読書/ドストエフスキー『罪と罰』 ノート20160901
ドストエフスキー『罪と罰』工藤精一郎訳 新潮社1961年
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登場人物
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ラスコーニフ……主人公。元法科大学生。一時的な精神異常から殺人犯となる。
ラスコーニコワ……兄思いの美麗な妹。元家庭教師。
ブリヘーヤ……その母。
ラズミーヒン……主人公の学友。後日談で主人公の義弟となる。
ゾシーモフ……医師。主人公の友人。
ソーニャ……ヒロイン。信心深い娼婦。後日談で主人公の妻となる。
マルメラードフ……その父。退官した九等書記官。アル中。
カテリーナ……その義母。
スヴィドリガイロフ……地主貴族。主人公妹のストーカー。
ベトローヴァナ……その妻。故人。
ルージン……弁護士。主人公の妹の婚約者。サイコパス。
レベジャートニコフ……進歩的知識人青年。ルージンの知人。
ベトロヴィチ……予審判事。
ベトロヴィッチ……警察副署長。
ザミョートトフ……警察署書記。
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プロット
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第壱編、7章構成。事件発生・概要説明
元法科学生である主人公が質屋の老姉妹を殺害する。金に困っていたわけではない。主人公と友人たち、ヒロイン、被害者、容疑者たちが登場する。
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第弐編、7章構成。登場人物紹介
主人公・ヒロイン家族・捜査陣紹介。主人公は、トリック、アリバイ工作をするのがだが、犯罪の素人ゆえに、どこか間が抜けている。盗品は空き地に埋めて隠したのだが、罪の呵責からあちこちに言いふらす。親友ラズミーヒンが、知人の医師ゾシーモフを伴って主人公を診察させる。
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第参編、7章構成。仮説・裏動機
捜査陣登場。まずは質屋老姉妹の部屋近くで作業をしていた職人が逮捕された。店主の老婆が扱っていた装飾品を拾ったからだ。主人公は警察官や予審判事にまで自分の罪状をばらしてまわるが証拠はださない。主人公は生活苦から質屋の老姉妹を殺害したのか? 娼婦であるヒロインの父親の葬儀のために、なけなしの生活費を、家族のために与えてしまう。殺人犯である主人公も実はいい奴だ。主人公の妹は家族のために生活の安定した弁護士と婚約をしていた。しかしサイコパスだった。主人公は破談にもっていく。
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第肆編、7章構成。仮説崩壊。
捜査陣、主人公だと目星をつけ、有力な証言者である被害者と同じアパートの老人の証言をもって、逮捕に至らしめようとしたのだが、別の取り締まり官が無関係な少年を誘導尋問・自白させてしまった。妹の元婚約者がつきまとう。
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第伍編、5章構成。犯行の動機、デス・リミットの設定
主人公は、レストランで予審判事と食事をする。捜査陣は主人公が犯人だとほぼ断定し、逮捕が時間の問題だと告げた。――逮捕までに妹の問題、ヒロインへの思いを告げなくてはならない。一過的な心の病と、野心的なとして、試してみたくなったのだ。他方、妹の元婚約者弁護士は、結婚に反対する主人公と家族を仲たがいさせる策を練った。父親が年金受給対象者ではないとヒロインに告げるために部屋に呼び出し、ポケットに百ルーブル紙幣を滑りこませ、葬儀の食事席でヒロインが盗んだと騒ぎたてた。主人公はそのトリックを暴いた。そのあたりの事情はルージンの知人・レベジャートニコフが証言してくれた。元弁護士退場。他方で、ヒロインの隣人が、ドア越しに、殺人の罪の告白をしようとしていた主人公の話を盗み聞きしていた。隣人というのは、昔、妹が家庭教師として奉公していた家の地主だ。妹をストークしていたのだ。その話をネタに妹に迫りたかったのだ。
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第陸編、8章構成。リミットの解除、事件の解決
主人公はキーパーソンとなったストーカー地主と話をしてみたくなったが、向こうの要求とかみ合わず、交渉は決裂した。他方地主は、主人公がヒロインに罪の告白をしていた内容を立ち聞きしたことを口実に、妹を自室に呼び寄せ、口説こうと迫ってきた。妹が身を守ろうと三連発拳銃のうちの一発を撃ち、拳銃を投げ捨てて部屋を飛び出した後、それで自殺する。
直後、主人公はヒロインの部屋を訪れ、すべての告白をしたのち、ためらいながら、彼女に伴われて警察に自主した。書記・副署長が対応した。――手塚治虫が脚色した漫画はここで終わっている。
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エピローグ、2章構成。全容解明、後日談
裁判において、主人公は素直に自供する。親友ラズミーヒンや宿屋の女将が、心理的な病にあったこと、平時の主人公は善行を多々行っていたと証言。結果、情状酌量となって減刑となり、8年が求刑された。ヒロインは受刑囚となった主人公を追ってシベリアにゆく。主人公の妹と懇意になって、月一回の近況報告をする。妹は主人公の友人と結婚した。
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所見
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子供のころに、漫画家手塚治虫全集に同名の漫画があり読んだ。その後、新潮社によって2002年作成された、朗読江守徹によるCDを聴いた。脚本川崎九越、演出長越孝子・渡辺治美、音楽浦尾画三により製作された。それを経て読書に至った。大変重い内容であるためエピローグで大団円が用意されている。いろいろ解釈されようが、実質的に社会派ミステリだと捉えている。5-680頁。エピローグ20頁、他は100頁前後で構成される。1頁あたり縦24字×横21字×上下2段(800字前後)。そうすると原稿用紙1200枚強の大作となる。650頁相当で一冊の本にまとめているが、通常なら原稿用紙300-400枚相当として3、4冊分になるだろう。




