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「なんとなく褒められている気はしないのですが……。まぁ、いいでしょう。裕也さんたちには部屋の用意をするので、今日はそこでゆっくりしてください。疲れもたまっているでしょうから、聞き込みなどは明日から、ということでよろしいですか?」
あまり納得いかない様子でそう言って、裕也たちに今日は休憩することを促すアイナ。
裕也はそれで構わないと思ったため、ユナを見て、反応を確かめる。
すると、ユナ自身反論はないらしく頷いて、裕也の反応に答えた。
「じゃあ、そういうことでお願いします。じゃあ、そういうことだから、また明日だな、アイリ」
裕也はそう言いながら、アイリに近付き、アイリの頭をポンポンと叩く。
「へ? なんで?」
アイリはその意味が分からないらしく、首を傾げながら、裕也を見上げた。
「なんで、って……。アイリには帰るべき家があるだろ?」
「んー、あるのはあるけど……ボクも疑われてるんだよ? だったら、お城に居ないといけないと思うんだけど……」
「あー、そう言えばそうだった……」
「というわけで、ボクもお城に泊まりだね!」
なんて、アイリは嬉しそうに答える。
軟禁状態に近いお泊りに関わらず、アイリはまるで遠足に来たかのような顔を緩ませる。自分がどんな立場にいるのか、それが分かっていないかのように。
「お泊りを決めるのは、王女様だろ? アイリが勝手に決めて――」
「いいですよ、別に」
裕也がアイナへ視線を向ける前に、アイナがそう答えた。
「え、いいの?」
「アイリ自身が分かっているように、アイリも疑われている立場ですからね。あ、どうせならお二人と一緒の部屋にしましょう。賑やかになると思いますし」
良いアイディアだ、と言わんばかりに手を叩いて、「うんうん」と頷くアイナ。
アイナもアイナで嬉しそうに、
「やった!」
その場で喜びのジャンプ。
「こんなのでいいのかよ……」
裕也がユナへ尋ねると、
「いいんじゃないんですか? 静かすぎるよりは賑やかな方がいいに決まってますし……」
少しだけ不満そうにユナは返す。二人っきりになれないことが不満そうな表情を浮かべて。
――そんな不満そうな顔しながら何を言ってるんだよ、こいつは。
ユナの表情からそう読み取った裕也はそう思いながら、困ったようにため息を溢す。
そして、この状況をどうにかしてもらおうと、セインを見る。
が、セインが顔をワザとらしく逸らし、
「王女様の命令だ。諦めろ」
と、ぶっきらぼうに答える。
「さようですか。分かった、分かったよ」
この状況を覆すことが出来ないと悟った裕也は、素直に白旗を上げ、アイナの指示に従うことにした。




