Kingdom A
――団体チーム戦 爆破MAP
制限時間3分の間に目標が爆破されなければもしくは相手側を全滅すれば防衛側の勝利
制限時間内に相手側の全滅、もしくは目標物の破壊が成功すると攻撃側の勝利
今回は人数差をうまく利用するため大黒舞妓側は防衛のみ
朱雀院カオルは攻城側のみにかぎられている
本来であれば交互に攻防を繰り返し、先に3セットとったほうが勝者となる
1回の攻防につきリスポーンはない
ロンドンの美しい街並みの中でもひときわ目立つ時計塔ビックベンから少し離れた場所にスポーンされ、その背後には重厚な鉄格子で覆われたダイヤモンド銀行が画面に映し出された。
「Yu-ちゃん!Su-ちゃん!手筈通りお願い!」
「らじゃー」
「らじゃー」
大黒舞妓の一言でダイヤモンド銀行の両脇にそびえるビルの屋上にそれぞれが向かう姉妹。
大黒舞妓もダイヤモンド銀行屋上でスナイパーライフルを構えどことなく現れる敵を待ち構える。
「最初の迎撃は私達3人でやるわ!中の事は煬代くん頼りにしてるわよ!」
声は出さずとも手を挙げた煬代がゲーム内で各々のダイヤモンド銀行内における防衛配置を指示していく。
「さて、昨日は好き勝手させちゃったけど今回はそうはいかないから――」
早速現れる敵機、その速さからクロイと思われる。
速度的に遠距離武器を他に装備した様子はなく、この広大なMAPで不利なゼログラムで参戦しているようだ。
――恰好の的。
容赦なく姉妹が銃弾をふりそそぎ、すぐにクロイは建物の影に隠れる。
それと同時に前方真正面の建物屋上から銃弾の放たれる火花が散る。
大黒舞妓は屋上から飛び降りてスナイパーライフルでその場を覗く。
そこにはロードスネーク永宮大樹が大黒舞妓と同じスナイパーライフルPSGを持ってこちらに照準を合わせていた。
一旦その銃撃に逃げるようにダイヤモンド銀行から離れ、5発の銃弾が放たれたところですかさず反撃に銃を向ける。
――いない
先ほどまでいた建物には彼の姿はなく、その変わり、ビルの屋上で見張っていた姉妹が発砲を続けていた。その先にいるのはまたしてもクロイ。着実に距離を縮めてダイヤモンド銀行に迫っている。
大黒舞妓も再び見晴らしのいい高台へ上昇し周りを見渡すが、建物の影に他はかくれているのだろう、クロイのみが先行してYu-の構えるビル1階へとたどり着く。
「Yu-!Su-!飛び降りて入り口を固めましょう!」
距離があってこそのYu-Su-姉妹の配置だったがクロイの詰める速さに対応できないと大黒舞妓が指示をだした。
――Yu-ちゃん デスポイント
――Su-ちゃん デスポイント
二人よりも先にダイヤモンド銀行入り口にたどり着いた大黒舞妓が振り返りキルログを見るとそこには
富士山大学3年佐藤のスナイパーライフルで二人を打ち抜いた表示が示されている。
敵は接近戦のナイフが1人と
遠距離型のスナイパーライフルが2人――
始めこそ広大なMAP故に生きるスナイパーライフルだが攻城側は幅の狭い通路を責めなければいけない室内に目標爆破物がある。
というのにこの編成、一度攻撃が終わらなければ武器を交換することはできないというのにクロイと朱雀院カオル二人だけでダイヤモンド銀行内を制圧しようというのか。予想を裏切られ指示を見誤り姉妹は散っていく。
大黒舞妓はすかさず入り口の隅に隠れて着陸し、羽音を消してサブウエポン テキサスショットガンで入り口を構えた。
敵機の羽音はだんだん近づいてくる。
そしてその前を一瞬でクロイが通り過ぎた。
――反応できなかった
ゼログラムのあまりにも早い動きに大黒舞妓は追おうとするが画面を一気に爆炎が包む。
間一髪HPが0を切る前に爆炎から逃れ入り口を離れるがその爆炎の中から敵機が現れた。
その手に持つのはハンドガン サブウエポンであるデザートイーグルだ。
ハンドガンのなかで唯一距離制限なくヘッドショット判定が出れば一撃で相手を沈めることができる銃。その分射線領域が広かったり、反動も大きい。
大黒舞妓は無理にでも反撃しようとスナイパーライフルを構えるが爆炎に揺れる画面では照準は合うはずがない。
無慈悲にもデザートイーグルの銃弾は大黒舞妓の機体をとらえてキルログが流れる
――大黒舞妓 デスポイント
――Kingdom A-Knight 99 キルポイント
大黒舞妓の機体が消え、大黒舞妓を打ち抜いた謎のプレイヤーネーム。
「クロイは俺が行く――」
入り口が崩されたことを受けて百手のロジャーがクロイを追いかけた。
「――あ、だめだってロジャー!」
煬代が手を顔に当てて動いてしまったロジャーに首を振る。
―― 永宮 大樹 キルポイント
――百手のロジャー デスポイント
ロジャーの隠れていた地下通路への階段はダイヤモンド銀行の中庭上空からスナイパーライフルで狙う事が出来るのだ。開いてが通るまで隠れていれば2つしかない目標物へと最短ルートであり、動かなければクロイはだめでも他を打ちとれたかもしれない。
それを知らずに動いた永宮大樹のスナイパーライフルは彼を逃がさなかった。
「――あかん、今ので配置ばれたかもわからん、いったん目標物から離れてや、いったん相手が地下金庫にあつまったとこ追い込んで爆弾解除しよ!」
爆破MAPは目標物にたどり着くと爆弾をせっちすることができ、30秒間の起爆猶予間防衛側を爆弾に近づけさせてはならないのだ。防衛側はその爆弾に近づけばものの3秒で爆弾を解除できる。
解除してしまっても時間とは無関係に防衛側の勝利だ。
煬代はそっせんして目標物のある地下から空調ダクトへと侵入し、2階へと移動する。
そこから階段を下り、相手の背後を取る作戦。
「あけみはんわい真上おんねん!そのまま相手でてこんか警戒しながら登ってきてくれんか!」
「――……」
――青春少女あけみ デスポイント
――瞬足のクロイ キルポイント
「なぁんでぇやねぇん!!」
席の離れた青春少女あけみを見るとあけみは煬代と目があった瞬間鼻糞をほじり始める。
「――私今気づいたけど命令されるの嫌なタイプみたい」
「……いや、知るかぁ!」
――煬代 デスポイント
――Kingdom A-Knight 99 キルポイント
――煬代が青春少女あけみにかまってる間背後にいた敵機に気付かず爆破MAPであれだけ自信を振りまいていた男も消えていく。
「あがぁ!俺の勝利の方程式がぁぁぁぁああ!」
煬代はそもそもかっこつけて出て行ったロジャーが悪いと食ってかかる。
「ていうかなーていうかなーKingdom A-Knight 99って誰やねん!なんで知らん奴おんねん!おぉん?!」
――誰も反応しない。
だが時期早々にやられてしまった大黒舞妓は手を頬に当てて何か考えているようだ。
もちろんだれがこんなことをして、この名前を使ってるかはまぎれもない、朱雀院カオルに違いないのだ。
なのだけれど、それしかないのだけれど、 Kingdom A- このワードが大黒舞妓の脳裏に引っかかる。
どこかで見たことがある。それもだいぶ昔のこと。
デスポイント 瞬足のクロイ
デスポイント 富士山大学3年佐藤
ヘッドキルwポイント white lord
「大丈夫です、まだ挽回できます」
ウェディングドレスに身を包む少年、ホワイトが地下金庫へと続く階段を下る2人を頭上から打ち抜いてみせる。
ホワイトはいち早く個人個人の技量は確かでも即興で徒党を組めるメンバーではないと察してダイヤモンド銀行の外に逃げ出していた。
そして今ダイヤモンド銀行内にすべての敵が入り込んだところでホワイトは動き出す。
「これも課題やなぁ、こんな連携もくそもない中途半端の役割分担やったら本選かたれへんでぇ」
煬代は仕事がなくなりぶつぶつ愚痴にいそしむばかり。
「リミットさんそっちたぶん Kingdom A-Knight 99 が地下水路通って上がってきます」
ホワイトロードがダイヤモンド銀行内へと裏をとって奇襲をかけた時、1機が窓から飛び出ていくのが見えた、そしてそれが地面に勢いよく滑空していくさまから取れる戦術は1つ、地下水路からの侵入しかない。
永宮大樹がダイヤモンド銀行中庭で狙撃をした後の行動を考えるともしダイヤモンド銀行内にそのあと侵入したのなら今であった二人と同様にこの近辺をうろついているはず。
しかし羽音は自分のものしか聞こえない。もしかすると彼も2機同時に地下水路を駆けあがっているのかもしれない。
「――ねぇ?」
リミットJKが地下金庫から2つ部屋の離れた設備室の配管に銃口をむけてあることに気付く。
「残り時間30秒もうすぐきっちゃうよ?」
朱雀院カオルは攻めきれなかった。
残り時間30秒以内に爆弾を設置し、制限時間内に爆破しなければ勝利条件は満たされない。
それ以外の方法は相手側の全滅、ホワイトロードとリミットJKを倒さなければもう勝機はなくなった。
――コンコンコンコン ――ッコッコッコッコ ――ゴゴゴゴ
「あ、地下水路来た――」
「逃げよう!」
ホワイトの一声でリミットJKは地下水路から相手がでてくるよりも先にダイヤモンド銀行の階段を駆け上がる。そして二人は窓から飛び立ち、時間切れを狙ってロンドンの街へと飛び出した。
ホワイトはすぐに滑空して近くの手ごろなビルに隠れようと走る。
リミットJKも余裕をかましてビッグベンめがけてダイヤモンド銀行を背に飛んでいた。
――white lors デスポイント
――リミットJK デスポイント
――Kingdom A-Knight 99 ヘッドwキルポイント
それは勝利を確信した二人から間もなく、放たれた銃弾は狂いなくヘッドショットがつきささる。
追ってのくる羽音はしなかった。
地下水路から地上に上がってくる気配もなかった。
一つあった予想外は、
ダイアモンド銀行屋上で着陸し、羽音も立てずこの時を待っていたKingdom A-Knight 99の存在。
残り時間12秒。
朱雀院カオルのチームが1セットの勝利を収めた。
「あぁ~~いい感じだったのになぁ!!」
煬代は悔しがるが次は絶対勝つと切り替えるように声をかけていた。
「やっぱりそういうまとめようとする人嫌いだわ」
青春少女あけみが煬代の行動に元々細い目をさらに細めて不快をあらわした。
「っしかたねぇだろ今は俺が指揮官やってんだからよぉ!」
「――それは誰も決めてないわよ」
大黒舞妓が煬代に真実をつきつけて軽くへこむ煬代をよそに大黒舞妓はみなに問いかける。
――Kingdom Aそれをどこかで見た覚えはない?




