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(4)

 朝食が終わった後、裕也とアイリはユナと別れ、二人っきりで訓練所に来ていた。

 言いつけをちゃんと守っているのか、ギャラリーは一人もおらず、アイナとミゼルも来るようは気配なかった。

 そのため、状況的には二人っきりで真剣に訓練に望めるベストな空間。

 こんな状況が初日以降なかったため、裕也がやる気を出して、軽く身体のストレッチをさせていると、


「ねえ、聞きたいことがあるんだけどいいかな?」


 と、アイリがおそるおそる裕也へと尋ねる。

 そうは言ったものの、アイリはその質問を尋ねてもいいのかどうかを自分自身が悩んでいるらしく、少しだけ困ったような表情になっていた。


「答えられることなら答えるけど?」


 しかし、裕也はそのことに対するツッコミはせず、そう答えた。


「あのね……、さっきのウソ泣きだって気付いてた?」

「……ウソ泣きだったのか?」

「…………うん」

「そっか。別に気付いてはなかったけど、可能性としてはあるかもって考えてたぐらいだな」

「あはは、ユーヤお兄ちゃんになんでも見抜かれちゃうなー……」

「見抜いてないっての」

「本当に?」

「ああ」

「ボクが何か隠してることも?」

「……」


 ――おいおい、自分から言うのかよ……。


 裕也はアイリの口からその発言が出るとは思ってもいなかったため、心の中で突っ込んでしまう。

 そこからのアイリをフォロー出来る発言を頭の中で考えるという行動になったせいで、


「ほら、やっぱり気が付いてた」


 その間を利用され、指摘されてしまう。

 ここまで来れば、腹をくくるしかなかった裕也は、


「そうだな。少なくとも気付いたのはオレじゃなく、ユナなんだけどな。それに便乗して気付いたんだよ」


 と、正確に物事を伝えることにした。


「へー、ユナお姉ちゃんが先に気が付いたんだ?」

「先に……いや、最初からだな」

「最初から? どれくらい最初なの? 王女様を救った時?」

「もっと前。初めて出会った時から」

「………………え?」


 さすがのそこから怪しいと思われているとは思っていなかったのか、アイリは今まで見たことがないぐらいの驚きを見せる。本当に開いた口が塞がらないという状態で、目を見開いている状態。


「う、う、う……ウソだよね?」


 その言葉を信じたくないという一心で裕也に問い詰めるかのような雰囲気でアイリは尋ねるも、


「本当。なんか考え込むような雰囲気になってたから、なんとなく怪しんでたんだろうぜ」


 その言葉を一蹴する裕也。


「……なにそれ。どこか怪しい行動してたかなー……」


 自分がどこでドジを踏んだのか分からないらしく、アイリは「はぁー」と小さく吐いて、がっくりと肩を落とす。


「王女様が暗殺されそうになった時の王女様呼び捨ての件についてとかか?」

「……してた?」

「してた」

「……うん、してたんだろうなー。いきなりで余裕なかったし……」

「暗殺なんだから、いきなりで当たり前だろ」

「あはは、それもそうだね! いきなりじゃなかったら、暗殺なんて言わないよね!」

「そうそう。ああいういきなりの時はその人の本性が現れるものだからな」

「……本当に困った事件だよ」

「本当だな。って、そんなことよりも大事なことがあるだろ?」

「大事なこと?」

「おう。自分で隠し事してるってバラしたんだから、その答えを――」

「教えないよ?」


 裕也の声に被さる形でアイリは満面の笑みで答える。

 口を滑らすような間抜けな真似をする可能性が微塵もないほど、固い意志で固められたような物言いだった。


「その理由は?」

「んー、まだ教えるようなタイミングじゃないからかな? ユナお姉ちゃんの方は分からないけど、ユーヤお兄ちゃんはなんとなく察しが付いてそうだから」

「察しも何も全然分からないんだけどな」

「ヒントは色々落ちてるから、自分で考えてみてね! それに、ユナお姉ちゃんがそのヒントを見つけてくるんじゃないかな?」

「……たぶんな」

「あ、別にボクとしてはその秘密を暴かれるのはいいんだけど、みんなの前では止めて欲しいなー。するなら、四人だけでしたいんだけどいいかな?」


 アイリからすれば口が滑った程度の発言なのだろう。

 しかし、裕也からすればその発言は聞き流すことが出来ないほどの重要なヒントだった。が、それを突っ込んでしまえば、その言葉を撤回しそうだったため、そのことに対して突っ込まないように考えていると、


「あーあ、ヒント言っちゃった……」


 アイリは微笑みながら、自らがそのことに対してのツッコミを入れた。

 全然口を滑らせた感がない様子でそういうアイリに、


「お前なー……。せめて、ヒント言うなら堂々と言ってくれよ」


 と、呆れながら言うと、


「ボクは口を滑らせただけだもん。その四人目は自分でちゃんと考えてね? そういうわけでこの話はお終いにしたいんだけど、いいかな? いいよね?」


 滑らせたことをワザとらしく強調し、自分から話し始めたこの会話を終わらせようとし始める。


「話し始めたのはアイリだから、終わらせるタイミングは任せるよ。そもそも半分強制終了みたいな言い方じゃないかよ。てか、こんな話をしてる時間がもったいないレベルだな」

「そういうこと! そろそろ真面目に訓練するよー!」

「だから、最初からオレはそのつもりだっての!」

「えへへ、そうでした!」


 裕也が突っ込むと、アイリはそのツッコミを期待していたのか、


「ナイスツッコミ!」


 と親指を立てて、嬉しそうにそう言った。


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