲームでよくみるようなファンタジー系のエルフが着るような服。


 「うん、ウンウン。やっぱりお兄さんこれ似合うよぉ~」


 赤髪の彼女は嬉しそうに合わせてみた感触に手ごたえを感じるとカオルの腕をひっぱりビルの中へと連れ込んだ。


 「ほい、着てみて!」


 押し込まれた更衣室に戸惑いながらもこのピンクのTシャツを着るか汗べとのままでいるかこれを着てみるかの3択ならとりあえず着てみようと判断したカオルはとりあえず着てみる。


 「うぉあ~~。素敵素敵!」


 見知らぬ男性に服を着せて喜んでいる彼女はどうかとも思うが我ながら整った顔にそれなりにスタイルのいいカオルにはとても似合っていて、このままゲームCGとして使ってくれても構わないと思える見栄えにあながち悪い気がしない。


 「そ、そうだろうか」


 「じゃぁ次あたしね!」


 え、っと聞き返す間もなく自分の服を手に取って彼女は更衣室に入っていった。


 ばっとはいってばっと開いた。


 すんごい早業にちゃんときれているのかと手で目を隠すが見事に衣装チェンジしていた彼女もまたにあっている。ただすこし、二の腕あたりがだらしなく見えるのは愛嬌の範囲内と言える。


 「どうかな?」


 「あ、うん。驚いた。すごい似合ってると吾輩は思う」


 「えへへへへ。じゃぁお会計5千円ね!」


 お金とるのか、そりゃそうだ。


 心の中で思うもくちにはしないでもらったばかりの5千円札を渡すと彼女はカオルの腕にしがみついてくる。


 驚く間もなく彼女はカオルを今度はビルの外へと連れ出した。



 「あたしねリリカっていうの。今日秋葉原でイベントあっるじゃん?!あれコスプレしていきたかったんだけど一人じゃ恥ずかしいし、友達にはドタキャンされちゃったしお兄さんお願い一緒にきてよ!」


 兎にも角にも急な事だらけだなと思ってしまっても口には出さないカオルは断りはせずともなんのイベントか聞いてみた。


 「あれ?知らないの?てっきりお兄さんもそれ目当てかと思って」


 彼女は朝の搬入だけを今日は任されていたようでこれからはオフらしい。


 なのでこれから一緒にその会場に行くことになった。


 「プロゲーマー集まる全国大会!秋葉原天空闘技場Eスポーツアリーナだよ!」

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