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(13)

 裕也とユナの話が終わるタイミングを見計らったように、部屋のドアがノックされ、返事を待たずにドアが開けられる。


「ただいま!」


 そう言って入ってきたのはアイリ。

 全力疾走してきたのか、アイリは肩で息をしていた。


「だ、大丈夫か?」


 全力疾走してまで急げなんて一言も言っていない裕也は、身体を起こして、心配そうな表情でアイリを見つめる。

 ユナはユナで、即座にテーブルに近寄り、ピッチャーに入っている水をコップに入れて、アイリへと渡す。


「はい、どうぞ!」

「あ、あり……がと……」


 アイリはコップを両手で受け取ると、一気に飲み干した後、深呼吸をして息を整える。そして、ようやく息が整ってから、


「王女様、今日、時間作ってくれるって!」


 と、嬉しそうに報告した。


「今日!? って、今日ってことは……」

「うん、夜に来てほしいって! 大丈夫? ダメなら……」


 裕也の気持ちを優先するように、再びアイナの元へ走っていこうと身体をドアの方へ向ける。

 本音を言えば、あまり気が乗らなかった裕也だったが、さすがにもう一度アイナの元へ走って行かせるというのは気が引けたため、


「大丈夫だから行かなくていいぞ!」


 ベッドから飛び降り、アイリの両肩を優しく掴んで、それを阻止。

 ベッドから飛び降りてくると思っていなかったのか、アイリはちょっとだけびっくりした顔で、


「う、うん。分かった」


 と、そう言うも、


「む、無理しなくていいんだからね? 王女様のことだから、いつでも力になってくれると思うし……」


 すぐにそう付け加えて、あくまで裕也の気持ちが優先であることを伝えた。

 そこで、裕也は手の甲で軽くアイリの頭を叩く。


「いたっ」


 アイリは叩かれた箇所を両手で押さえ、意味が分からないという表情を浮かべる。


「普通、逆だろ? オレが王女様の要望に応えたり、合わせたりする立場だろ? 王女様がオレに合わせるなんて、そんなことさせたらダメだって。いくら、王女様がしてくれると分かっていてもな」

「だけど……」

「良いんだよ。とにかく夜、会いに行くから行かなくっていいからな?」

「……うん、わかった」


 裕也の言葉に、アイリはあまり納得していない様子だったが、裕也がそれ以上何も言う様子を見せなかったため、戸惑った様子で裕也をチラチラと見つめる。

 そのことに裕也は気付いていたが、無視して、ベッドではなく今度はイスに勢いよく座る。そして、ユナの言う通り、アイリもまた王族の一人であることを心のどこかで確信するのだった。


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