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「何かヒントらしきものあったっけ?」
考えていく中で裕也はこういうタイプには、何かしらのキーワードとなるものがあり、それを使って解除するものであるとドラマを見て、知識を得ていた裕也は二人に尋ねる。
すると二人とも即座に首を振った。
「ううん、そんなものなかったよ? 少なくともそれを隠してある以上、それを見つけないといけないと思うんだよね。ボクもユーヤお兄ちゃんと同じようにそのことに気が付いて思い出そうとしてみたんだけど、心当たりが全くなかった」
同じ考えに達していたアイリは、そんな自分が情けないとでも言いたげにため息を溢す。
「ですね、それは私も同じです。裕也くんとアイリちゃんと同じようにそのことについて考えたんですが、全く思いつきませんでした」
ユナもまた同じように項垂れるが、
「裕也くんは聞いてないんですか? そのヒントを教えてくれた人物に……」
すぐに顔を上げて、裕也に期待の眼差しを向ける。
「その手があった!」とアイリもまたユナと同じように期待の眼差しを裕也へと向けた。
その視線に「うっ……」と声を漏らして、裕也は身体を後ろへ軽く倒れさせるかのようにして引き、
「それを聞いてたら、今の質問はしないだろ? いくら魔法が使えなくても、そのヒントを二人に伝えれば、どっちかが解除してくれるだろうし……」
根本的に無理があることを伝える。
すると、二人が再びがっくりとした様子で項垂れてしまう。
「だよねー。ちょっとでも期待したボクがバカだったのかもしれない。あっ! でも、ユナお姉ちゃんがさっきの状態になれば、もしかしたらヒントをくれるかもしれない!」
そして、今度はユナへ期待の視線を向けるアイリ。
そこまでの期待はなかったが、裕也もまた反応を伺うためにユナを見る。
二人の視線を受けたユナは、さっきの裕也と同様にその視線から逃れたいかのように、少しだけ後ろに身体を引いてみせるも、
「や、やるだけやってみますか。もし、さっきと状態がアベルさんの霊が取り憑いた状態というのであれば、アイリちゃんの言う通り、ヒントを貰えるかもしれませんし……」
期待と不安が混じった声で二人にそう宣言。そして、アベルの霊が取り憑きやすいように目を閉じ、全身の力を抜いて、リラックス状態に入る。
裕也とアイリはその様子をジィーッと見守ることにした。考えが浮かばない以上、これに賭けるしか出来なかったである。
それから約五分経過。
ユナはゆっくりと目を開ける。
ちょうど見守り続けることが面倒になってきたタイミングでの反応だったため、同じくリラックス状態に入っていた二人は、ここからの行動を見逃さないようにユナに視線を集中させる。
二人の視線が集まったことを確認したことをユナはゆっくりと口を開き、
「や、やっぱり駄目でした!」
と、舌を出し、恥ずかしそうに自分の髪を撫でた。
「だよな」
「だよね」
ユナの反応からその答えが分かっていた裕也とユナは、見事に声をハモらせて、がっくりと肩の力を抜く。
「ほ、本当にごめんなさい! さっきみたいに眠くならなかったんですよ。いえ、そもそも二人の期待に応えようと頑張ってたら、むしろ目が冴えてきちゃったっていうか……ごめんなさい」
そして、真面目に謝り出すユナ。
そんな風に真面目に謝り出す裕也は少しだけ驚き、困ったように笑いを溢した。
「大丈夫だって。少なくともユナは悪くないんだからさ」
「え?」
「だってさ、さっきの状態が霊に取り憑かれてたのかも分からないんだぞ? なのに、それに期待しようとしたオレたちが悪いのであって、それに応えようとしてくれたユナを褒めることは出来ても、悪く言う権利はないさ。な、アイリ」
同意を求めるようにアイリを見ると、
「そ、そうだね! ユナお姉ちゃんは悪くないよ! 悪いのはボクたちなんだから!」
なぜか少しだけ動揺した様子で裕也にフォローに同意した。
――ガチで信じてたのかよ……。
子供ゆえに仕方ないことだとしても、まさか本当に信じているとは思ってもみなかったため、裕也は反応に困ってしまう。
それはユナも同じで乾いた笑いで誤魔化していた。
「そ、そんなことよりも他に手はないの? それが思いつかない限りは、どうしようも出来ないよ?」
そのことを誤魔化すようにアイリは早口で、二人に次のアイディアはないのかと尋ねる。
しかし、二人とも首を横に振り、ないことを伝える。
「そっかー……。やっぱり」
二人の反応に、アイリは残念そうに呟き、またため息を溢した。もう諦めたと言わんばかりのため息を。
それに釣られるように、ユナもまた同じようにため息を溢してしまう。
裕也もまた同じようにため息を吐きそうになったが、それを出さないように必死に口の中で留めた。ここで自分が諦めてしまえば、二人とも本当に諦めてしまうと思ったからだ。同時に切羽詰まったせいで、『ACF』がフル活動したのか、ある考えが裕也の頭の中で閃く。
「なぁ、アイリ。一つ確認したいことがあるんだけどいいか?」
「ん? なぁに?」
「アベルの魔法ってどっちのタイプだった?」
「タイプ? 自分の魔力と妖精の使役ってこと?」
「おう、そのタイプ」
「確か……妖精だったと思うけど……」
「それに干渉して、この魔法の解除出来ないか?」
「干渉して……? 普通は出来ないはずなんだけど……」
「それって、その魔法をかけた人が生きてる間はってのが前提だろ? もし、死んでからなら妖精との契約そのものが失いかけた状態だと思うんだよな」
「……んー、どうなんだろう? ボクはまだ子供だから、過去にそういうことをやった人がいるかもしれないけど、その成否を知らないから……」
「だよな。だったら試す価値はあるんじゃないか? だって、アイリは王女様より使役能力高いんだから、干渉出来る可能性が高いと思うんだ!」
「んー、そうだね。やってみる価値はあるかもしれないね……」
アイリは干渉を成功させる自信があまりないのか、あまり乗り気ではない様子で裕也の言葉にしぶしぶと頷く。
現状、それ以外方法がないからこそ、『とりあずやってみよう』という気持ちが目に見えるほどはっきりした状態だった。
しかし、裕也はそのことに対して文句を言うことが出来ずにいた。それは、今の自分はアイリに頼ることしか出来ないのが現実だったからである。




