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0,1パーセントを掴む

 ――リスポーン後の3秒間。それは無敵である時間とともに身動きがとれない時間。


 KAORU.namber以外のプレイヤーは彼に同時に撃墜された。


 故に彼らおの照準はKAORU.namber目がけて据え置かれている。


 その矛先にいるKAORU.namberは、見渡す限りの敵対的NPC目がけて弾幕を張っているようだ。



 ――3


 マニュアル操作でミサイルの弾速までも調節して次々と差し迫るNPCに張り続けられる弾幕。


 ――2


 その弾幕は濃く張り巡らされ空には絶え間なくミサイルがならんでいた。


 ――1


 そしてKAORU.namberも決戦の時を確信したんだろう。会場に響き渡るほどの入力音をかき鳴らし、プレイヤーがリスポーンする市街に向けておよそ20のミサイルで弾幕を張ってみせる。


 マニュアル操作が元々時間がかかるものであるから、次弾装填にクールタイムが設けていられないTTT-Gは驚異的なマニュアル入力速度を誇るKAORU.namberにとってマシンガンも同然。


 ――0


 復活した彼らの銃弾は今まさに張り巡らされた弾幕めがけて飛び散る。


 スナイパーライフルもミサイルの合間をぬってKAORU.namberを捉えていた。


 放たれたいくつかの銃弾は張り巡らされたTTT-Gの弾幕に被弾してミサイル達は誘爆してしまう。


 爆煙が画面を覆いつくし、視界が奪われるプレイヤーたち。うかつに身動きがとれない状況に立ち止まる。



 ――しかしこの状況を冷静に把握した二人は動いた。



誰かがやられた、誰かがプレイヤーを倒したというキルログがながれてこないのだ。


 それは敵対的NPCであってもプレイヤーを倒せば流れるものでこの状況はまさにKAORU.namberが作り出したもの。


 KAORU.namberの機体はまだこの空で生存しているということなのだ。




 ――遅れて気づいた者たちも動き出す。


 しかし遅い。


 爆炎をかき分け目前に迫るTTT-Gのミサイルに抵抗する間もなくデスポイントが刻まれる。


 後ろのスクリーンにはKAORU.namberが今の攻撃で42ポイントを制していることを表していた。


 ――手詰まり


 だれかがそういった


 ――見誤った


 いや違う


 99.9パーセントこのゲームをやったことがあるものなら終わった試合だと確信して当然の状況だった。


 だがそのわずか0.1パーセントの可能性を手にする男がいたという事なのだ。



 朱雀院カオルの操作する機体は爆煙をかきわけたそこに現れる。


 そこに身を乗り出したのは最速の機体をようするクロイ。


 そして特異な形態をする10徳ナイフのようなさまざまな用途の武器を繰り出す武器を装備したロジャーと紹介された。

 

 アマチュア唯一の外国人選手が遅れてKAORU.namberに食らいつく。



 ――二人の刃は同時にKAORU.namberの機体を切り裂いた。


 真っ二つに割れたKAORU.namberの機体は突き抜けた爆煙の中に沈みキルログにはクロイのポイントとして表示された。


 プレイヤーの一人から舌打ちが聞こえる。


 それはまさに今KAORU.namberの首をもいだと確信していたロジャーからの声だろう。


 だがそれに間もなく、もう一言聞こえてくる。


 「....NO,way!」


 KAORU.namberは墜落し、クロイとロジャーの一騎打ち、会場はその決闘が始まる寸前の空気に包まれ大盛り上がりを見せていた。


 そんななか絶望して言葉をこぼすロジャーと同じくコントローラーを投げ出して背もたれに崩れ落ちるクロイの姿がそこにある。


はるか上空、爆煙の上には先ほど見たよりも大量のミサイルが敵対的NPCの進行を画面外ギリギリでせき止める弾幕と、さらに上空から降り注ぐ、無数のミサイルが秋葉原市街地に降り注いでいたのだ。


 クロイは先ほどKAORU.namberのプレイ内容をみていたので諦めている。


 しかしロジャーはあきらめなかった。一機でも起爆させて誘爆させてしまえばいいのだ!


 自分のポイントが1つ不利にはなるがそれでゲームセットになることはない。


 しかし今ここでくいとめなければすべてが終わる。



 ロジャーは上昇し続ける。


 上昇するにつれて、温度差によるモーターの異常アラーム、


 プロペラを保護していたベアリングの凍結。


 これ以上は限界だと警告を受けてもHPが減り続ける中ミサイル目がけて飛び込んだ。



 ――届いた刃先


 裂けるミサイルからこもれ出る刹那の爆炎。


 それに包まれデスポイントが加算されたロジャー。



 これで振り出しだ、KAORU.namberをまた1から追い込む、いや敵対的NPCが弾幕を潜り抜けるようになれば奴は終わりだ。



 倒せる。


 伝説なんてそんなもんだ。


 鼻で笑いリスポーン地点に戻ったロジャー。



 



 ――彼を待ち受けていたのは降りやむことのない追撃の雨。




 頭を抱えコントローラーを投げ出すも画面上では無慈悲に、降り注がれるミサイルにデスポイントが刻まれ続ける。



 起爆させたはず、誘爆させたはず、そうに違いなかった。



「――だめだよ、あのお兄ちゃん誘爆する距離ちゃんと計算してるからさ……」



 納得がいかないが目の前で起こる現象をどうにか受け入れようともがくロジャーに後ろから話しかけてきたのはクロイ。


 もうクロイは負けを確信して席からも離れている。


 「でもおじさんすごいね!あの状況でやばいって感じ取れたの僕ら二人だけだったみたいだよ!なんなら最後まで戦ったのはおじさんだけだよ!また機会があったら遊ぼうね!」



 クロイはそう言い残して自分の席に戻っていく。


 そして新崎監督はいつの間にかどこかに消えていて、司会進行役の彼から



 本日のヒーローが伝えられる 



 ――優勝 KAORU.namber

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