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速攻――中央突破


 ダイヤモンド中央銀行に侵入する経路は4つ


 ――中央入り口


 ――地下水路経由第三設備室、第二設備室、第一設備室


 ――東門


 ――西門



 東門 西門は侵入口こそ用意されているが1階から地下に潜る階段へ結局中央入り口に向かうか、2階に上がり通気口ダクトを通って地下へ降りなければならない。



 オーソドックスな攻め方としては地下水路か、中央入り口を突破するのがよくみる光景のMAP構成。


 何故なら東門 西門は侵入こそ簡単であるが通気口ダクトは常に一人はいるであろう目標物付近に潜む敵が監視しており、もし鉢合わせると一直線の構造から真正面から集中砲火をあびてしまう。


 なにより、ダクトは銃弾を貫通するので存在が知られただけでダクトごと破壊される事もある。


 そのことから地下水路の複雑なMAPを攻略するか、東門西門からも突入し、中央入り口を攻略してまずは地下に降りるというのが定石だ。 





 「――じゃぁあれだな!もう簡単に4つのチームに分けような!」


 ボンバーヘッドクランマスター煬代がどれだけ卑下されようともここは俺の領域だからととにかく勝利へ拘りプライドを捨ててまでも青春少女あけみにすり寄っている姿が1セット目の敗北後すぐにみられた。



 煬代としてはボンバーヘッドの名がある以上、人数差がこれだけある以上、負けてしまっては候補もくそもないし、もはや役に立つ要素はないし、今日付けで帰らされてしまうかもしれないのだから――。



 ――とはいえ、煬代はこう見えて、前線に立つタイプではない。


 煬代は圧倒的最後の要として相手の不意をつく場所に潜伏し、敵が来るその間にチームメイトに指示を出すのがいつもの彼のプレイスタイル。


 今日ほどに、自分のチームメイトがいかに協調性を持ったメンバーか実感したことはない。



 ――友達は大切にしよう。



 「――嫌」


 青春少女あけみは間髪入れずに煬代の希望を拒絶する。


 「――っちょ!」


 「あけみちゃん、あたし東門から回り込んで彼らの裏を取りに行きたいんだけど一緒にお願いできないかしら?」


 「――ええですよ」


 「――っちょ!」


 大黒舞妓が遠距離でもダメージが出せるアサルトライフルAKー99に切り替えて青春少女あけみもサブウエポンに大量破壊兵器DORAとAK-99をセットし二人はアイコンタクトをかわす。



 「僕らは地下水路もう一回みてましょうか?」


 「Ok、今度は食い気味でいこ」


 white lordとリミットJKも雰囲気をみて言葉を交わし、


 Su-Yu-姉妹は「西門でいいよねー」とガトリングはやめてアサルトライフルに切り替えているようだ。


 残ったのは百手のロジャー。


 「……」


 「――一緒に中央入り口おねがいします」


 1セット目のやり取りがロジャーの機嫌をそこねている。


 返事はなく、無視された。



 煬代は確信する。


 ――俺、絶対今日で帰らされる。


 

2Set.


――Game start


開始と同時に煬代の意見をみんなが聞いたわけじゃないが4つに分けられたチームがそれぞれ散り、煬代は1階から地下へと向かう階段を下りた先の通路に潜みショットガンを構える。


 人数が多い分一人で一人倒せば仕事は上出来。


 煬代の持つショットガンは連射式 シルバーテイルと呼ばれるもので超近距離から近距離、ゼロ距離から10m先程度であれば大きな射線上に敵を定め、2発当てれれば機体を確実に落とせるという武器だ。


 ショットガン特有の近距離1撃というのがない分操作がしやすく、2発目の発射感覚が短い事から相打ちには必ずできる自信が煬代にはある。


 ロジャーがその上の1階で潜んでいるからもしロジャーがやられたらそれが奴らの侵入の合図。



 ――バタバタバタ  ――バタバタバタ ――キュイイィィィィン





 ――機体のプロペラが回る音。


 ――1機


 ロジャーだ。


 ――2機


 敵か?


 ――3機


 もう中央に2機も!? 


 



 ――ボガアァァァァlン!



 ――ブッベベベベベベベッベ  ――ベッベベベベベベベベベ  ――ブッブッブブッブベ



 

――いったい何機おんねん!



 爆発音の後にいくつものプロペラ音が鳴り響きロジャーがこっちを見てくるのに気づく。


 「おい、全員来たんだけど――無理」


 

 百手のロジャー デスポイント




 「――(っぇえ~~~~)」


 煬代はマジかと画面を食い入るように見つめて備える。


 まさか4人だけで一気に全員蜂の巣になりかねない中央突破速攻を狙ってくるとは思わなかった。


 ――心理戦


 煬代は予測する。


 向こうのメンバーの誰かがこちらの状況を予想して指示を出していると。


 だとしたら、勝ち目はない、だってこの協調性のなさ!


 どうしようもない!



 「なんですって、みんな、戻るわよ!煬代あんた大口たたいてるんだから抜かれないでよね!」





 ――言われなくてもそのつもり。


 ――そのつもりだったのだが、


 ――目の前には初弾をかすめ抜け目前に迫るクロイと、ショットガンを持った富士山大学佐藤と永宮大樹の機体がもう煬代を通り過ぎていく。


 中央突破とわかった。


 くると分かっていた。


 けれど、初弾をなんとか当てた次を打ち出す前に煬代の機体に、銃弾を撃ち込み一撃で仕留めた奴がいる。


 ――煬代 デスポイント


 ――Kingdom A-naight99  ヘッドキルポイント



 クロイが飛び出してコンマ数秒で打ち出した散弾。


 それに気づいてさらに早いコンマ数秒で煬代よりも先に銃弾を打ち出したこの男。


 それも寸分たがわぬヘッドショット。


 向こうの画面には機体の半分も映し出されていない状態で、画面のすみで弾ける弾痕だけで正確に位置を把握し、打ち抜いた。

 


 ――トッププロの領域



 「――煬代!」


 「ほんま、調子ええだけで役にたたへんなぁ」


 女二人からのやじを受けるが煬代はもう何も言わない。


 いくら爆破MAP最強クランといったって所詮アマチュア。


 プロの領域には策略とかそんなもの以前に技量の差が歴然としていた。


 煬代は負けを確信し、席を立ちあがる。



 「――どこいくの?」


 大黒舞妓が迂回して中央入り口に機体を動かす中煬代が立ち去るのに気づいた。



 「いや、もうええわ。プロにもしかしたらなれる思ったけど場違いやったみたいやわ――」


 煬代はクランマスターとして指示を出す側であったとしても、必ず自分の仕事は最低限こなすプレイを続けてきた。それが自分への自信にもつながっていたし、チームメイトからの信頼もそれで築いてきた。


 あの場面、あの配置。


 決して中央突破が不意打ちだったとしても煬代は1機沈めるべきだった。


 そういう配置だった。


 今までこのMAPではそうしてきた。


 防衛側には必ず優位な場面ができるMAP構造になっている箇所がある。


 まさにここがそうだ。


 いくつかあるこういった重要拠点で仕事ができなければ、戦力にないのも同然。


 それをチームメイトにも厳しく求めていたし、


 自分もこなしてきたのに、


 ――ミスではない、完全な敗北


 ――コンマ数秒の大きな実力差


 

 煬代のことばに誰も何も返す言葉がないが彼はそれでも、最後役割の一つとして全員に伝えた。



 「――Kingdom Aーknight99は中央入り口1階で構えてる。迂回組はきいつけや」


 


 ――バタン



 朱雀院カオルは彼の言う通り1秒も画面に映らない煬代を打ち抜いてすぐに中央入り口階段を再び駆け上がる。


 ――煬代を通り過ぎ目標物へ向かった機体は3機



 



 ――永宮大樹の先導した中央突破は見事に相手の裏を掻いた




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