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 不意に「あっ」と声を漏らすユナ。

 そのタイミングに裕也とアイリはユナの方へ顔を向けて、ユナの発言に注目した。


「日記で何か発見があったわけじゃないですよ?」


 裕也とユナが日記のことで何か発見したと勘違いしないように念を押した後、


「その推理した答えを披露する時、大勢でやるんですか?」


 と、先ほど思いついたことをユナは裕也へ尋ねた。

 アイリもユナが思いついたことに何か気が付くことがあったらしく、先ほどのユナと同じように「あ、そっか」と呟く。

 二人が思いついたことが全く分からない裕也は、「え?」とユナの発言から何か察することが出来たアイリを一瞥した後、


「そんなのオレたちが初めて連れて行かれた場所でするに決まってるだろ?」


 当初から予定していたあの場所を伝える。


「ですよね。それはなんとなく分かっていましたけど……」


 ユナもそのことが分かっていたようで、別に驚いた反応を見せるわけでもなく、当たり前のように答える。


「それで何人集めて、推理の答えを披露するんですか?」

「何人?」

「はい」

「そんなのレオナが暗殺されそうになった時に居た人、全員集める予定かな……。あくまで予定なんだけど」

「ってことは、裕也くんが前借りする必要はないと思うんですけど……」

「……え?」


 裕也は一応終わった話を再び持ち出されたため、ちょっとだけイラッとしながらも、ユナの言いたい言葉の意味を考えていると、


「それだけ大勢の人が集まるなら、ユーヤお兄ちゃんがそんなことをしなくてもなんとかなるんじゃないかな? って、ユナお姉ちゃんは言いたいんだよ」


 と、裕也が分かりかけたその前にアイリによって、ユナの言いたいことが伝えられてしまう。


「なんとかなる……か……」


 思わずその通りだと思ってしまう裕也。

 あの時居た全員を集めるとなると、警備兵だけでもたくさんの人数があり、たった一人の反逆者ぐらいであれば量で押しきれると思わされてしまう。それこそ、レオナかアイリがその人数を頑張って統率すれば、最小限の被害で抑えることが出来るはずなのだ。つまり、無理をする予定とされている前借りをする必要がなく、その警備兵の後ろに隠れていれば、ユナとアイリに負担がかける心配をしなくてもいいのだ。

 裕也がそのことに気が付いたことを気が付いたのか、


「裕也くんも分かったみたいなのでその上で質問しますけど、どうしますか? 前借りの件についてはもう前借りすること前提で答えてもらってもいいですよ。そういう話で結論はつきましたから」


 ユナは改めて裕也に同じ質問をした。


「うん、ボクもユーヤお兄ちゃんに任せるよ? 大勢だろうが、少数だろうがどっちでもいいし。そもそも戦闘が起きるのかどうかも分からないしねー」


 アイリもまた前借りの件はすでに気にしていないらしく、呑気そうに裕也にそう言った。

 二人からそうやって任せること自体はこの数日の流れから慣れているものの、さすがにこれについて、裕也は頭を悩ませてしまっていた。

 アイリの言う通り、戦闘が起きるのかどうかも定かではなく、この流れ上少数にすると『自分が戦闘したいという意欲が出てしまうのでは?』と思われてしまいかねないからだった。


 ――けどな、今改めて考えてみると……少数にした方がいいんだよなー……。


 そう思ってしまったのは、『なるべく被害を抑えられることが出来るかも』、と思ってしまったからである。大勢で攻めれば、犯人は間違いなく範囲系の魔法を使って、人数を減らしに来ることは容易に考えることが出来る。つまり、少数の方が狙いも自然と絞られ、被害の方も必然と抑えられるのだ。


「んー……」


 そんなことを考えながら裕也はユナとアイリを見てみると、二人は裕也の反応を伺うようにジッと見つめてきていた。その様子は本当に自分にその決断を託すつもりらしく、口を開く素振りやアドバイスをする素振りすら見せなかった。


 ――しょうがない。


 裕也は二人からの助言が絶対にないことを悟ったため、


「決めた。大勢じゃなくて必要最低限の人数で推理したことを公開する」


 と、二人に言った。

 ユナとアイリは裕也がそう答えることを予想していたらしく、「はふぅ」と心に詰まった息を吐き出しながら、


「だよね、分かってたよ」


 アイリが代表して答えた。

 最初に裕也が思ったように、『戦闘をしたいから』という理由ではないことを説明するために口を開きかけると、


「別に誰も裕也くんが戦闘をしたいって思って、そんなことを言ったつもりがないことぐらい分かってますよ。被害のことを考えたんですよね?」


 裕也が言おうとしていた言葉をユナが代弁して、最初から分かっていることを裕也に教える。

 まさか、そのことを理解されていると思っていなかった裕也は困ったように「お、おう」と答えた後、少しだけ恥ずかしくなってしまい、後ろ髪を掻きながら視線を逸らして、その羞恥心を誤魔化す。


「まぁ、だいたい考えてることは分かってるから、ちゃんと安心してよね!」


 アイリがそのことを少しだけからかう口調で裕也にそう言い、


「さぁ、これからは訓練に励まないと! まぁ、矢の生成だけならここでも出来るし、ここで頑張ろうよ!」


 と、裕也に訓練をすることを促し始める。


「だな、とりあえず頑張るかー」


 裕也はまさかいきなり訓練フラグが立つと思っていなかったため、ちょっとだけ驚いてしまう。しかし、先ほどの件での羞恥心のことでからかわれたくなかったため、素直にその指示に従うことにした。

 それが現在いまの自分に出来る唯一のことだったから……。


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