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セルフ チュートリアル

 「へぇ~……その首領・バナゼーレって奴がプルトニウムを大量に仕入れてるってことなんだ?」


 バハナに到着してカンカンラクダーを小屋に預けながらに問いかけるカオル。


 「そうだよそうだよ!」

 「すっごい悪いやつなの!」


 カオルは姉妹に連れられバハナ市街を通ってシェルターと呼ばれる宮殿にいくらしい。


 「それでその首領・バナレーゼが大量の核兵器を生産していて、それの防衛のために大量のゾンビを解き放っていると?」


 「うんうん!」

 「そういうことだよね!」


 朱雀院カオルには事前説明のようなチュートリアルはなく、突然砂漠のど真ん中に放置される形となったが他の面々は脳内にこの状況の説明と、簡単なドローンの操作方法を踏まえたゾンビの撃退チュートリアルがあったのだ。


 さらには脳内にはいくつものクエスト情報が掲示されていて、今も朱雀院カオルを拾ってきたのはクエストのついでにたまたま見つけただけだったとかなんとか。


 「そっか、俺はついでか――でもさYu-Su-この世界がVRだなんてそれ絶対嘘だって、二人とも顔の事とか気にならない?それにみろよ――」


 朱雀院カオルは傍に合った土壁を思いっきり殴ってみせる。


 すると壁は脆く崩れ、手には傷がついた。


 「ほら――痛いもん――」


 「っごっらぁあああ!誰だ人んち殴った奴!」



 カオルははっとして壁を見るとその上にはちゃっかり窓っぽい穴も開いていればちゃっかり家っぽい屋根もあった。


 やばいと思えばYu-Su-姉妹とともに路地に隠れてその場を濁す。


 「――ちぃっくしょうどこいきやがったぁ!」



 カオルは思った。


 こんな躍動感のあるキレ方NPCにできるわけがない。



 「カオル兄ちゃんだめだよぉ!」

 「街人キャラクターも人なんだからー」


 「いや~ごめん……人?」



 Yu-Su-姉妹はさらに説明を続けてくれて今最も大きなクエストとして用意されているのが首領バナレーゼが物資とプルトニウムを補給している商船団を襲う事。


 この島は一面砂漠でできており地下資源を他国に売りその見返りに食料や着る物を輸入しているのだとか、国家として機能していないこの島ではそれぞれが商談を行っており、その商船団を壊滅できれば大打撃を与える事が出来る。


 「で、結局二人が最初に受けた説明だと首領バナレーゼを倒せばクリアって事なのかい?」


 Yu-Su-は顔を見合わせ首をかしげる。



 「わからない、それ以上の大きなクエストはないしやってみないとわからない」

 「わかんないわかんない!理屈っぽい男嫌い!」


 「いや、理屈もなにもこねてないよ!!」


 クエスト事にクリアすると救援物資としてドローンの部品が届くという。


 さっき姉妹がやっていたクエストもカラカラゾンビの討伐クエストで消耗した銃弾を補給するためのクエストだそうだ。


 姉妹はもう2週間バハナを中心にクエストをこなしてもうすぐ機体の2体目を手にするという。


 「2体目って?」


 「まぁまぁ、驚くなかれ」

 「バージョンアップしたスカイウォーは一味違うよ!」


 聞かれても笑顔で濁したその先に、シェルターと呼ばれる理由がよくわかる建造物が目に入る。


 球体状のコンクリートでできたような建物がそこにはあった。


 なかへと入ると豪華に金色の装飾が壁面を覆い、その中央には王座としてどでかい椅子と、見覚えのある顔がいた。


 「あら、カオルくんやないの」


 青春少女あけみがいた。


 いや、青春少女あけみと言っていいのだろうか、声はあきらかに彼女のものだがいかんせんYu-Su-姉妹ともカオルともテイストが違う改造をされているというかなんというか、――熊だ。


 毛でおおわれた体に、顔の右半分は金属で覆われ、顔は全体的に熊


 しかも服は着ていない、彼女は女性のはずなのだが――。


 「あけみ……だよな?」


 「あら、見てわかりますやろ。あけみどすぅ」


 「あけみちゃんすごいの!」

 「もうドローン2機操れるの!」


 2機操れると言われて首をかしげるカオルに鼻で笑う熊あけみ。


 ――バタバタバタ  ―――バタバタバタ



 青春少女あけみの両脇に置かれた金色のドローンが宙を舞い、あけみの座る椅子を掴むと持ち上げる。


 「う、浮いている!その体で!?」


 「おっほっほっほ、歩くの面倒くさいのよね」


 あけみは砂漠をあるきたくないからという理由でいち早くポイントを稼ぎ、ランクを上げて新型のドローンを調達したのだとか、カンカンラクダーもさすがにあけみは重すぎて乗せて貰えず地鳴りを挙げて踏みしめるその姿にゾンビすら泣いて逃げていたとYu-Su-姉妹は笑った。


 今ではこの辺境都市バハナを制圧して王座にまでついている。


 「あけちゃんのランクはD」

 「あたし達はFのもうすぐD!」


 どうやらランクごとに性能の高い機体が送られてくるそうなのだがそれが同時操作できるということらしい。


 あけみがその重みを見せない軽快な移動性能を見せつけると王座に戻った。


 「――欠点はすぐバッテリー切れるのよ」


 ドローンは都市ごとのシェルターで充電しないとバッテリーが切れて動けなくなるという。

 あけみは長距離の移動の際予備バッテリーをいくつもカンカンラクダに背負わせていくのだという。


 2機操作は案外なれると楽なものでいまのような同時進行への操作ならだれでもできるらしい。


 「――なぁ、俺にもちょっとドローンの使い方教えてくれないか?」


 「あけみちゃんカオル君チュートリアルなかったんだって!」

 「あけみちゃん!カラカラゾンビもいいけど海鳥取りにいこよ!」


 「あら、いいわねぇ。鶏肉も久々に食べたいわ」


 あけみは立ち上がると大量のバッテリーらしきものをドローンに掴ませあけみ自身は歩き始めた。


 ――ドスン  ――ドスン


 大きな地鳴りとともに現れたカンカンラクダにバッテリーを背負わせると王座に戻ってドローンを呼び戻した。


 「ほなカオル君、海鳥狩りでデビュー戦としましょか」


 バハナから10km離れた岩山に海鳥の産卵場があるという。無数の穴が開いた岩山には日差しを避け、地下の水源から湧き上がる冷気で卵の羽化に最適の場所。


 外敵もなく、もしいるとすれば、悪食の人間くらいだろう。



 そこには大量の海鳥が空を舞う。


 ――青春少女あけみの舌なめずりがジュルリと聞こえて気持ち悪かった。


 

 

  

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