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もう一度妻をおとすレシピ 第5冊  作者: 奄美剣星(旧・狼皮のスイーツマン)
ざっくり考古学
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随筆・ざっくり考古学05/犬・猫きたー、中石器時代(2万年前)

 いかんいかん。

 ほけーっ、としていると、新たな遺跡が調査され、報告書と論文がでて概念がまた変わってしまう。変わるといっても時代が古くなるといだけのことだが……。10年前に覚えたことはもう使えない、となってしまう。Wikiとかみてても、古くなっているのもある。なるべく最新データをみるべきだ。このノートを書いていて、昔勉強したころのデータがけっこう古くなっていることに驚く。

 欧州の中石器時代というのが1万年前。

 私の中では、中近東、シリア・イスラエル・レバノンといったレバント地域がいきなり、後期旧石器時代から、新石器時代にいったとおもっていたら、あそこでもちゃんと、中石器段階を踏んで、新石器段階に入っていた。それにしても1万5000年くらいかと考えていた。――で、結局、中石器時代がいつからかというと、2万2000年前。先述したノートとは若干矛盾するのだけれどもここでは2万年前から1万年前くらいまえの出来事を中石器時代として扱うことにした。

 2万2000年前から2万年前にかけての2000年間期に、大規模な気象変動があった。それまで豊かな森林だった中近東の植生は温暖な森林から、冷涼で乾燥したステップになった。当然、人類の栄養状態が悪くなった。人類は、過酷な環境変化のなかで、生物的には小型化して、生き残りを測りつつ、悪戦苦闘して新たなライフスタイルに切り替えざるを得なくなった。それで後期旧石器時代、……250万年期もあった旧石器時代そのものが終わって、中石器時代1万年期が始まる。

 中近東は早かったが、欧州は遅く、1万年くらい前まで後期旧石器時代をやっていた。

 身長200センチの中期旧石器時代人・ネアンデルタール人と混血したためか180センチのノッポさんだった後期旧石器時代人・クロマニヨンの子孫たちは身長が低くなった。手元にそのあたりのデータはないため推測になるけれどもたぶん150から160センチそこら。脳容量が、中期石器時代人・ネアンデルタール1600CC→後期旧石器時代人・クロマニヨン人1500CC→中石器時代人(現代人の平均値)1450CCとなった。31歳から60歳までの年齢層は、ネアンデルタール人35.8%,後期旧石器時代人は26.7%,中石器時代人は12.7%という結果が発表されている。進化というべきか退化というべきか。うむむ、ともかく低燃費エコ対応。

 背の高いネアンデルタール人が、北方クロマニヨン人たちと愛し合って遺伝子を残しつつ、「妖精の国へ旅立った」あと、残されたクロマニヨン人たちは、新たな進化を遂げた。

 中近東での中石器時代は、2万2000年前から1万4000年前にかけてを第1期をなし、1万3000年前から9000年前を第2期になる。この第2期において、野生の麦を栽培化することに成功。穀物生産を開始する。そのとき、穀物庫に収穫物を収めると鼠が発生。それを狙って野生猫が出入りるようになり、このあたりでは猫を飼いはじめるようになった。

 穀物生産にはまとまった労力が要る。他部族との水利権抗争、富の収奪目的での戦争がぼちぼち始まる。貧富の格差がでてきて、王様と平民そして奴隷が発生する。

 ヨーロッパは、中近東が農耕牧畜を開始して次の新石器時代に移る1万年前ごろ、ようやく中石器時代に達する。1万年前は更新世終期といって、氷河が後退しはじめ気候が温暖になったため植物が繁茂し、動物が増えるなど、人間が採集狩猟で食物を得やすくなった。森林と沼沢が広がって、多量の食物が供給されるようになって人口が増えた。斧で木材を切出し、カヌーがつくられる。弓矢が発明され、狩猟犬を飼いだした。こういった事情が当時の貝塚の発掘で判ってきた。あまりにも豊であったため、農業が開始される新石器時代に達するのは7000年前と、中近東よりも3000年ばかり遅れることになる。

 ただし、湿地帯や貝塚でしか木製品や骨が残らないので、現段階でみつかってはいないのだが、カヌーの発明や猟犬飼育開始の時期は後期旧石器時代に遡るのかもしれない。

 日本では中石器時代という概念をいいだし始めたのは比較的新しい。期間も1万4000年前から1万2000年前とごく短く、縄文時代に一部重なる。昨今は、縄文土器の発明が1万2千前から1万6000年前に引き上げる研究者もいるので、実際にはもっと早くからあったのかもしれない。そのあたりがゴチャゴチャして煩わしいのか、数万年から数百万年単位の石器時代なのに、日本版中石器時代というのはあまりにも短すぎるためか、多くの研究者たちは採用せず、日本における細石刃文化に関しては、後期旧石器時代に含めているのが現状だ。

 中石器を特徴づける最大アイテムは細石器だ。鹿の角などの骨角

器なんかをつかって、製作者は自分の体重を石にのっけて、果物の皮みたいに石を薄剥きしてゆく。すると干上がったナメクジのような感じのチップ(剥片)がとれる。そのチップを幾条かの溝を穿った棒に、何十枚だか百数十枚だかのチップ(剥片)を、整然と刺しこんでゆく。昔日あった、取り替え刃先のカミソリみたいな感じだ。それでできた銛やら槍にしたのだ。

.

(細石刃画像)

   http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%B4%B0%E7%9F%B3%E5%99%A8

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 しかしいや、なんだね。

 閑話余談的最近の話題。

 中近東に王様と戦争がぼちぼちでてくる中石器時代の終わりごろというときにだ。

 東南アジアにあるインドネシア・ジャワ島の東沖にフローレスという火山島があって、そこでフローレス原人というのが昨今発見された。100万年前にこのあたりにいたジャワ原人の末裔で、大陸の仲間たちは三十万年も前に死滅しているのに、同島ではしぶとく1万2000年前くらい前まで洞窟で暮らし生き残っていたいたというのだ。最大の特徴は、島化現象というやつで体長が100センチ弱と小型化し、脳容量も350CCになったということだ。その割に、火や精巧な石器を使っていたという。フローレス原人は、やはり島化で小型化した象・ステゴドンと一緒に、火山爆発で絶滅した。昨今、台湾沖でも同時期・同タイプの原人の顎の骨が発見されている。フローレス原人の通称はトールキンの『指輪物語』に当てはめて「ホビット」と呼んでいる。 

 なら、『指輪物語』に登場するほかの亜人たちをだして当てはめてみよう。

 3万年前に絶滅しつつも一部は現世人類と混血した身長2メートル美形で長命・しかも賢い森の妖精・エルフはネアンデルタール。

 ――中石器時代。暴君が出現し、奴隷化した現世人類の君は、同じように虐待されされ絶滅寸前となっている亜人の仲間を集め、冒険の旅にでる。

 「考古学ロールプレイングゲーム」本を出版して、大儲けできるのではないか。しかし、鉱工業に優れた小柄なドワーフは……ドワーフは……。いくらなんでも猿人・原人に高度な鉱工業を求めるのは無理だぞ。ネアンデルタールもつかってしまったし。

 求む、新発見中石器時代人!

 ドワーフに該当する亜人を求めて、夜も眠れない私であった。

 そして枕元に舞い降りた妖精さんのささやき。

『中石器時代らしく犬・猫をつかえば』

 いやいっそのこと、犬・雉・猿に……。

『それって〝桃太郎〟でしょ!』

     END

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