(5)
「じゃあ、訓練所向かうか……。この後の予定はアベルの部屋の探索だから、そこまで話し合う必要なんてないだろうし……」
裕也はそう言ってイスから立ち上がる。そして、アイナを見た。
顔色はどんどん良くなっていくものの、根本的な体調はまだ悪いアイナはどうするのかという確認をするためである。
ユナとアイリも裕也につられ、アイナを見る。
「大丈夫ですよ。そもそも、その武器を持っていくのに私が行かないといけませんから。訓練には付き合わせてもらいますね」
そして、最初から分かっていた言葉をそのまま言うアイナ。
武器の件がなかったとしても、訓練なら拒否したところで無理にでも付いて来ることが分かっていた裕也は、
「はい、お願いします。先生、王女様よろしくお願いします」
そう言って、ミゼルに視線を移す。
ミゼルもまたアイナがこう言うと分かっていたのだろうか、少しだけ呆れた雰囲気をわざと出したため息を吐き、
「それが自分の仕事だからね。言われなくても、自分の職務はこなすに決まっているだろう?」
そう言って、裕也を軽く睨み付ける。
もちろん、不機嫌で言っているわけではないと分かっている裕也はその視線を受け流し、
「じゃあ、そろそろ行こうか。っと、武器を取りに行くのはどうしますか?」
訓練所に向かおうと先頭に立って、ドアに向かって歩いていたところで足を止めて、振り返る。
四人ともベッドやイスから立ち上がっていたり、ちょうど歩き出そうとしていたところで、足を止める。
そして、視線はアイナへと集中。
アイナはそれをどうしようかと少しだけ考えた後、
「ミゼル先生とアイナが、私と一緒に付いて来てもらえますか? 一応、国宝級と言うことなので、ユーヤさんとユナさんは……」
と、申し訳なさそうに言ってきたため、
「分かってますよ。な、ユナ?」
皆まで言わずとも、アイナが言いたいことが分かっている裕也は軽く承諾し、ユナに同意を求める。
「そうですね。じゃあ、私たちは先に訓練所に向かいますね!」
ユナもすぐに賛同してくれたため、
「じゃあ、一時的に別行動ということで。じゃ、行くぞ、ユナ」
裕也はそれだけ言って歩き出す。
その背後では四人がそれぞれに返事し、裕也の後に続いた。




