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『私が気付いたことは、セインの手の火傷はただの火傷じゃないってことなんだ』


 ここまで聞いて、裕也たちはピンッ! と来るものがあった。いや、ないわけがなかった。だからこそ、三人は自然と目を開けて、お互いの顔を見合わせる。

 そして、最終的に裕也に視線が集まってきたため、裕也は首を横に振って、ミゼルの説明の邪魔をしないように二人に指示を出す。

 二人はその指示に従い、無言を貫く。


『大丈夫かい?』


 三人の反応を待っていたのか、ミゼルがそう問いかけてきたため、


 ――す、すみません。驚きすぎて、言葉に詰まってました。


 と、裕也は出来てしまった間を誤魔化す。


『なるほど。それもそうだね。その理由はもう気付いてるからの反応なんだろう?』

 ――そうですね。ユナとアイリが張った結界が原因みたいなんですよね?

『その通りだよ。あの火傷はお湯とかじゃなくて、魔法による損傷。間違いなく、あの結界のせいなんだろうね』

 ――ってことは……。

『考えたくはなかったけど、やっぱり犯人はセインなのかもしれない』

 ――先生の話を聞く限り、セインの可能性しかないですからね。いや、最初から疑ってたから、可能性がグンッと上がっただけか。

『あれだけ王女様の近くにいながら……考えられないよ』

 ――近くに居すぎるからこそ、色々と王女様に対しての不満があったんでしょうね……。

『かもしれないね』

 ――この話は王女様には聞かせることは出来ない話でしたね。だから、念話を繋がなかったんですか?

『その通りさ。まだ容疑の段階なら大丈夫かもしれないけど、ほぼ確定の話なんて聞かせたくないからね』

 ――さすがですね。


 その言葉を最後に沈黙が訪れてしまう。

 裕也もミゼルもなんて言葉をかけていいのか、よく分からなくなってしまったからだ。

 それはユナとアイリも同じらしく、裕也の指示は関係なしに出来てしまったこの空気を取り除く方法を模索するが故に無言になってしまっていた。


『これで自分の話したいことは終わりなんだけど、何か聞きたいことはあるかい?』


 その沈黙を破ったのはミゼルだった。

 裕也は目を開け、ユナとアイリを確認すると、二人とも首を横に振ると同時に、


『ないです』

『ボクもないかな?』


 と、念話でもそのミゼルに答える。


 ――オレもないですね、今のところは……。


 裕也もまた二人同様に全く思いつかなかったため、そう答えると、


『聞きたいことがあったら、いつでも念話してくるといいよ。寝るとき以外はなるべく反応するようにするからさ。じゃあ、今日はゆっくり休むといい』


 念話をそろそろ終わらせるような発言をしてきたので、


 ――ですね、その時は力をお借りします。今日はありがとうございました。


 裕也は改めてお礼を述べた。

 それにつられるように、


『先生、重要な情報ありがとうございます』


 ユナもまた感謝を述べ、


『うんうん! これからもよろしくね!』


 それに乗っかるような形でアイリもお礼を言った。


『力になるって最初に言ったからね。そんな気にする必要はないよ。じゃあ、おやすみ』


 ちょっとだけ照れ笑いを溢し、ミゼルとの念話が切れる。

 その念話が切れた後、三人の口からは重苦しいため息が盛大に漏れてしまう。それほど、今回の情報は良い物ではなかったからだ。


「アイリ、自分のベッドに行け」


 膝に乗っているアイリにそう冷たく言い放ってしまうほど、裕也はなんとも複雑な気持ちになっていた。


「はーい」


 アイリも同じ気持ちなのか、裕也の膝の上から降りると、自分が使うはずのベッドに移動し、そこで横になる。

 裕也もまた同じように足を伸ばし、両手の上に頭を乗っけるようにして、最初の時のようにぼんやりと天井を見つめ始める。


「最悪な流れですね……」


 そう呟いたのはユナ。


「そうだね。まさかねー」


 アイリもまたそれに乗っかり、再びため息を溢してしまう。


「まぁ、犯人は確定したようなものだからな。まだ謎は残ってるけど……」


 裕也は二人が言いたくても言えないこの言葉を代表して言った。いや、自分が言わなければ、誰もいいそうにないような気がしたため、言わざるを得なかったのだ。


「まぁ、その謎も魔法を使えば簡単な話なんだけどね。まぁ、解けてるようなものかな?」


 アイリは裕也が考えているであろう謎についての目星までもが目星がついているのか、そう溢す。

 その謎の解答こたえを知っていると聞いた裕也は、なんとなくそれを実践してくれるのか、と期待してアイリを見つめる。

 が、アイリは動く気配すら見せず、ベッドの上に横になったままだった。


「さすがに今日はパスー。それは明日見せてあげるね。ううん、犯人を問い詰めるときでもいいかな?」


 ちょっとだけ悪戯心が芽生えてしまったのか、アイリは苦笑いを溢しながらそう言った。


「犯人を問い詰める時にするのはいいかもしれませんが、とりあえず私たちには明日見せてください。いきなりされても驚くだけなので」


 ユナも地味に心身とも疲れが溜まり始めているのか、少しだけ不機嫌そうな口調で注意したため、


「うん、分かってる。変なこと言ってごめんなさい」


 アイリはふざけるような状況じゃないことに察して、素直に謝った。


「ん、もう寝た方いいな。寝れないにしても、無理矢理寝ることにしよう。おやすみ」


 さすがにこの状況で事件について話しても、最終的に言い争いに発展しかねないと思った裕也は二人にそう促す。

 すると、二人もまた同じことを思ったらしく、


「そうですね。今日はもう寝ましょう。なんだか色々と疲れましたから。おやすみなさい」


 ユナはもう一度ため息を溢しながらそう言い、


「うん、そうだね。おやすみなさい」


 と、アイリも反省しているのか、口数少なくそう言って無言になる。

 こうして三人は部屋の明かりを点けた状態で、身体には毛布一つかけずに眠りに就く。が、三人ともまたやってくるかもしれないという緊張感のせいで、熟睡どころか数分置きに目を覚ましてしまうのだった。


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