(3)
「なんで、オレの悩みを知ってるんだよ? 誰にも……家族にさえ言ったことないんだぞ?」
ユナのホッとした表情を見た途端、驚きからプライベートに勝手に踏み込まれたような気がした裕也は拳を思いっきり握り締め、怒りを露にしながら尋ねる。
さすがのユナもその怒りを察知したらしく、詰めていた距離から一歩分離れて、両手で手を振り、
「その理由も教えますから! っていうか、私の話を聞いてください! 最後まで聞いてくれたら、全部分かりますから!」
少しだけ早口で答えた。しかも、それに付け加えるように、
「十分、私の発言も痛いことも……厨二病を発症しているという状態なのも分かってます! それでも聞いてください!!」
状況的にふさわしくないフォローも行った。
その発言のせいで裕也は自分が怒ってしまったことがバカらしく思えてきてしまい、一回深呼吸をして、その空気を入れ替える。
「分かったよ。最後まで話を聞いてやる。だから、どういうことか全部話せ」
左手を腰に、右手で髪を掻きながら、しぶしぶであることを行動で示す。
そんな行動でも話を聞いてくれることが嬉しいのか、ユナの表情はパァと明るくなり、
「ありがとうございます! 最初の最初で失敗したら、神様に怒られるところでした。いえ、『行く』というまで勧誘しないといけないんですけど……」
なんて突っ込みがある発言を漏らす。
裕也はツッコミを入れたかったが、これ以上ツッコミを入れた所で話が始まらないことは分かっているため、現状はスルーすることにした。
が、いつまでもこんな寒い屋上で話すのは嫌だった裕也は、
「ほら、付いてこい。ここで話すには長話になりそうだし、教室に行くぞ」
振り返り、屋上のドアノブに手をかけて回す。そして、押すようにして扉を開け、ユナに先に入るように顎を動かして合図した。
「はい!」
ユナに至っては話を聞いてくれるだけで十分らしく、中に入る。
その後を続くようにして裕也も入り、ユナより先に階段を下り、自分の教室へ向かい歩き出す。