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『そんな悲しみに塗れた声を出さなくてもいいでしょー。これからちゃんと説明するんだからさー』


 レオナが求めた説明を念話の音量の下げ方の説明で無理矢理後回しにした張本人であるアイリがレオナを慰める。

 その言い分に裕也は呆れることしか出来ず、


 ――そんなことは良いから早く説明してやれよ、アイリ。


 と、手早く説明することを促す。


『まったく王女様だっていうのに扱いが変わらないんだからー』

 ――誰が、今まで通りで良いって言ったんだよ!

『ボクでした!』

 ――いいから早く説明してやれ。そのうち、レオナさん泣き出すぞ。

『はいはい、分かったよー』


 アイリはその説明が面倒だという雰囲気を隠す様子もなく、頭をガシガシと掻きながら、


『じゃあ、レオナ。ちゃんと聞いててね?』


 そう言って、改めて説明する前置きを置く。


『はい、お願いします!』


 レオナの姿は見えないが、ピシッ! と背筋を伸ばす姿が裕也には見えた気がした。


『どうもボクのことを初めて会った時から怪しんでいたみたいなんだよね。それで、所々出ちゃったボクの綻びから、ボクが王女様という答えに辿り着いたらしいんだー。だから、レオナの異能とか関係なかったみたいだよ?』

『何かそんなヘマをしちゃったんですか?』

『ううん。ボクからしたら、そんな間抜けなことをしてないはずなんだけどね。そもそも、そんなヘマをしてたら、とっくの昔にユーヤお兄ちゃん以外の人にバレてるはずだし……』

『そうですね。その張本人さんたちの念話で繋いでいるので、直接聞いてみるのが一番だと思いますよ?』

『そうだね! まぁ、ボクたちも色々と聞きたいことはあるし。ユーヤお兄ちゃんたちも聞きたいことがあるんでしょ?』


 裕也たちが聞きたいことを察しているらしく、アイリは裕也に意地悪く笑みを向ける。

 そんな当たり前の問いに、裕也とユナは呆れたようにため息を念話越しでも聞こえるように溢す。


 ――当たり前すぎて話にならない。そうだろ、ユナ。


 そのことに同意を求めるように、ユナに尋ねると、


『はい、当たり前ですね。この流れでお互いに質問し合うことは間違いない流れなんですが、どちらから質問しますか?』


 ユナは無駄な前置きはいらないと言わんばかりに、アイリとレオナに問う。

 念話越しから伝わるレオナの雰囲気からして、その問いを自分から答えるつもりは一切ないらしく、アイリにその答えを一存していることに気付く裕也。

 そのことがアイリにも分かっているらしく、


『まったくもう……。ボクが王女様ってなると、レオナもそうやってボクに任せるんだから……』


 その状態が嫌だと言わんばかりの雰囲気で愚痴った後、


『ユーヤお兄ちゃんたちからでいいよ。ボクたちのことから質問して、その後に改めてボクたちが質問した方が流れ的にはちょうどいいでしょ?』


 と、裕也たちから質問していいことを許可した。


『分かりました。じゃあ、私たちから質問しますね。裕也くん、私から質問してもいいですか?』


 気になることがあるのか、ユナは少しだけ早口で裕也にそう言ってきたため、


 ――ああ、いいぞ。その後でオレが気になったことを聞くようにするから。


 裕也はそのことをあっさりと了承した。いや、聞きたいことはだいたいユナと同じような気がしたため、『ユナに任せることにした』が正解だった。


『一番気になったことから聞きますね』

『うん、どうぞー』

『レオナさんの能力って何なんですか?』

『あ、やっぱりそれが一番気になるよね。この説明はボクがするよりも、レオナに任せた方がいいよね? そういうわけでレオナお願い』


 アイリはそう言って、レオナに説明をするようにお願いした。いや、王女である以上、アイリのお願いは命令となり、


『はい、分かりました』


 と、あまりこの能力をあまり他人に説明したくないような雰囲気を出しながら頷く。


『私の能力は〈FAKEフェイク〉っていう能力です』

『FAKE?』

『はい、そうです。効果としてはもう分かってると思いますが、王女様の代わりになった際に、それを誰にも気付かれることなく、王女様を演じるということが出来るものです。あ、別に王女様じゃなくても出来ますよ? 例えば……ユーヤさんに成り代わることも出来ます。単純に上手く誤魔化すことが出来る能力ですね』

『だから、今まで王女様を演じてたのにバレなかったんですね!』

『もし、バレそうな行動をしてもドジをして失敗した。これだけで終わるんですよね』

『ものすごく便利な能力じゃないですかッ! 私もそういう能力が欲しかったです』


 ユナがものすごく羨ましそうに言ったところで、レオナの盛大なため息が吐く。

 そのため息はアイリが聞いているにも関わらず、ため息を隠すことを隠す様子すらない盛大なもの。下手をすれば、そのため息をアイリにわざと聞かせているかのような感じさえもした。

 しかし、アイリがそのため息について突っ込むことはなかった。

 それゆえにユナがそのため息について聞く羽目になってしまう。


『どうしたんですか? そんな盛大なため息を吐いて……』

『羨ましがられるような能力じゃないんですよ、これ? いえ、能力という時点でデメリットも存在するわけでして……』

『そのため息ですか。どんなデメリットがあるんですか?』

『この能力の内容を私の口から聞いた人には、能力が効かなくなることです。だから、もうユーヤさんとユナさんにはこの能力は聞きません』


 その意外過ぎるデメリットに裕也とユナは、


 ――えッ!?

『えッ!?』


 と、二人は声を漏らしてしまう。

 そんなデメリットがあるにも関わらず、レオナがあっさりと説明したことに驚きを隠すことが出来なかったからである。いや、王女様の頼みである以上、断ることは出来なかった。そう思った方がいいのかもしれない。

 その説明を言わせたアイリもまた、


『あ、あれ!? そ、そうだったっけ!?』


 そのデメリットを忘れていたらしく、裕也とユナ同様驚きの声を上げていた。


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