(19)
改めて裕也が引き出しの中から取り出した紙を一枚ずつ確認し始めると、二人も同じように机の上に置かれた紙を確認しようと手を伸ばす。
裕也は「ん?」と思いながらも、確認し終わった紙をイスの上に置き、次の紙を取る。すると、二人とも同じように紙を置いて、次の紙を取った。
「って、おいおい。なんで二人ともよりよって同じことをしてるんだ?」
役割分担は決めていなかったものの、それでも普通に考えれば分かれてやった方が効率的に考えてもいいのはすぐわかるはず。なのに、この二人は自分と同じように引き出しの中にあった紙を調べ始めるのか、裕也には分からなかったため、聞いたのである。
その問いに対し、二人はきょとんとした顔でお互いがお互いの顔を見て、再び裕也に視線が集中する。
「さあ? なんとなく?」
アイリは自分がなんで裕也と同じ行動に出たのか分からないらしく、曖昧な返事を返す。
「『分担しろ』なんて言われてなかったので、三人で一つのことに集中した方がいいのかなって思ったんですけど……。分担した方が良かったですか?」
ユナに関しては、分担作業のこともちゃんと考えていたらしいが、それでも一つのことに全員で集中した方が良いという結論に至ったことを教えてくれた。
「まぁ、それも一理あるけど、やっぱり分担作業の方が良くないか? 机の引き出しの数は決まっているんだし、いくら紙がたくさんあるといっても限られてるからさ」
「そう言うならそうしましょうか?」
「だな」
「それで、誰が何をしますか? 机の方は一人、本棚の方は二人に分けた方がいいと思いますけど……」
「んー、どうしようか」
その瞬間、アイリが裕也の腕をギュッと掴む。そして、クイクイと腕を下に引っ張る。
それは、一緒に本棚を調べようというアピールだと裕也はすぐに気が付くことが出来た。
もちろん、それはユナもだった。
そして、裕也とユナは顔を見合わせ、苦笑いを溢す。
「じゃあ、私が机の中に入ってる生類関係を調べますね」
「ああ、頼む」
そう言って、裕也は机から離れて、そのまま右側の本棚へ移動する。
アイリも裕也の腕を掴んでいたため、連れられるようにして本棚の方へ移動。
ユナは元裕也が居た位置へ移動し、そのまま先ほどまで見ていた紙の中身を確認し始める。が、「あっ」と何か思い出したのかそう漏らし、裕也の方へ振り向く。
「あの、裕也くん」
「んー、もう手紙でも見つけたのか?」
「いえ、違います」
「違うのかよ」
「そう簡単に見つかったら、こんなに苦労しそうな状態にならないです」
「それもそうだな。んで、それで何か用か? やっぱり上から見てくか……。」
上から本を確認していくか、それとも下から確認するか悩んでいた裕也は、やはり高い位置から確認することに決めて、一番高い棚の右の本を手に取る。そして、その隣にある本をアイリへと渡す。
「もし、重要そうな内容の物を見つけたら、すぐに教えた方がいいですか? それとも後でまとめて教えた方がいいですか?」
「んー、そこまでされるオレたちも集中出来ないかもしれないなー」
「ですよね。じゃあ、ある程度まとまったら教えることにしますね」
「そうしてくれ」
裕也はそう言いながら本をパラパラと読んでいくも、思い直したかのように顔を上げて、ユナに声を変えた。
「あ、悪い。やっぱり少しだけさっきの変えてもらってもいいか?」
「何を変えるんですか?」
その声に反応し、ユナもまた裕也の方へ顔を向ける。
「ユナの判断で良いんだけど、『これ重要かも?』って思ったやつがあったら、すぐに教えてくれないか?」
「分かりました。じゃあ、かなり気になったものがあったら、すぐに言いますね」
「おう、頼む。意見をこえてすまないな」
「いえいえ、私のはある程度簡単ですから」
そう言って、再びユナは紙の方へ向き直る。
こうして三人はそれぞれ分担した作業に集中し始めた。




