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『それでボクたちに聞きたいことってまだある? ボクたちもそろそろ聞きたいことがあるんだけど……』


 アイリは自分もそろそろ尋ねたいと言わんばかりに言ってきたため、


『あ、最後に一つだけ!』


 と、ユナはもう少しだけ聞きたそうなことがありそうな雰囲気だったが、最後の質問にすることを告げる。


『いいよ、何?』

『二人の出会いって何なんですか?』

『ボクとレオナの出会い?』

『はい』

『ボクのお世話係だったんだよ。でもお世話係ってよりは、友達ってボクは思ってたから、親友って言葉が一番近いんじゃないかな?』


 そう言って、レオナの反応を待つアイリ。

 レオナの方も自分の反応を待たれていることに気付いたらしく、


『そんな感じですね。親友って言葉の意味が〈親しい友達〉だとしたら、私の場合は〈親代わりの友達〉みたいになってるかもしれませんが……』


 少しだけアイリをからかうような発言をするものの、


『あー、それはあるかも。ボクに一般常識なものを教えてくれたのは、ほとんどレオナだからね。お父さんやお母さんよりも親に近いかも……』


 アイリはその発言をまともに受け取り、「んー」と唸りながら、マジマジと考え込んでしまう。

 さすがにこの流れになると思っていなかったレオナは慌てた様子で、


『そ、そんなことないですよ!? 今のはただの冗談ですから! まともに受け止めないでください!』


 と、慌てた様子でさっきのが冗談であることを強調し始める。


『え? そんなの知ってるよ?』


 しかし、その反応にアイリは冷静に答え、


『でも、お父さんたちが暗殺されてからは本当に親代わりだから、あながち間違ってないかなって思っちゃっただけだし……。だから、改めて感謝しないといけないかなって思ってさ。本当にありがとうね、レオナ!』


 少しだけ恥ずかしそうにお礼を述べた。

 からかうつもりで言ったはずが、まさかお礼を言われるとは思っていなかったらしく、こちらも恥ずかしそうな声で、


『こちらこそ、親代わりなんて言ってもらえて恐縮です。ありがとうございます』


 なぜかお礼を言う始末。

 そんな二人の会話に裕也とユナが入れるはずもなく、苦笑いを溢すことしか出来なかった。


『あ! ごめんね! なんかまた二人の世界に入っちゃって!』


 そんな二人のだけの世界に入っていたことに気付き、アイリはユナに慌てて謝罪し始める。


『いえいえ。大丈夫です。二人の熱い友情? が分かって、胸がほっこりしましたから。それに二人の出会いや関係も改めて分かりましたから』

『そ、そう? 別に見せつけるつもりはなかったんだけど、ちょっと恥ずかしいかな?』

『はい。じゃあ、私の質問はこれで終わりにしましょうか? あ、それとも裕也くんは何かありますか?』


 と、ユナは裕也に振ってきたため、


 ――いや、ないかな? なんか思いついたら、また質問することにするよ。


 裕也はそう答えて、自分たちからの質問を終わらせることにした。

 本当はもう少し聞きたいことがあったが、先ほどユナが「最後の質問」という感じでアイリに質問をしたため、裕也は終わらせざるを得なかったのだ。

 質問がないと分かったアイリは、


『じゃあ、今度はボクたちからの質問だね』


 と、なぜか少しだけ威圧感を持った感じで口に出す。

 それはまるで、『自分たちもちゃんと包み隠さず、全部話したんだから、そっちも全部話してね』と言わんばかりの強制力を感じてしまう裕也。

 それはユナも同じらしく、念話越しから生唾を飲み込む音が聞こえてきたほど。


『ユーヤお兄ちゃんはこの世界の住人じゃないよね? いったいどこから来たの?』


 しかし、そんな二人の様子に構わず、アイリは遠慮なくその質問を突き付けた。


 ――なっ!?

『えっ!?』


 二人ともあくまで秘密にしていたその質問を突き付けられるとは全く思っていなかったため、驚きの声を漏らしてしまう。いや、雰囲気的には重要な質問を突き付けられるとは分かっていたが、これほどまでに的を射た質問をしてくるとは予想していなかったため、驚きを隠すことが出来なかったのだ。


『ふっふーん! どうどう? びっくりした?』


 そんな二人の反応を楽しむかのように、アイリは自慢そうにそう言うと、


『王女様、それじゃ真面目に質問してるように見えませんよ?』


 レオナが呆れたようにため息を溢しながら、アイリを戒める。


『そうかな?』

『はい』

『じゃあ、真面目に。この世界の住人じゃないことはその反応から確実として、何のためにこの世界に来たの?』


 そして、アイリは改めてその質問を真面目な雰囲気もとい少しだけ殺気を放つような感じで問い詰められる。


 ――なんで気付いたんだ?


 裕也はその殺気が冗談だとは分かっていたからこそ、自分たちの正体がバレるような行動をしてしまったことが気になってしまい、そう尋ねると、


『ユナお姉ちゃんがボクたちのすり替わりを見破ったことが原因かな?』


 アイリはその質問について咎めることなくあっさりと答えてくれる。


『私が見破ったことが?』


 そのことが信じられないように呟くユナ。


『うん、そうだよ。少なくともボクたちがすり替わってることはランク的にはSSS級並の秘密なんだよね。だから、図書室に置いてある資料も本来の物じゃなくて、偽物の資料を読むようにしてあるはずなの。いくら魔法で関連資料を集めたとしても』

『そんなの――』

『最後まで聞いてよー』

『は、はい』

『SSS級並ってことは、普通この世界の住人では読めないレベルの設定。もちろん、突破出来る人は少なくともいるはずだけど、そんなことが出来るなら、ユーヤお兄ちゃんにユナお姉ちゃんが魔法を教えるでしょ? つまり、それをしてない=そのセキュリティを突破出来る腕前じゃない。そこから導き出されるのは、それぐらいしかなかったんだよねー』

『……私の負けですね』


 ユナはアイリの説明が的を射ていると判断したのか、白旗を上げた。


『ユーヤくんいいですか?』


 そして、二人のことを説明してもいいかとユーヤに尋ねてきたため、


 ――ユナがいいならいいんじゃないか?


 と答えることしか出来なかった。

 その了承を得たユナは、裕也と自分のことをアイリとレオナに説明し始める。

 説明の内容は裕也と自分の正体だけであり、能力と各王族の誘惑は伏せたものであった。


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