読書/常光徹監修 『日本の妖怪大図鑑1 家の妖怪』 ノート20160906
絵本/
常光徹監修
『日本の妖怪大図鑑1 家の妖怪』
ミネルヴァ書房2010年
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著者は日本の民俗学者、文筆家。国立歴史民俗博物館名誉教授・総合研究大学院大学名誉教授。博士。専門は口承文芸、民俗信仰。歴史民俗博物館は、歴史・考古学・民俗学研究では、西の奈良文化財研究所と双璧をなし、かつての東大、京都大の上位にある国の研究機関だ。絵本は、柳田國男・馬場あきこの著書を引用し、子供向けで簡潔ながら、きわめて高度にまとめている。この人の執筆は本文4-7頁を担当した。他は長谷川美緒・阿部梨花子が担当した。挿絵は広瀬克也が描いている。
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抜粋
3頁「座敷童」岩手県・宮城県……座敷ぼっこ・蔵わらしの異名。
4頁「妖怪」とは、「超自然的な存在だけが妖怪のすべてではありません。妖怪には不思議な現象やあやしい出来事も含まれるのです」(常光徹)
5頁「①妖怪はでる場所がだいたい決まっていて、その場所に行かなければ出会わないですむ。しかし、幽霊はむこうからやってきて、逃げても追いかけてくる。②妖怪は相手を選ばないが、幽霊は相手を選ぶ。③幽霊は丑三つ時(午前2時ごろ)に現れるが、妖怪は夕暮れに現れる」(常光徹。地域によっては、妖怪をガガモ、モウコと呼ぶ。柳田國男『妖怪談義』を引用、妖怪が、「咬もうぞ」といって現れたのが変化したもの。また出没する時間帯があると指摘〈逢魔が時〉。神隠し、天狗に連れ去られる)
7頁 〈狐の窓〉……藍亭晋米『新板化物念代記』歌川国丸1819 湯本豪一氏所蔵)右手と平ぢてがたがいちがいになるように指を組む(常光徹)
10頁「垢嘗め」新潟県・富山県
11頁「かいなで」京都府……いわゆる「便所神」
11頁「家の守り神が妖怪になるの」……屋敷神・家霊が家系の断絶などで祀られなくなると妖怪化する。添付写真・竃神の面(木製)
12-13頁「疫病神」長野県・香川県……病気を運ぶ。対抗するには村の堺目に道祖神を祀る。
13頁「貧乏神(窮鬼)」愛知県……怠け者の家の押入れに住む。大晦日に囲炉裏で火を焚くとあつがって逃げる。かわりに福の神がやってくる。江戸時代の貧乏侍が家で祀ったところ貧乏から抜け出せた。
14-15頁「妖怪立ち時の専門家」……概して害はなく正体を暴くと消える。しかしなかに人食い・人の命をとるものがいる。陰陽師という妖怪退治の専門家に任せる。陰陽師とは本来天体観測をする役人だ。天武天皇の(673-686)のとき陰陽寮を設置した。最初は科学分野だったのが、自然災害・流行病のふえた平安時代なかごろから、占いが中心となった。安倍晴明(921-1005)は予知能力、式神をあやつり、強い「気」をぶつけて、呪文を唱えて退治した。『大鏡』『今昔物語』『宇治拾遺物語』に描かれる。/添付写真:京都市晴明神社。
18-21」頁 付喪(つくも、九十九)神……粗末にされた道具が妖怪になって仕返しする。
24頁 「猫又」 福島県・香川県
25頁「馬の足」福岡県、「件」広島県・福岡県
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所見
この絵本で安倍晴明関係資料として引用されていた、『大鏡』『今昔物語』『宇治拾遺物語』といった古典もあわせて読んでみた。
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ノート20160906




