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 お仕置きが完了して、それに満足した裕也は持っていた紙をユナへ差し出す。

 その行動の意味が分からないユナは首を傾げ、


「なんですか? また弄るつもりですか?」


 と、先ほどの件を根に持っているらしく、その紙を受け取る様子は一切ない。


「弄らないっての。今度は真面目に手伝ってもらうことがあるから、渡そうとしたんだろ?」

「……真面目に?」


 しかし、ユナは疑いの目で裕也を見続ける。


「だから、前にしてもらったろ? 魔力をオレが見えるように色を着けるって行為」

「しましたね。ああ! そういうことですか! つまり、色を付けて、魔力の流れを教えろってことですか?」

「そういうこと。弄るのはさっきでおしまい。ここからは真面目にやる」

「それならそうと口で言ってくださいよ! まだ弄られるのかと思って、不安になったじゃないですか!」


 裕也が持っている紙を手に取りながら、ユナは不満を漏らす。


「言おうとしたら、文句を言ってきたのはユナだろ? オレは悪くない」

「弄るのが悪いんです」

「はいはい。それはいいから、早くお手本を見せてくれ」

「分かりました。色は赤でいいです?」

「なんでもいいよ」

「じゃあ、やりますね」


 ユナは腕から先の魔力を赤く光るように設定したのか突如として、右腕が赤の光に包まれるようにして薄く輝き始める。そして、その流れが分かるように紙へと流し込み始めた。その様はまる点滴の液がチューブを通って、人間の中に入るような感じで。

 その魔力の流れに従い、紙は徐々に膨らんでいき、最後には矢として膨らむ。しかし、魔力に色を着けているからか、アイリの時とは違い、薄く赤く色づいた形として出来上がる。


「こんな感じですけど、分かりました?」


 自分のやれることはやったと言わんばかりに、ユナは心配そうな表情で裕也を見る。そして、魔力を途切れさせたのか、また矢は神へと戻り、その紙を裕也に差し出す。


「サンキュー。なんとなく分かったような気がする」


 その紙を受け取りながら、ユナにお礼を述べると、


「もう分かったんですか?」


 あからさまに再び疑い目で見られてしまう。


「『なんとなく』も付けただろ? まぁ、予想の範囲ではあるけど答えるか。先生に『答え合わせをしようか?』って言われる前に」

「ちっ、バレたか」


 裕也がチラッとミゼルを見ると、腕を組み、その発言をしようと準備していたミゼルが残念そうに口を尖らせていた。


「今までの流れで分かりますよ」

「そうかもしれないね。さ、早く言ってもらおうか?」

「分かりましたよ。たぶんですけど、自分とユナの違いって魔力の扱い方じゃないかなって思いました。あんな風に効率よく流せてないから、その影響なのかもしれません」


 先ほど見ていたユナの魔力の移動は自分とは違い、なめらかだった。それが原因だと思っていた裕也は自信を持ってそう言うと、


「ぶっぶー! それもあるけど、もうちょっと補足がいるかな?」


 と、アイリが顔の前でバツを作り、その答えが間違いであることを裕也へと教える。


「あ、そうなの?」

「うん。詳しく言うなら魔力の量と強度も足りないの」

「量と強度?」

「そうだよ。量はその紙の仕様のせいなんだけど、流す量が一定にならないから設定放出に負けちゃうの。強度も同じかな? ある程度の強度があったら量が少なくても大丈夫なんだけど、どっちも負けてるから膨らまないってことだね」

「……よく違いが分からない」

「単純にユーヤお兄ちゃんの魔力自体が不安定だから膨らまないと思ったらいいよ」

「ふーん、そんなもんか……」

「そんなものだよ。次はボクの番かな?」


 チラッと王女様と見た後、


「まだ王女様は体調が悪いみたいだしね」


 魔力が未だに安定していることを確認し、裕也が持っている紙を再び自分に渡すように手を伸ばす。

 裕也はアイリの指示に従い、紙を渡す。


「ちょっとだけ待ってね」


 紙を受け取った後、目を閉じる。

 そして、すぐに目を開けて、


「よぉし、準備万端! いっくよー!」


 そして、アイリもまたユナがやったように右腕から先を発光させ、包み込むように発行させる。が、ユナと違い、その発行は常にというわけではなく、それぞれがランダムで発行していた。


 ――これが妖精ってやつか?


 裕也がそう思っていると、裕也の思っていることが正解と言わんばかりにっこりと笑うアイリ。そのまま、その発行している妖精を矢の方へ移動させていく。ここから先はユナと同じ作業のため、スピードを少しだけ早めて、矢を形成させる。


「まぁ、こんな感じだよね?」


 矢を形成した後は先ほど同じように矢に込めた妖精を解放し、再び紙に戻る。そして、その紙を裕也へ差し出す。


「光ってたのが妖精だよな?」


 その紙を受け取りながら、裕也がそう尋ねると、


「うん、そうだよ。見た時点で気付いてたらしいけど。さっき待ってもらったのが、その打ち合わせをしてたから。大した問題じゃないから、すぐに終わったけどね」


 裕也がそのことに気付いてたことが嬉しいのか、ちょっとだけテンション高めで答えた。


「へー、なるほどな。やっぱり妖精を使役するから、魔力の量とか強度はそんなに関係ない感じか?」

「たぶんね。ボクは魔力を与えて、必要な時に指示を与えてるって感じだから、そこまで苦労はしてないかも」

「ふーん。なんか自分の魔力を使うよりも簡単そうだなー」

「簡単な分だけ、それだけの見返りも多いけどねー。自分の魔力だったら身体の強化とか出来るけど、妖精はそれが出来ないし……」

「まぁ、一長一短あるからな。って、そんなことよりも聞きたいことがあるんだけどさ」

「んー、何?」

「妖精とどうやって話すの?」


 裕也のその何気ない質問に「あっ」とアイリが声を漏らす。

 その声につられるように、三人もまた「しまった」という表情で裕也から視線を外してしまう。


「え?」


 裕也は四人の反応から、なんとなく嫌な展開になるような気配はしたが、何を示す「あっ」なのか分からず、首を傾げる。


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