ガラス越しの4人
「カオル兄ちゃんさっすがぁ!」
クロイと富士山大学佐藤が倒されて暇になり朱雀院カオルのプレイ画面に集まっている。ホワイトロードの照準は最速の機体クロイどころか続けて富士山大学佐藤の機体も打ち落とし、彼の技術は紛れもないプロ級の腕だよと二人は絶賛する。
そしてそれ以上に、今まさに少数で価値をおさめたエースに空気は華やいでいた。
「いや、さすがロードスネーククランマスター――まさかこんなに仕事が楽だとは思わなかった普通まずダイヤモンド銀行に入った瞬間蜂の巣になって何人かやられてしまうのに油断して外に出ていた3人を利用して侵入を無傷で済ましてしまうなんて全然3人のやり取り聞いてなかったんだけどすごい!吾輩感動したよ!」
カオルの言葉に包帯ぐるぐる巻きの永宮大樹は謙遜して首を振る。
「クロイ君も佐藤君も役割通り完璧に動いてたからこそだよ。それに最後気づかれないように一撃で仕留めなきゃいけない場面、外さなかったカオル君はやっぱり、TTT-Gだけの男じゃないってことなのかな?ハハハ」
朱雀院カオルはだろだろ、でしょでしょ、そう思うでしょと永宮大樹に習って謙遜なんてするわけがない。
TTT-Gでは圧倒的なコマンド入力の速さがすごいところだけどちゃんと銃つかってもプロ級だってわかったでしょ?
やっぱり強いでしょ?
なんで日本人て変わり種で目立つものすぐたたくのかな!
だから負けるんだよね!
うんうん。
吾輩優秀すぎて妬まれ嫉まれ大変だなー。
っと誰も効かなくなるまで一人でベラベラ自信をおしつけている。
「でもカオルさん、途中まで全然気づかなかったんですけどなんでID変えてるんですか?」
あぁ、っと朱雀院カオルはしょうもないよ?と苦い顔をして応える。
ずばり、KAORU.namberのIDデータでTTT-G以外の武器が使用されてランキングに乗ることが気に食わないのだ。
あれだけ否定されようが、他人に何を言われようが、朱雀院カオルが全力でこのゲームを楽しむにはTTT-G以外にありえないのだ。
そのために1万円課金したわけだし、いくら家が裕福といえど子供に渡されるお小遣いは一般庶民と変わらないしそんな大切なIDこんなやっかみをうさばらすためには使いたくない。
そいでそいで、作り直し続けるIDもすべてTTT-G目当てにガチャを回しているわけでダイヤモンド銀行MAPに合った武器を持ったIDなんて膨大な量から探せばあるかもしれないけどめんどくさいし、こっちも割りと使うIDで丁度愛用のデザートイーグルを持っていたころからIDをかえたのだとか。
「防音だから何も言えないけど、問題ないよね?またいちゃもんつけられたりしないよね?今度は武器持っちゃだめとかいってこないよね?逆にメインウエポンすら使ってないんだけど文句のつけどころないよね?吾輩最強だよね?」
最後見事決定打を決めたエースはこれ以上自分の土俵が荒らされないか不安で不安で仕方がないらしい。
「大丈夫ですよ、向こうの煬代さんあたりや最後まで生き残っていた二人ならわかってると思いますよ。今のは完全な、戦略の差だっていうことが」
永宮大樹は朱雀院カオルに笑顔を振りまいてそうだよねーとカオルも自分のプレイスタイルがズルではないことに自信を取り戻す。
あれ、でも戦略の差?
吾輩が最強だからじゃなくて?
っと一瞬考えた朱雀院カオルはまぁいいやと画面に向かった。
「ささっ二人も2セット目始まりますよ、次はですね――」
――速攻です




