拉致られて女になって女性は自己主張が強かった
――リビングウィル
それは死が目前と迫る患者が最後の姿を当事者が生前にどう最後を迎えたいのか示しその望む最後を迎えられるように周囲を巻き込んで努めようとする考え方。
――余命1年と言われた少年は望んだ
ゲームがしたい
――そして少年は拒んだ
もう何もない部屋に閉じ込められるのは嫌だ
――そして少年は外に出る決意した
命の灯が短くなろうとも、顔もみたことのない親友に会いにいくために
――という彼は今、付き添いで着ていた看護師さんと休憩室にいたところ拉致されてみぐるみ剥がされダンボールの上に転がされている。
「――っん!っん!」
口に何か布を詰め込まれダクトテープでぐるぐる巻きにふさがれた彼はしゃべる事すらままならず、両腕は手錠で拘束されてしまった。
「そんなに怯えなくていいのよ?」
暗闇の中で行われる暴力に震える少年。
「あたしぃ、これがええ思うねんけどどうなん?」
少年は焦る、一人ではなかった。
自分を襲う何かは2人だ。
どうにかして逃げないと、どうにかして本選に出場して僕がここにいることをつたえないと。
少年はもがき、体をくねらせなんとかその場を脱しようとする。
「あら、あきまへん。逃げますよぉあの子」
「ん、もう!おとなしくして!」
「――ん!?っんぅぅうん!」
少年のぼやける暗闇の視界はさらに目隠しをされて今度は何かを着させられている。
襲う奴らの冷たい手が肌に触れて嫌にも体をビクつかせてしまう。
「あら、冷たかった?」
少年の反応を察した女は幾度も隙を見つけては少年の体を撫でまわし、少年の動きを楽しんでいる。
「ええですやん。やっぱ王子よりこっちですねぇ」
「えぇ、完璧!」
――ガチャッ
錠がはずされ手が自由になった。
これで逃げれる。
今しかないと走り出す。
――ビタン!
勢いよくこけた少年は自分の足に伝わる縄の感触に気付く、そしてそれは急に締め上げられ、力強く体が引っ張られる。
「あんたはこっちっでっしょ!」
縄もほどなく振りほどかれ、やっと自由になったかと思ったその瞬間。
自分の腰回りくらい太い日本の腕に抱きかかえられた。かと思うと、今度はその支えなく体が宙に浮いているような感覚に襲われる。
まさかと思った。
でもそのまさかだった。
少年は地面に叩きつけられ、よくわからない坂を転がり落ち、全身打ち身になって今度は歓声が聞こえてくる。
拉致されたかと思ったら服脱がされて投げられるしいったいなんなんだ。
ゆっくりと目隠しをはずすそこは個人戦決勝の舞台
「おぉ”!これはホワイトロードさんっじゃあっりませんかー!?」
司会が今か今かと待ち望んでいたかのように手を刺し伸ばす。
「あれ、あれれれれ、ホワイトロードさん……女の子だったっけ?っまあぁいいでしょう!さぁさぁはじまりますよホワイトロードさん立って立って!立っ……かっわいい――」
大きくスクリーンに映し出される少年はいつの間にかかぶせられたティアラに目の色と同じピアスをぶら下げ、地面に擦れる長い裾のウエディングドレスを着た女性に見える少年がいた。
――会場は一色に染まりホワイトコール
「えっえっ、えー!?」
少年は戸惑いの連続に思わず指を噛む。
すると歯に伝わる布の感触、いつの間にか白の二の腕全体を覆うような手袋をはめていることに気付いた。
さらいはその仕草に心踊らされた観衆がまた沸き起こる。
「グッレエエエエエエエエエイットトオオオ!まだまだ彼女の美貌を楽しんでいたいところだけれど試合の時間がやってきてしまったぁ!ホワイトお嬢さんこちらへどうぞ!」
「いや、僕、おとこ……」
司会の人に案内されるがままに席に着く。
「……おっせえんだよあんま調子乗んなよな?」
拉致されていた間にどれだけの時間がたっていたのかはわからない。
ただ状況から行って開始時間に間に合っていなかったんだろう。
そうさっした少年は隣から声をかけた女性に頭を下げる。
僕のせいじゃないのに、そんな言い方しなくても――。
弁解の言葉は伝えられなかった。
というかそれよりも、彼は驚く。
周囲を見渡して決勝戦に勝ち上がった面々のキャラが濃過ぎじゃないのか!
今話しかけてきた女はどういう当て字かもわからない8文字熟語くらいの刺繍をした特攻服を着ているし、逆サイドを見てみれば禁煙のはずの会場内で堂々とタバコをふかす全身レザースーツの女。
他にもゴスロリ、鞭持ってる人、ガングロギャル、身長と同じぐらい髪の毛盛った女、虎柄のトレーナーを着て片手に携えた首輪にはもの本の虎をひっさげるババア。
ありえない。
別の会場につれてこられたのだろうか。
というかこの女ども自己主張激しすぎだろ!
何かのイタズラ、そうに違いない。
アルビノって珍しいからからかってるんだろう。
そうだ、そうに違いない。
そう思っても画面はMAP情報をローディングする画面に移り変わっている。
「さぁ!試合開始だぁ!個人戦二日目!二人目のヒロインがきまるぞ!」
――Game start
秋葉原フィールドのソフママップ前にスポーンした少年の目の前には迷彩柄の機体が同時に現れている。
「いっくぅっでありまああああす!」
その声に視線を泳がせればプレイヤーの一人がまさに迷彩服を着てラリっている女が視界に入る。
少年はすかさずアサルトライフルを構えて彼女に応戦――。
――手りゅう弾!?
一つや二つでなく無数の手りゅう弾がちりばめられ少年は急上昇してよけた。
レア武器 ――真夏のサンタの贈り物
――サンタさんが気まぐれで配るレアアイテムでその中には30個の爆弾が入っている。その爆弾の種類はランダムで30個それぞれ違う爆弾の時もあれば全部同じの時もある。
――そして今回は
全自動追尾型手投げ爆弾30個
「っむりだよ避けれるわけがないって!!」
ホワイトロードはいきなり1デスポイント刻まれた。
「くっそ、不意を突かれたけどもう油断しないぞ!」
そんな彼のリスポーン地点で目の前には何十本の鞭がしなっている。
交差点の中央で無敵時間3秒間を過ごす少年の目の前で蛇柄の鞭に叩き落とされる機体の数々。
その鞭は巨大で、今自分がいる道路をたたき割る。
「――なんだこのクソげー!」
レア武器 ――メデューサの落とし物
メデューサが愛してやまない巨人族のラフエロにプレゼントするために用意した鞭。彼に届けに行く最中うっかり人間界に落としてしまい、人間の手に渡った。どれだけ大きくても持ち主に合わせ重量は変わる。ただし攻撃対象には全重量が伝わる。
――ホワイトロード 2デスポイント
「嫌々、夢だよ。こんなのおかしいよ。だって僕あれだよ。僕これでも結構つよ―――」
レア武器 ――猛獣の餌
近くの動物園から猛獣を召喚する餌。これを投げつけられた対象は持続的に猛獣にかみちぎられダメージを与えられる。――最後は絶対餌になる。
リスポーンの無敵の3秒間ですでに猛獣に囲まれ身動きが取れない少年は絶句した。
誰もここには、まともに戦おうとする人がいない。
どんな手を使ってでも相手を蹴落とす、そんな手口だ。
このBBAもリスポーンする相手ばかりを狙って駆けずり回っている。
なんだ、なんなんだ。
――っは!?
少年は横を見る。
先ほど悪態をついてきた女性の特攻服をみるとそこには雰囲気に似合わない小学生でもわかる刺繍が
――安産祈願
もっと周りを見渡せばレザースーツの女も襟に小さく
――商売繁盛
なんて書いてある。
あの迷彩服の女は胸ぽけっとに、恋みくじをしまっている。
なんだ!これはにつながる何かは。
――玉の輿希望
意気込み背を曲げる虎柄のおばさんのTシャツの背中にはそんな言葉ば書いてあった。
――――。
「いや、お姉さんたち邪な理由で参戦しすぎでしょお!!」
そりゃそうだ、現代においてプロゲーマーはサッカーやバスケットボールのプロスポーツ選手と同じくらい稼げる職業なんて言われてるよ。
でも、でもさぁ!
なんでそんなししたたかさのかけらもなく全力なんだ!
わかるよ!そういうところに人生かけてみたくなる瞬間ってあるんだと思うよ?
でも、でもさ!
「――BBA手前は手遅れだぁああ!」
ようやく人気のないクリスタルビルのトイレにリスポーンしたホワイトロードは武器を持ち直してスナイパーライフルAWPを登録した。
その照準は屍を追って駆けずり回るヒョウ柄の機体をロックオンするとすぐさま銃弾は放たれる。
「そんな煩悩に僕は負けない!」
――whte lord 1キルポイント




