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伝説の疑惑

 「さぁ!今夜のメインショーに向けてアマチュア個人戦の決勝戦だぁ!なんかよくわかんねえけど興奮しすぎたおのぼりさんが救急車で搬送されたらしいけど構わず盛り上がっていくぜぇ!」


 司会進行をする男はだんだんと声が擦れてきているようにも思わせるすこし枯れた声が出ている。


 「いやぁ、まさかだったよなぁ!でもそんなまさか関係ないぞぉ!俺たちの大黒舞妓は特別枠で復活だぁ!」


 総勢21名。


 秋葉原タワー天空闘技場Eスポーツアリーナには1席増設されて特別に装飾されたプレイヤーブースに大黒舞妓は腰掛ける。



 「舞妓お嬢さん!やっぱり今回の目玉、KAORU.namberは強かったですか!」


 「――納得のいかない強さであるとだけ言っておきます」


 大黒舞妓は司会は話を振られ応えるさなかにも朱雀院カオルを睨み付けている。


 それを受けて朱雀院カオルは愛想笑いで答えていた。


 「今回私はスナイパーライフルは使いません」


 会場が沸く。


 「他のプレイヤーの方にもお伝えしておきます。TTT-Gの使い手に対しての攻略法は接近戦。TTT-Gのミサイルは保持者の近域で起爆すると保持者も被ばくします。ですからまずはゲーム開始と同時に彼を見つけ出し、リスポーンと同時に徹底的にたたくことです。隙を見せると彼は徹底的にミサイルの弾幕を張って自分に近づけなくします。そうなってしまうと手が付けられない。先ほどまで彼と対戦をしていたのでそれだけはわかります。最速で彼を叩きます!」


 大黒舞妓の宣戦布告。


 朱雀院カオルが不敵な笑みを浮かべそれがまた会場を焦がした。


 「いいぞいいぞ我らが舞妓お嬢!という事はあのゼログラムを持っているクロイ少年にも目が離せない!ゲーム仕様上最速の機体を持つ彼がもしかすると伝説のプレイヤーKAORU.namberを打ち負かすか!はたまた虚をつくド派手な攻撃で圧巻した青春少女がまたまた虚をつくか!まだまだ募った本日の猛者たちにはたして伝説は通用するのか!」


スクリーンには大きく10カウントが始まる。


 「いくぞお前ら本日のヒーロの誕生だ!」


 ――Game start


 まず動いたのはクロイ、光速で街中を駆け抜け隙があればキルを重ねる。


 「おぉっと!さすが最速のクロイ!いきなり青春少女が1デスポイント!!っだっがぁ!?彼女がもってるそれはまさか――TTT-Gだぁ!」


 クロイがキルを決める瞬間打ち出されたTTT-Gのミサイルはクロイをロックオンし彼の機体を逃がすことなく沈めて見せる。


 「おおっと1キル1デス+-ゼロ!さすがここまで勝ち残った凄腕たち簡単には譲らない!」


 さなかには大黒舞妓がKAORU.namberを捉えていた。大黒の機体には精度重視のアサルトライフルが装備されており、逃げるKAORU.namberの機体をじりじりと削り取る。


 「おぉ!KAORU.namberどうした!攻撃し返せないぞ!このまま1デスかぁ!?」


 だがKAORU.namberは秋葉原駅の構内へと逃げる。それを追った大黒舞妓の目の前にはTTT-Gのミサイルが現れ彼女の機体は沈んだ。


 「あちゃぁ!誘い込まれちゃった我らが姫!けどその先には別の敵が伝説を待ち受けているぞ!」


 朱雀院カオルが秋葉原の構内にとどまると階段を駆け下り迫る3機の敵機が現れる。


 「ご紹介しましょう!今まさに伝説を追い込んだのは元プロゲーマー石狩3兄弟です!」


 個人戦でありながら兄弟で協力して勝ち進むプレイスタイルによりプロゲーム業界から追い出された存在の彼らであるがアマチュアの世界ならとたびたびこのように彼らは姿を見せる。


 3人の兄弟ならではの統率が取れた動きは逃げる隙もなく銃弾の壁に阻まれ、TTT-Gをうちはなつにしても狭い構内では自爆してしまう。


 いやいっそ、自爆含めて3キル稼ごうか、カオルは作戦を切り替えて誘い出すような動きを見せる、囲まれた中で瀬戸際でよけつづけ、じわりじわりと彼らをひきつけた。


 そしてカオルはボタンを押す。3人を巻き添えに構内の中央で自爆のボタンを。


 ――ボッガァン!


 「おおっとこれわぁ?TTT-Gが構内天井突き破ってKAORU.namber石狩3兄弟を木っ端みじん!KAORU.namberなんてド派手なパフォーマンスなんだ!おやっ?」


 朱雀院カオルは眉間にしわを寄せる。何故ならこの爆破は自分が意図していたものではないから。


 青春少女だ。彼女の死に戻りにより1弾最初に装填されていたTTT-GがKAORU.namberを照準に打ち放たれていたのだ。その行為は秋葉原NPCにダメージを与えてしまい、敵対的NPCが出現してしまうことからまったく可能性に含めていなかった状況。


 しかしどうだろう。敵対的NPCの標的になったあかしである、プレートネームが赤く表示されない。



 「おおっとなるほどぉ!先ほど我らが大黒舞妓を撃破した際に爆風がNPCにダメージを与えてしまっていたようだ。このゲームの仕様ではロックオン自動追尾の武器は敵対的NPCの標的となった相手を目標とした場合に限り、その爆発規模を考慮せず、NPCへのダメージ無害となっております!」


 KAORU.namberは本日はじめてのデスリスポーンを見せ会場はざわついた。なにせネット上で彼のプレイ動画が上がるたびに彼は死んだところをみせていなかったから。その分青春少女に歓声があがる。


 「いいぞぉ!やっぱりあいつは偽物だぁ!やっちまえ!」


 応援のヤジには無表情に青春少女はTTT-Gには次弾を装填せずサブウエポンで応戦する。


 その武器は斧。2つの斧をひとつづつなげ、二つ投げ終えるとその投げた斧に近づき回収しないと次の攻撃が行えない初期武器と言われるものだ。


 ポイントで購入せずとも最初から持っている武器だがあまりにも重く、動きが遅くなるのでこんな大会で使う人間は稀っというかいない。


 かろうじて当たれば一撃で敵機は沈むのでプライベートゲームではちらほらと愛用する者もみられる。


 そんな彼女は今の攻撃で他のプレイヤーの注目の的となり追いかけられていた。


 「あぁ、あぁ!だめだ、何人いるんだ!青春少女の行くてすべてに敵機の姿が、ビルに逃げ込んだのが仇になった!青春少女絶対絶命!」


 十字路の中央にただずんだ彼女は機体を静止させる。


 そして敵機が現れた。


 敵の数は4体、1体はスナイパーライフルを持ち残りの三機は中距離型のアサルトライフルとサブマシンガン。


 直線通路からその放たれる銃弾は反れることなく彼女のHPを削った。


 ――青春少女 1デス


 ――青春少女 2キル



 戦闘結果のログが流れて拍手喝さい。


 時間差で到達する手投げ斧にスナイパーライフルを持った機体とアサルトライフルの機体が気づけなかった。


 青春少女は独断5ポイント優勢に勝ち進め、さらにはリスポーンで1弾装填されたTTT-GをKAORU.namberめがけて打ち放つ。


 弾はとまることなく、一直線に、KAORU.namberに差し迫る。



 ――だがそれは届かない。


 一度虚を突かれた伝説の男に二度も同じ手は通用しない。


 今打ち出したわけでもなく、いつ打ち出したかもわからないTTT-Gのミサイルが青春少女のミサイルを阻んだ。


 二つのミサイルは同時に起爆し、そのダメージは虚空に消える。


 「あぁ、これはまさか! ――なんだっけ?」


 「っほっほっほ、これはTTT-Gの装填マニュアルのさらにもう一つマニュアル操作に切り替えているという事じゃなぁ」


 試合の最中に前触れもなく現れた老体。


 「おぉ!これはスカイウォー日本代表監督 新崎 浄先生!」


 「はっはっは、いきなりすまんのぉ、まさか生きてる間にTTT-Gを使いこなす者にであるとは思わなくてなぁ。出てきてしもうた」


 茶色の羽織に刺繍の施した袴を着た老人は杖を片手にスクリーンを覗いている。


 「いえいえめっそうもない!日本代表監督に解説していただけるとあれば願ったりかなったりですよ!」


 「はっはっは、口がうまいのぉ。ギャラがさぞかしいいんじゃろうな~」


 新崎はTTT-Gの装填マニュアルについて説明した。


 TTT-Gの最初に装填されている銃弾は最高難易度のマニュアル入力で構成されている1弾でそのマニュアル故に組み込まれた追尾システムが強力なのだ。しかし、次弾においては自分で選択できる。


 相手を追従する目標を定めた装填動作を行うか、照準を定めず、自分が決めた動作のみを行う装填動作を行うか。


KAORU.namberは後者だ。


 照準を合わせた状態で装填を行うとその目標に合わせえた難易度の高いマニュアル操作が表示されるが照準をはずした状態で操作をおこなえば、簡単な命令であればすぐに発射できる。なおかつ難易度は自由自在に簡単なものから複雑なものまで選べる。そしていまKAORU.namberは弾幕を広げている。


秋葉原上空に球体を描くように回り続けるTTT-Gミサイルの群れ。


KAORU.namberは全員の標的になりみうごきが取れない中最短コードで次の攻撃につながる手を打っていた。


 ――そして動く。


 「っほっほっほ、ほれ、他の者たちあぶないぞ!」


 老体の一言と同じタイミングで、秋葉原上空を舞っていたミサイルは弧を描き、秋葉原の街並みに潜伏するプレイヤー目がけて降り注ぐ。



 「あーあ、いわんこっちゃない」


 「監督、これはいったい?」


 TTT-Gのミサイルは被弾しないかぎり遠隔操作が可能なのだとか、しかし途中で命令式を換えることが可能な設計とはいえ、1秒にも満たない時間のなかで書き換える技術はそれだけで神業でそれをあろうことに敵に向けてピタリと変更を加えるなんて考えられないという。


 「まぁしかし、彼は手詰まりじゃな」


 監督は今放たれた弾幕で敵対的NPCが現れたことにKAORU.namberの敗北を確信したと言い放つ。


 これだけの規模で敵対すればそれだけ敵対的NPCも増大する。


 そんななか弾幕を張っても敵対的NPCに被ばくするだけで本来の敵であるプレイヤーにTTT-Gミサイルを当てる事は困難なのだ。



「彼も使いこなせるといっても絶対追従を使いこなせるようでわないようじゃ。しまいじゃのう」


 


 MAP外から次々と現れる敵対的NPC。


 今先ほどTTT-Gミサイルに追撃された各プレイヤーのリスポーン。


 彼らに写るのは上空で一人浮かぶ彼の機体。






――KAORU.namberは、すべての標的になった。



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