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 二人の許可を貰ったアイナが今居る場所から一歩前に出る。そして、指一本立たせ、説明をし始めた。


「他の種族とたぶん同じだと思いますが、一般的に魔法は『精霊を使役するタイプ』と『自分の魔力で形成するタイプ』に分かれます。『精霊を使役するタイプ』とは、文字通りのものですね。大気中に存在する見えない精霊たちを自分の魔力をエサとして与えて、それで攻撃してもらうものです。後者は言葉通り、自分の魔力を利用して直接攻撃を行う感じですね」

「へー、後者は一般的だけど、精霊を使役するタイプもあるのか。どっちが簡単でどっちが難しいんですか?」

「その判断は少し難しいですよ」

「難しい?」

「はい。素質の問題がありますので……」

「素質ねー。あっ、ちなみに王女様はどちらタイプなんですか?」

「私は『精霊を使役するタイプ』ですよ」

「へー」

「あの勘違いされるかもしれませんが、上に立つ立場の者は自然と精霊と会話しないといけなくなります。ですので、必然と言えば必然なのです」

「なるほど。ちなみに三人は?」


 裕也はユナ、アイリ、ミゼルの順番に見つめる。


「私は後者です」


 とユナ。


「ボクは王女様と同じだよ!」


 手を上げ、アイナはアピールしながら答え、


「自分はユナちゃんと同じだね。まー、自分は王女様と同じような必然性だけどさ」


 腕を組み、「どうしようもなかった」と言わんばかりに首を横に振って、ミゼルは答えた。


「必然? どういうことですか?」


 そんな態度をされてしまうと、さすがに裕也も気になってしまい、尋ねずにはいられなくなってしまう。


「自分の職業は知っているだろう?」

「はい、もちろんです。だから、ここにいるんですよね?」

「そうだよ。治癒系は『精霊を使役するタイプ』には出来ないんだ。こちらは魔法を分ける上での素質ではなく、生まれ持っての素質。治癒が出来るかどうかの素質なのさ」

「そっちですか。つまり――」

「精霊と会話出来る必要がない、というわけだね」

「なんか、すみません」


 結構、深刻な問題なような気がした裕也は、このことを聞いてしまったことに対し、頭を下げると、


「今さらだよ。だから、謝る必要なんてないさ。気にしないでいいよ」


 ミゼルはそこまでニヤリと口端を歪め、笑みを溢していた。


「先生はオンリーワンではないけど、治癒などに関しては選ばれた人って扱いだからね! そんなに気にする必要がないんだよ!」


 その笑みの意味が分からない裕也に教えるようにそう言うアイリ。


「よく分かってるじゃないか、アイリ」

「それはそうでしょー。先生の性格なんてすぐに分かるよー」

「そうかい。まっ、そういうわけだから気にしないでおくれ」


 アイリの言う通り、全然気にしてない様子なので、裕也は胸を撫で下ろし、「はい」と答える。そして、再びアイナを見る。


「それで、その二タイプのメリットやデメリットはあるんですか?」

「メリットとデメリットですか……。技の即効性と万能性ですかね」

「即効性と万能性?」

「はい。魔法を使える発生スピードとバラエティーが変わります」

「へー。発生スピードが速いのはどちらですか?」

「『精霊を使役するタイプ』が若干早いという具合でしょうか?」

「若干? どれくらいの差なんですか?」

「んー、ちょっと難しいですねー」


 アイナは顎に手を置き、「んー」と唸り始める。

 それをフォローしようと、おそるおそる手を上げるユナ。それは説明したがりそうなアイリやミゼルの様子を見ながらだったからだ。


「私で良ければ……説明しましょうか?」

「じゃあ、頼む」


 アイナはまだ悩んでいるような状態のため、裕也は迷うことなく、ユナにその説明を求める。

 そのことが嬉しかったのか、ユナは「はい!」と嬉しそうに返事。


「あくまで体感ですが、『精霊を使役するタイプ』の発生スピードが速いのは、属性や威力などの設定が簡単だからだと思っています」

「属性や威力の設定が簡単?」

「はい。精霊と話すことによって、打ち合わせが出来るわけです。逆に『自分の魔力で形成するタイプ』は、頭の中でその設計図通りに属性や威力の調整を一人がしないといけないので、調整に時間がかかるんですよ!」

「へー、でも聞いた話だと結構時間の差が生まれそうなんだけど……」

「そこは熟練度に寄りますので、慣れると発生スピードは変わらなくなってくるんです」

「なるほどな。サンキュ、ユナ!」


 ユナに教えてもらったことを頭に叩き込みながら、


「バラエティーの差はどうなんですか? 流れ的に考えると、やっぱり『自分の魔力で形成するタイプ』の方が良いんですか?」


 と、アイナへと尋ねた。

 ユナの回答を「うんうん」と頷きながら聞いていたアイナは、いきなり質問の的が自分に向いたことにちょっとだけびっくりしつつも、


「はい、その通りです。物分かりがよくて助かります」


 少しだけ早口になりながら答えた。


「流れ上、そうなりますよね。要因は自分の魔力を使うからですよね?」

「はい。精霊を使うと言っても、それは攻撃や偵察などが主になりますから」

「ですよねー。精霊は物理的な存在に近いですから、魔力と違って無から生み出すものじゃないですし……」

「そうですね。まぁ、物理的な存在とは少し違うような気がしますけど……」

「そこら辺はともかくとして……どのタイプがいいんだろうか……」


 裕也は大雑把であるものの、教えてもらったことを思い出しながら、裕也は腕を組みながら考え始める。

 四人はそれに従い、自然と口を閉ざす。

 しばらく、裕也はそのことについて悩んだ後、「はぁ」とため息を吐き、


「無理だ。決めらんない……」


 とぼやく。

 それと同時に四人は一気に情けない表情になり、裕也と負けず劣らずのため息を溢した。


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