第12話 優しく力を貸す思い出
おそらく1月4日か5日まで毎日17時に1話だけ掲載していくと思います。
side セイン・スタークス
「あなたはすべての人に一線を引いている。だからこそあなたが心から信頼されることはないのよ」
「私は………そんな」
私の行動は間違っていたのでしょうか。私の行動で王たちは悲しんでいたというのでしょうか。
もうわからない。何が正しくて何が間違っているのかなんて私なんかに分かるはずがなかったのでしょう。もう私の意見など無くして誰か正しい人に導いてもらうべきなんです。
「大丈夫。私はあなたを見捨てないわ。私ならあなたを正しく導ける。だから私のもとへ来なさい」
「………」
正しく導いていただける。その言葉を聞いた私は彼女のもとへ行こうとして………王たちの顔が脳裏に浮かんだ。
「………」
何の曇りもない笑顔を浮かべるライと優しい笑顔を浮かべるユナ。そしてあきれながらもどこかうれしそうに笑う王………ディアの顔を見て私はいままで抑えられていた思い出を思い出しました。
「これは………」
「あらら、思い出されちゃったか。ま、ギリギリ合格ってことにしましょうか」
「あなたが私の思い出を奪っていたんですね」
「その通り。《白火》の力は2つ。燃やして消すという結果だけ残す『発火』と相手の記憶や思い出を一時的に忘れさせる『白過』。どちらも危険な能力だから気を付けて扱ってね」
私が白火の言葉を否定できずに彼女に従いかけたのは『白過』で大切な思い出を忘れさせられていたからなんですね。そして最初私の攻撃が消されていたのは『発火』で燃やされていたから。たしかにどちらも強力な力ですね。扱い方を間違えないようにしなければ。
「まあ最初のうちはどちらもそこまでの力は出せないんだけどね。『発火』はせいぜい高温の青い炎を出して操ることと『白過』は相手の記憶を少し読むことができるぐらいね」
「………どちらも十分だと思うのですが」
相手の記憶が読めるのも高温の炎を出して操ることも十分すごい力だと思うのですが。どちらも魔力を使わないので相手が人間であるのなら咄嗟に対応できない力ではありますし。
「だからって力の訓練をやらないのはダメなんだからね。常に上を目指しておかないと私があなたを燃やして消したあげくにみんなの記憶からも消しちゃうからね」
「ええ、現状に満足できるほど私は楽観的ではありませんからね。しかしいつかあなたも満足するほどの力を必ずつけると約束しましょう」
「それは楽しみね。それじゃあ着物型魂装《白火》をセイン・スタークスに貸し出すわ」
そう言うと彼女の手のひらから光の玉が私に向かって飛んできてそのまま私の中に入り込んできました。しかし中に入り込んできた《白火》の感触を味わう間もなく私の意識は閉ざされたのでした。