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もう一度妻をおとすレシピ 第5冊  作者: 奄美剣星(旧・狼皮のスイーツマン)
散文
9/100

随筆/新潟県、なんとなく白鳥を食べてみた ノート20141118

 それまで……。

 私は、日本において白鳥を食べるという事例をきいたことがなかった。

.

 古代ローマが地中海世界に覇権を築きつつあった時期、当時の欧州の広い範囲にわたって先住民・ケルト人がいた。ケルト神話のなかに、とある国の三王子が悪い魔法使いによって白鳥に姿を変えさせられたので、王族の末裔が、御先祖様だから食べちゃいけないよとのお触れをだした。――この伝説がもとになってできたのが、ロシア・バレエの『白鳥の湖』とのことだ。4-8世紀の間に、大陸から日本に伝わって記録されたのが、『古事記』や『日本書紀』にでてくるヤマトタケルの白鳥転生伝説だ。

 同母の妹と関係し、さらに兄を殺してしまったオウス王子は、父王の逆鱗に触れた。それでわずかな側近とともに九州に追放される。望郷にかられた王子は手柄をたてて帰国しようと一計を案じた。女装して先住民の王・クマソタケルの宮殿に上がり、王を刺殺。それを手土産に帰参したわけだ。クマソタケルは死に際で、単身宮中深くまで入ってきた勇気は賞賛すべきものだから、自分の名であるタケルの名を贈った。

 しかし帰国しても父王は王子を許さず、東国征服を命じ、いくつかの武勲をあげたのち、邪神と戦って命を落とす。王子の望郷の念は、白鳥へと転生させ、懐かしい大和の都へと旅立たせる。

.

 雪が降る季節の少し前、お手伝いをしていた新潟県のとある遺跡調査が終わった。

 教育員会の担当官は、加山雄三ふうで、アウトドア派な偉丈夫だ。趣味はカヤックと狩猟。なんだか欧州のお貴族様みたいだった。

「えっ、日本の場合? 実は食べてたよ。――江戸時代まで新潟県には白鳥がいっぱいきていたんだけど、狩りをやり過ぎたもんで、寄りつかなくなった。それで戦後になってから、たまたま迷い込んできた白鳥の家族がいて、餌付けをする人がいたもんだから、大群でくるようになったんだ」

 横できいていた土木あがりの作業員・爺様が口を挟んできた。

「もともと俺は、土木だったもんですけ、むかし阿賀野川で河川工事のときに、仲間と罠を仕掛けて鍋にして食べたんだ」

「味はどうでしたか?」

「カモみたいだった」

 バードウォッチングが趣味の爺様も割り込んできた。

「白鳥がくるのは、阿賀野川のほかじゃ、瓢湖・鳥屋潟・福島潟といった湿地帯だ。瓢湖じゃ、白鳥を鉄砲で撃って食べる人がいたんで、町の教育委員会の人が、撃たないようにお願いにいったこともある」

 また違う爺様が口を挟んだ。

「俺たち、食っていたのが白鳥だってことも知らなかったんだぜ」

 中国では、

 ――蛙が白鳥の肉を望むのは身の程知らずというものです。

 という例え話がある。

 そのため私は、

「やはり机と飛行機以外はなんでも食べるのね」

 と考えていたのだが、日本でも、新潟県人は白鳥を食べていたのだ。おそらくは他県もそうなのだろう。

 私のなかでは驚天動地の民族誌!

     ノート20141118

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