随筆/女神は歌う ノート20141005
寺社にゆくと五感が鋭くなるという話がある。
本日、秋祭りがあった寺社は、奥州藤原氏ゆかりの女神・徳姫を祀っている。
そこで私は先輩氏子の笛に合わせて太鼓を叩いた。
太鼓とはいっても四角い木枠で囲った、筒と太鼓を組み合わせたドラムの一種だ。リズムは短調で筒と太鼓をバチで二・一、二・一、二・三の比率で叩く。
馴れないもので練習していると、先輩氏子が、「トントンタン、トントンタン、トントンターンターンターン」ってやるんだよといった。
御本尊が公開されて拝顔した。神仏習合の名残で、女神を連想させるような愛らしい菩薩だった。先輩氏子が記念写真を撮ってやるというので、御本尊を抱えたところで写真をとってくれた。
本番になり、笛にあわせて太鼓を叩くのだが、馴れぬのでときどきズレる。リズムが戻ってくるとき、先ほど先輩氏子が指導した、「トントンタン、トントンタン、トントンターンターンターン」というテンポをとる声がする。横にいた若衆ではなく、太鼓に反応して若い女性の歌う声がしたのだ。それは祭りが終わるまできこえた。
ゆらめく筒と太鼓の高音振動波の一つがそうきこえさせるのだろう。
しかし霊験あらたかに、神社の女神が、ご指導してくださっているようにも感じる。
祭りのあとの宴で、先輩氏子たちにその話をしたら盛り上がるかと思ったら、逆に、寒気がするといわれた。
END