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もう一度妻をおとすレシピ 第5冊  作者: 奄美剣星(旧・狼皮のスイーツマン)
紀行・舞鶴
95/100

紀行・舞鶴/モンスターとイケメン

 例によって、舞鶴東港を周遊する自衛隊OBが運営する遊覧船「あさなぎ」からだ。

 桟橋を背にして港湾中ほどから東をみてみると、学校のような建物がみえる。海上自衛隊舞鶴教育隊基地だ。教育隊は下士官養成部隊で、舞鶴、横須賀、佐世保、呉の四か所に置かれている。

「海上自衛隊教育隊では五〇メートル以上泳げるのが必須ですが、上級資格所持者になってくると、何キロも泳ぐモンスターですよ」

 基地施設はなんとなく県立高校じみた外観だ。

 外観というと、気になるのは敷地後方にある頂きが平べったい山。――舞鶴湾はもともと海進によって、枝葉状に入り組んだ山の谷間が海になったところ・リアス式海岸だから、平地というのがほとんどなかった場所だ。明治以降、東舞鶴港に埠頭ほか各種施設を海岸線に築く際に用地が必要になるため、大規模に埋め立てた。そのため、舞鶴湾に面した山の頂が削れて平たくなったり、消滅したりしたものが多いのだ。教育隊敷地裏山は代表的な例で山頂から三分の二ほどの土砂が削り取られているという。

 今度は港湾の北西をみてみよう。

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挿絵(By みてみん) 

海自教育部隊基地

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挿絵(By みてみん) 

海自教育部隊基地の削平された裏山

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 二つの小島が並んでいる。右から烏島と蛇島。あまり上陸したくない感じの名前だ。二つの島はフェリー航路の目標物になっている。……実をいうと海上自衛隊各種施設に挟まれた真ん中に舞鶴市役所があり、そこから半島みたいに北につきでているところが前島埠頭だ。そこから隔日深夜零時に北海道苫小牧港にむかうフェリー船は、邪魔くさい二つの島を外側に迂回する形で進路をとり、若狭湾にでるのだ。

 さらに西側をみてみよう。

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挿絵(By みてみん)

右から烏島、蛇島

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挿絵(By みてみん)

海上自衛隊舞鶴航空隊 哨戒ヘリ12機配備

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 城下町から開けた舞鶴西港と、軍港の拡充で開けた市役所のある舞鶴東港。二つの港を隔てる半島になったところが長浜地区だ。写真でみえているのが海上自衛隊舞鶴飛行場である。

 もともとは分遣隊基地だったのが、一九九〇年代、北朝鮮工作員が乗った偽装漁船・不審船が頻繁に出没したことを受けて部隊が強化かされ、分遣隊から航空隊に昇格して、哨戒ヘリ機数が十二基に増えた。パトロールを強化すれば、仕掛けようとする気も失せるというものだ。

 そこで、遊覧船に搭乗した老紳士が「清徳丸事件」について解説員に質問した。

 事件は二〇〇八年二月一九日午前四時、千葉県野島崎沖で、イージス護衛艦「あたご」と地元漁船「清徳丸せいとくまる」が衝突し、漁船が沈み、船員が行方不明となり認定死亡とされるに至る。

 鬼の首をとったがごとくマスコミが騒ぎ立て、船長、関係士官・当直者が懲戒処分、防衛大臣も更迭させ、一時的ながら国防体制に穴があいた。当直者は鬱状態となり自殺未遂まで図った。

 ……けっきょくのところ、海難審判では一対九の割合で漁船側に問題があり、漁船が急に舵を切って体当たりしたという状況であり、イージス艦側が無罪になった。漁船には船長には息子がおり、息子は免許をもっていなかった。証拠はないが漁船の異常な舵の切り方はベテランである船長のものとは考えにくい。そんな憶測もある。

 解説員がぼやくようにいう。

「マスコミは自衛隊の天敵でして、なにかあれば連中は自衛隊を叩きます。裁判に勝訴しても謝罪広告をださない。だしてくれたのは地方新聞だけで、しかも小さかった」

 なにかと自衛隊を攻撃する(サヨク系?)マスコミだが、とあるジャーナリストが漂流しているのをここの航空隊ヘリが発見救助してやったのだ――と、遊覧船自衛隊OB解説員が誇らしげに語っていたのが印象に残る。

 長浜地区の海上自衛隊航空隊基地の後ろに隠れて、京都大学水産試験場、海上保安 学校がある。海上保安学校は海上保安庁所属だ。

「うちの海自がむさいモンスターだとすれば、海保さんはイケメン『海猿』ですね」

 遊覧船の解説員が笑った。

    ノート2014.04.09/取材2015.04.05

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