読書/佐藤賢一『ハンニバル戦争』 ノート20160901
佐藤賢一 『ハンニバル戦争』 中央公論社2016年
(※初出「読売プレミアム」連載 2014年06月~2015年07月)
いつものように、開架式になった図書館をぶらついていると、本書が眼に入り手に取った。というのも、文芸同人誌系・サークルの方で、まったく同じタイトルで同じ内容を書いた方がいた。実をいうとその方のほうが早くブログにだしていた。――アイディアはこの世の誰かが同じことを具現化する。早い者勝ちなのだとつくづく思う。もっとも第二次ポエニ戦争のことをハンニバル戦争とも呼ぶのだそうだけれども。
本書はプロローグ、第一部カンナエ、第二部ザマ、エピローグで構成されている。
エピローグはローマ貴族である主人公スキピオの少年時代。年上の貴婦人の間男をやって父親に叱られる場面。
第一部カンナエは青年将校時代。ライバルであるカルタゴのハンニバルがアルプス越えをやってイタリア半島を蹂躙。ローマを崩壊寸前に追いやる。
第二部ザマはローマの巻き返しだ。ローマは地中海の制海権を譲らない。元老院は同盟市を離反させようと躍起になるハンニバルとの決戦を避け、十年以上にも渡る焦土作戦を行いつつ、その手の内を学んだスキピオを、同じ戦術をとりつつも能力が劣る、イベリア半島を守備している弟ハスドバルと対戦させてスキルアップさせる。そして別働隊をカルタゴ本国に送り込み、ヌミビア族を寝返らせて騎兵を多く獲得した。
エピローグは戦後の両者の境遇。後日談だ。ハンニバル植民地の大半を失って本国を再建させたが強引な手腕から孤立して亡命せざるを得なくなり、亡命先で暗殺される。スキピオは帝王の器を警戒されて、政界・軍部から乾されて失意のうちに亡くなる。同じ年での出来事だ。――このあたりの事象は、田中芳樹『銀河英雄伝説』が物語のモチーフの一つとするところだろう。
7-411頁。プロローグ・エピローグ各7頁。1頁46×20字。
ノート20160901




