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証明

――ガチャッ


 勢いよくその扉を開けたのは朱雀院カオルであり、その後ろにおどおどとした顔をしてついていくのはクロイ少年。


 二人の姿をみてやっと来たかと深くため息をついて朱雀院カオルに声を掛けようとした大黒舞妓だったがその大黒舞妓を朱雀院カオルが通り過ぎ、一直線にプレイモニターの前に腰掛ける。



 「御託は良い、はじめよう」


 朱雀院カオルの据わった目は大黒舞妓から反れることはない。


 大黒舞妓も本人がもうわかっていることならと話しを進める。



 「あなたを試すのは爆破型のチーム戦よ!ここにいるあなたを除いた11名のうち3名をあなたに付けるわ、選びなさい。そこから漏れた8名でダイヤモンド銀行MAPの隠し金庫を防衛する。人数に文句は言わないで、それぐらいしてもらわないと最強と銘打って登場したあなたを今大会最大の晴れ舞台に出す事なんてできないわ」



 「――構わない」



――大黒 舞妓


――百手のロジャー


――瞬足のクロイ


――青春少女あけみ


――永宮大樹


――煬代


――white lord


――富士山大学佐藤


――リミットJK


――Yu-ちゃん


――Su-ちゃん


 


 二日目の選抜メンバーもすでに顔合わせをすましここVIPルームに全員が集合していた。



 朱雀院カオルはすぐにクロイを手招き、後からはいったことから状況を上手く呑み込めていない富士山大学佐藤もカオルに呼ばれる。そして最後に呼ばれたのは包帯の男、手招かれカオルに呼ばれたその名は永宮 大樹。




 「あ、あれ永宮君だったの?」


 ――誰かがそういった。




 最後の一人は爆破MAPを知り尽くすボンバーヘアーのクランマスター煬代とおもわれていたがその包帯の男の正体にまず誰も気づけていなかったのとその意外な采配にざわつく。


 なにより自信に溢れて呼ばれることを待っていた煬代が憤慨し、拳を力強く握り締めている。


「朱雀院――舐めた采配してくれるやん。お前ぐらいの奴ならわかってくれる思っててんけどなぁおれの実力――」



 朱雀院カオルは無表情に吐き捨てる。



 「――なんなら一人で問題ない」



 ――音が消える


 ――沈黙なのか静寂なのか


 ――耳鳴りのようなはるか遠くで振動する機械音がかすかに聞こえる


 


 確かにTTT-Gを扱う朱雀院カオルに初日誰も歯が立たなかった。


 ――だからなんだ。


 それはTTT-Gの元々の性能が壊れていただけであってそれだけに固執していたからこそ今まで最強であっただけ。それがなくなってしまえば無駄に磨かれたコマンド入力の速さであっても無意味。


 朱雀院カオルはスカイウォーというゲームの中で照準を合わせ銃弾を打ち放ち相手を倒すというFPSの本来の遊び方をしていない。



 本来のゲームシステムであればアマチュアといえど2000人から精査され、400人を勝ち上がったこの最もプロゲーマーに近いアマチュアが負けるはずがない。


 そのどこから湧き出るとも知らない自信、へし折ってやる。



 ――大黒舞妓が反対側の壁を操作し、新たに20隻のプレイルームをVIPルームに呼び寄せる。


 言葉は発せず、朱雀院カオルの選考からはずされたものは各々が席に着いた。


 そして朱雀院カオルに選ばれた3人も相反する場所に設置されたプレイ席にカオルと並んで座る。



 ――ガタッ


 2つのプレイ席を阻むように防音ガラスが天井から敷き詰められ、両者の会話は遮られた。



 「――カオル君。僕いま、すごくカオル君の事かっこいいと思ってるよ」


 


 音の遮られた空間で初めに声を出したのは富士山大学佐藤。


 選ばれたことのうれしさと、その後に選ばれた僕ら迄敵に回すかもしれないのに一人でいいと言ってのける朱雀院カオルに富士山大学佐藤はくやしくも、怒りもあるけれど、かっこいいと思った。


 エントリーシートをいくつも書いては面接にすら望めず、なんとかたどりついた最終面接では存在を否定され、自分という存在がいていいものなのかすら悩んでしまっていた中に朱雀院カオルという人物は他社に否定され、追い出されようとしても全く引かず、ましてや堂々と実力を示してその自分が望む居場所を取り戻そうと、手に入れようとしている。



 敷かれたレールになぞり、そのレールからこぼれてあろうことかプロゲーマーなんて荒れた道を逃げるようにあるく僕とは違い、はじめからその道を選び、どんな荒れた道でもその先に頂上はあると確信しているように進む朱雀院カオルの姿は憧れた。


 


 「まぁ僕も男らしいと思うけどそんな大見栄きってこの人数差勝てるのカオル兄ちゃん?」


 子供であるが故にあまり訪れたことのない場の雰囲気にわくわくが止まらないクロイ少年はログインを完了して武器の登録を行っている。正直朱雀院カオルがどうこうというよりも、4対8という圧倒的不利な戦いでこれに勝てたら楽しいだろうなぁなんて考えているだけだ。



 「――それぞれ単独行動ですか?」


 ロードスネーク永宮が包帯で隠された口元から朱雀院カオルに問いかける。


 「――いや」


 朱雀院カオルは永宮大樹に笑顔を見せたかと思うと彼に注文する。


 「――君がクロイと佐藤に指示をだして好きに攻めてくれ、俺はそれに合わせて好き勝手に攻める」



 ――永宮大樹は鼻で笑う。



 「――僕らは戦力として考えていないということでいいですか?」



 ――朱雀院カオルも鼻で笑う。



 「まさか――3人で爆破を遂行してくれると助かるよ。正直きつい、久しぶりなんだ、TTT-G以外の武器を使うのは。だから味方をつけていいって言われてほっとしている部分もあるよ。ロードスネーククランマスター知将――永宮大樹にも、地下賭博場TOPランカークロイにも、さっき漢をみせてくれた佐藤君にも、頼りにしているよ」




ゲーム画面には全員が武器、機体調整の準備を終えてゲームマスターである大黒舞妓がスタート画面を手にかける。



 ――MAP情報のローディング画面


 

 

 「――楽しもう」



 朱雀院カオルの一言で画面にはロンドンの街並みが映し出されていく。








 ――Game start



 



 



 

 

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